カナダ:専攻分野が年収に影響―コミュニティカレッジと大学の学士取得者の平均年収を比較

2019年9月、カナダの統計局が発表した文書「Obtaining a Bachelor’s Degree from a Community College: Earnings Outlook and Prospects for Graduate Studies」によれば、コミュニティカレッジの学士取得者は大学の学士取得者に比べ、卒業から2年後の年収が12%高いことが明らかになった。背景には、コミュニティカレッジの学士取得者はより賃金の高い分野を専攻する傾向があった。

コミュニティカレッジによる学士課程の学位授与※1は、地方に住む学生であっても学士レベルの教育へのアクセスが可能となるよう、1980年代に始まった。しかし、その存在はあまり知られておらず、統計局のサンプル調査から推計すると(2010-13期)、コミュニティカレッジによって授与された学士は学士全体の4.3%を占めるに過ぎない。
なお、コミュニティカレッジの学士取得者の卒業2年後の平均年収は55,187カナダドル(約447万円)※2であるのに対し、大学の学士取得者の場合は49,281カナダドル(約399万円)となっており、コミュニティカレッジの学士取得者の平均年収の方が高かった。

背景には、コミュニティカレッジの学士取得者はより賃金の高い分野を専攻する傾向があった。具体的にはコミュニティカレッジの学士取得者のうち、38.1%が賃金の比較的高い分野とされる経営やマネージメント、行政を専攻していた。これに対し、 学士取得者 のうち、それらの分野を専攻したものは21.0%にとどまっていた。
両者の平均年収の差を分析するとその要因の9割近くが、学生の専攻分野の選択によって説明できることが明らかとなった。その他に考えられる要因として、コミュニティカレッジの学士取得者が大学の学士取得者に比べ、2歳以上年上であることが挙げられた。

しかしながら同じ研究手法において、卒業後2年から5年にかけての大学の学士取得者の平均年収の伸びはコミュニティカレッジの学士取得者よりも3,000カナダドル(約24万円)も高くなっており、平均年収の伸びに関してはコミュニティカレッジの学士取得が優位ではないことも明らかになった。

※1
カナダのコミュニティカレッジでは従来、サティフィケートを授与する課程(学習期間1年)とディプロマを授与する課程(学習期間2~3年)を提供している。カナダのコミュニティカレッジによる学士課程の提供は一部の機関にのみ認められたものであり、学習期間は4年である。

※2
上記はすべて1カナダドル≒81円(2019年10月現在)として計算した。


原典①:Statistics Canada(英語)
原典②:Marc Frenette (2019), Obtaining a Bachelor’s Degree from a Community College: Earnings Outlook and Prospects for Graduate Studies, Statistics Canada(英語)

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