修業年限で判断しない、北欧ノルウェーの新しい学習歴の審査基準

ノルウェーが外国資格の承認プロセスを見直し

リスボン承認規約に対応し「資格」での判断へ

日本も同様の国際約束(東京規約)をすでに締結

ノルウェーの政府機関NOKUT*1は、欧州委員会からの助成を受けたORIONプロジェクトの報告書を2019年4月に公表し、同機関が行う外国資格の承認プロセスの見直しを提起した。主な提言は、(a)リスボン承認規約における「実質的相違」へのより柔軟なアプローチ、(b)ノルウェーの修士の学位相当の資格と認めるための要件の緩和、(c)単位への換算の中止の3点。2017年から始まったこのプロジェクトは、他の北欧諸国との間では資格の自動認証を実現(本サイト2018年7月23日掲載記事)するなど、すでに成果を挙げている。

「実質的相違」への柔軟なアプローチ

欧州・北米地域の54か国が締結するリスボン承認規約は、自国と外国での高等教育への進学要件に実質的相違(substantial difference)がない限りは、外国の資格を自国で承認することを求めている。NOKUTはこれまで時間をもとにした定義である「単位」を軸に、外国の資格との実質的相違を測ってきた。しかし、報告書では単位ではなく「資格」にもとづくアプローチに変更することで、実質的相違に対してより柔軟に対応できるとしている。

たとえば、資格にもとづくアプローチとして、その資格を取得することで次の教育段階に進めるかどうかが1つの判断材料となる。実際、NOKUTは2017年に審査方法を改訂し、本国で博士課程へ進学できる資格のみ、ノルウェーの修士の学位相当とするようにした。

修士の学位相当の資格

ノルウェーの修士の学位との同等性を判断する基準は、上記の点以外も含めて大幅な変更が提案されている。現在外国で取得した資格がノルウェーの修士相当となるには、同国の2年または5年間に相当する期間の学修が求められている。しかし、時間ではなく資格にもとづくアプローチをすることで、修業年限が短くてもノルウェーの修士相当となる可能性がでてくる。

たとえば、新たな基準では、イギリスの1年課程で得られる修士はノルウェーの1年半課程の修士相当となる。このように、今後はノルウェーで授与されている各種修士*2のどれに相当するか判断できるようにするべき、と提言されている。

単位への換算中止

これまではノルウェーの資格に満たない外国の資格には、ノルウェーで相当する単位数が与えられてきた。たとえば、前述のイギリスの1年課程で得られる修士は、ノルウェーの修士レベルの75単位相当とされている。今後は単位への換算は行わず、1年または1学期(semester)をもって同等性が表現されるべきだとしている。

日本での外国資格の承認

日本の高等教育への進学の際に行われる外国資格の承認では、たとえば大学進学であれば、外国の学校教育で12年課程を修了するなどの要件が規定されている。これらの要件の多くは教育を受けた年数を基本としており、現在のノルウェーと同様に、「時間」をもとにした外国資格の承認が行われている。

一方、日本政府はリスボン承認条約と同様の条約である「高等教育の資格の承認に関するアジア太平洋地域規約」(東京規約)を2017年に締結している(本サイト2017年12月26日掲載記事)。東京規約でも実質的相違がない限りは外国の資格を自国で承認することを求めているため、今後は外国の教育資格に対してより柔軟な考えが必要となる可能性がある。

*1NOKUT: Nasjonalt organ for kvalitet i utdanninga
*2ノルウェーには、1年課程、1年半課程、2年課程、(学士課程と統合された)長期課程修了によるほか、経験をもとにした修士の学位がある。

原典①:NOKUT(英語)
原典②:
NOKUT(英語)

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