近年、中国の高等教育は目覚ましい発展を遂げている一方、大学間・大学内部での競争が激化している。
こうした競争において、量的評価がしやすい研究成果・実績などが偏重されてきた結果、教員評価や大学の資源配分などの面において、学士課程教育・人材育成の面が軽視されてきたことが問題となっている。中国政府はこうした状況に対処するため、ここ数年、学士課程教育を重視する政策を鮮明にしている。
そうした中2018年6月21日、四川省成都において、教育部は初の全国大学学士課程教育会議(原語:新时代全国高等学校本科教育工作会议)を開催した。
同会議には、教育部の全局の局長、直属機関の責任者、その他の13の中央政府機関の責任者、31の全地方政府の教育部門の責任者、中央直属の全75大学の他、地方大学合わせて150大学の学長・共産党書記が参加した。
四川大学に設けられたメイン会場の他、各地に設けられた会場でテレビ会議を通じて、教育部、地方政府の教育部門関係者、大学の管理者、教員代表など合わせて5万2千人にのぼる高等教育関係者が動員され、「学士課程教育構築」の大号令が発せられた。
同会議では、教育部の陳宝生部長が「中国政府は、大学の学士課程での人材育成・教育の質向上を中国の目指す教育強国※の礎ととらえている。」と発言し、中国政府の学士課程教育の重視を強調して「学士課程教育強化ができない大学はだめな大学」、「学士課程教育を重視しない学長はだめな学長」、「学士課程教育に参画しない教授はだめな教授」というスローガンを掲げた。
また、大学生への政治思想教育の強化についても非常に重視しており、同会議において大きく取り上げられた。
また、会議では、「高水準学士課程教育建設の加速と人材育成能力の全面的向上に関するガイドライン(原語:关于加快建设⾼⽔平本科教育 全⾯提⾼⼈才培养能⼒的意⻅)(案)」についてのパブリックコメントが行われた。
この他、新たな時代の高等教育改革の重要な戦略の一つとして、「6つの卓越人材・1つの傑出人材育成計画(原語:六卓越⼀拔尖计划2.0)(案)」が提示された。これは、卓越したエンジニア、医師、農林業人材、法曹、マスコミ人、教員の育成と、基礎科学分野の傑出した人材育成を目指す計画である。今後、広く意見を聴取したうえで、正式に実施される予定である。
※当機構ウェブページ、QA UPDATESの記事「中国:世界一流大学・一流学科の建設実施方法発表」を参照。2015年、国務院から発表された、「世界一流大学・一流学科建設全体計画」(原語:《统筹推进世界一流大学和一流学科建设总体方案》)に「教育強国」を目指すという目標が掲げられている。
原典:教育部