2018年11月1日、オーストラリア政府主導のもと、教育訓練省の予算で開発された高等教育進学情報サイト「Course Seeker」が公開された。Course Seekerには高等教育機関に関する情報(コース情報、入学要件・入学プロセス、卒業後のキャリア情報)が集約されており、高等教育機関の比較が容易になる。また、進学情報を提供するデジタルツールの開発は、2019年2月現在イギリスでも政府主導によって進められている。
Course Seeker
Course Seekerの主な特徴については以下のとおり。
- 高等教育のコースのみを対象としている。職業教育(VET)のコースについてはMy Skillsというオーストラリア政府主導で開発された別のサイトで検索できる。
- Course Seekerのサイト上で、高等教育機関、コースの検索やコースの比較が可能。またCourse Seekerには、コースごとに高等教育入学センター(Tertiary Admission Center:TAC)や当該高等教育機関へのリンクが貼ってあるため、リンク先から出願手続きを開始することも可能である。
- サイトに掲載されている情報の収集や公開を含め、ウェブサイトの運営は州や準州ごとに設置されている高等教育入学センターの責任の下実施される。
- 高等教育機関によるCourse Seekerへの参加は義務ではないが、政府によって推奨されている。
入学プロセスの透明化
オーストラリアの高等教育では、高校生だけでなく、高等教育、職業教育(VET)の既修者や職務経験者の進学が進んでおり、各対象者によって入学要件が異なるなど、高等教育への入学プロセスが多様化している。その一方で入学要件に関して、高等教育機関側の情報公開方法が整備されておらず、問題となっていた。
政府主導による高等教育進学情報サイトの開発は、2016年10月に高等教育基準委員会(Higher Education Standards Panel:HESP)が入学プロセスの透明化に向けて発表した報告書「Improving the transparency of higher education admissions」の中で提言されており、今回教育訓練省と高等教育入学センターが協力して開発した。
入学プロセスの透明化に関するこれまでの取組みについては、こちら(本サイト2017/8/4投稿記事)。なお、入学プロセスの透明化には、高等教育機関への規制・監督を行うTEQSA(オーストラリア高等教育質・基準機構)も協力している。
高等教育進学情報サイトの世界的潮流
イギリス
2019年2月現在、イギリスでも政府主導で高等教育進学情報を提供するデジタルツールを開発中である。イギリス政府の調査では、たとえ同じ学問領域でも、どの高等教育機関で勉強したかによって、学生の卒業後の収入やキャリアが大きく異なることが明らかになっている。このため、特に社会経済的な背景を理由にこれまで高等教育への進学の決定に関して支援を受けられなかった学生が、モバイルアプリを利用することでよりよい進路を選択できるようになることが期待されている。
このモバイルアプリについては、2018年6月以降アプリ開発業者のコンペが行われており、2018年12月に2社(AccessEd、The Profs)が選定された。今後2019年3月末までにアプリのテスト版が公表される予定である。
日本
ちなみに日本では当機構と日本私立学校振興・共催事業団が連携・協力して運営する大学ポートレート(日本語版)が2015年より公開されている。大学ポートレートでは、大学自らが責任をもって提供するオフィシャルな教育情報を共通のフォーマットにより社会に公表している。なお、同サイトは大学を比較するためのものではなく、各大学の個性・特色等を把握するためのツールとして開発された。2018年10月からは、大学ポートレート(国際発信版)が公開され、日本の大学への留学を希望する海外の学生や海外機関等に向けた情報が公開されている。
原典①:Course Seeker(英語)
原典②:Course Seeker(英語)
原典③:TEQSA(英語)
原典④:イギリス教育省(英語)