高等教育の国際化の世界的動向を俯瞰する―IAU Global Survey

国際大学協会(International Association of Universities [IAU])は、2019年9月に調査報告書「IAU 5th Global Survey – Internationalization of Higher Education: An Evolving Landscape, Locally and Globally」を発表した。この調査は、高等教育の国際化に関する世界的動向の把握を目的に2003年に開始され、今回は5年振りの実施となった。IAUのウェブサイトに掲載されたExecutive Summaryでは、国際化というミッション・戦略が世界の高等教育機関に定着している一方で、観点を掘り下げていくと、具体の取組や課題に地域差がみられることが紹介されている。

調査の概要
2018年3~10月に3言語(英語・フランス語・スペイン語)によるオンライン・アンケートを実施し、2016年度における取組状況の回答を求めた。126か国907高等教育機関から回答が得られた。欧州からの回答が半数近くを占めた前回と比べ、欧州以外の地域からの回答、特にラテンアメリカ、カリブ海地域からの回答が増加した。

調査の観点と回答傾向
アンケートの内容は、「大学全体の戦略における国際化の位置づけ」、「国際化の方針と実際の活動」、「研究の国際化」、「人材の確保と育成」、「学生のモビリティ」、「カリキュラムの国際化、学内の国際化」の6つの観点にまとめられている。以下は、その一部の回答傾向である。

【大学全体の戦略における国際化の位置づけ】

  • 回答の9割以上で、国際化を機関のミッションや戦略の中に位置づけており、自機関の国際化が世界的に行われる取組となっている。北米のみ例外で、回答の1/3は組織的に位置づけられていないと回答。
  • 国際化を進める際の課題の一つに、教育資格・プログラム・単位の承認や同等性の確認が挙げられた。この点は、留学生のリクルーティングの場面でも同様に課題視されている。

【国際化の方針と実際の活動】

  • 国際化に関する活動のモニタリングや評価の枠組、あるいは明示的な目標やベンチマークを有しているとの回答が、アジア太平洋、中東で最も高く(約80%)、北中南米が最も低かった(60-65%)。全体的には、第3回(2010年)から数値に大きな変動はない。
  • 回答の1/3が内部評価、外部評価の両方を実施しているが、内部評価のみ実施の方が多い。
  • 国境を越えた教育(TNE)に関わっているとの回答は半数弱で、ラテンアメリカ・カリブ海地域の回答は少数。TNEの代表例として、学士・修士・博士の学位段階でいずれも単位互換プログラムとなっている。
  • ジョイント・ディグリー、ダブル・ディグリーの実施状況は地域差が顕著。北米で最も行われ、ラテンアメリカ・カリブ海地域の実施率が最も低い。

【カリキュラムの国際化、学内の国際化】

  • カリキュラムの国際化、学内の教育活動等の国際化(Internationalization at home)の重要度を認識する割合が極めて高い。カリキュラム外の活動の代表例は、学内や地域での異文化体験が最も多く、自機関学生による留学生へのメンター制度、異文化スキルを養うためのワークショップと続いた。

原典:国際大学協会(IAU)(英語)
参考:University World News(英語)

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