アメリカの大学、出願審査で電子化された証明書類への対応進む

アメリカの大学での出願書類の扱いを調査

8割超の大学が電子化された証明書の送付を認める

国際的にも電子化された証明書の送受信が広がる

アメリカの大学で出願書類を審査する担当者が加盟する2つの団体AACRAO*1とAICE*2は、2018年12月に大学での電子化された証明書の取り扱い状況に関する調査を共同で行い、結果の概要を公開した。2019年4月に行われたフローニンゲン宣言ネットワーク*3年次会合での発表によると、アメリカの大学の多くが電子化された証明書を受け入れていることが明らかになった。最も多くの大学で受け入れられている電子証明書は卒業証明書や成績証明書で、次いで統一試験の結果、推薦状、英語資格証明書と続いた。

大学が認める「公式文書」とは?

出願の際の証明書類として99%のアメリカの大学が容認していたものは「厳封され、発行者から直送された紙の文書」であった。一方で、85%の大学は「電子化され、発行者から直送され(または第三者サービスを経由し)た文書」も受け入れていた。このように、従来の紙の書類に加え、電子化された文書もほとんどの大学に受け入れられていることが分かった。

一方で、「厳封され、学生が提出した紙の文書」を認める大学は68%に留まった*4。この数値は発行者からの直送(99%)よりも低く、文書偽造防止への意識があることがうかがわれる結果となった。

紙の文書のスキャン画像も活用

また、紙の文書をスキャンした画像を出願時に受領する大学は74%に及んだ。こうした画像は入学者選抜のために一時的に利用され、入学手続きの際には原本の提出が要求されている。

海外からの出願に対する方針

海外からの出願に対する証明書受領方針としては、大学の54%は「発行者が直送する、安全で確実性のある電子ファイル」を、43%は「発行者が直送する、PDFファイル」を受け入れていた。一方で、29%が「海外の機関からの電子ファイルの直送は受け付けていない」と回答した。

オーストラリアとニュージーランドの大学が参加するMy eQualsやオランダのDiplomaregisterなど、世界には電子化された証明書を発行するサービスはいくつも存在する(本サイト2017年6月7日掲載記事)。さらに、中国での学習歴を公的に認証するCDGDC*5やCHESICC*6は2018年7月より証明書の完全電子化を行っている(本サイト2018年11月9日掲載記事)

さまざまな証明書への対応

出願時に必要な書類は卒業や成績の証明書だけではない。大学が受け入れている電子証明書の種類を問う設問では、回答率が高かった順に「国内の学習歴証明書(89%)」「統一試験*7の成績(76%)」「推薦状(70%)」「海外の学習歴証明書(61%)」「英語資格の証明書(56%)」「残高証明書(52%)」であった。これらの書類は日本でも出願時に必要となりうるものであり、各高等教育機関は電子化された文書にも対応していることが期待される。

オンラインの認証サイトの普及はこれから

証明書自体の電子化だけでなく、証明書の内容をオンラインで確認できるウェブサイトも増えている。例えば、アルゼンチンやウクライナなど政府が運営する認証サービスも存在する(本サイト2018年10月24日掲載記事)。しかし、今回の調査では40%の大学がこうしたサービスを受け入れていないと回答するなど、オンラインの認証サイト利用の普及は道半ばであった。

証明書の電子化への対応は急務

教育機関への出願時に電子文書を用いる機会は今後も増えることが予想される。欧州でボローニャプロセス(NIAD-QE国際連携ウェブサイト)に参加する48か国は、国境を越えた進学の際に有用な文書としてディプロマ・サプリメントの発行を義務付けられているが、現在はこの文書の電子化が検討されている(本サイト2017年9月20日掲載記事)。日本でも文部科学省が高等学校が発行する調査書を電子化するための調査を行っている(本サイト2019年3月27日掲載記事)。また、マサチューセッツ工科大学などでは学習歴をブロックチェーン上に記録する方法が実用化されており(本サイト2017年11月17日掲載記事)、今後も多くの証明書が多様な方法で発行されるようになることは想像に難くない。

今回の調査はアメリカの大学が対象であったが、日本の高等教育機関ではどうであろうか。出願者からの証明書類は、信ぴょう性を確保するため教育機関からの直接提出で受け取るようになっているのか。あるいは、電子化された証明書でも対応できるようになっているか。近年の国際的な出願処理の潮流を知るうえで、示唆に富む調査であった。

*1AACRAO: The American Association of Collegiate Registrars and Admissions Officers
*2AICE: Association of International Credential Evaluators
*3フローニンゲン宣言ネットワークに関してはこちらの記事(本サイト2017年6月7日掲載記事)を参照。
*4例えばWESが発表した白書でも、証明書は発行者から直接送付させることを勧めている(本サイト2014年12月26日掲載記事)。
*5CDGDC: 教育部学位与研究生教育发展中心
*6CHESICC: 全国高等学校学生信息咨询与就业指导中心
*7例えばSAT、GRE (Graduate Record Examinations)、GMAT (Graduate Management Admission Test)など。

原典:Gottlieb & Morawski (2019) Showcasing Results of the 2018 Survey on Digital Academic Records by AICE and AACRAO(英語)
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