豪州:質保証にもコロナウイルスの影響、TEQSAが基準遵守の緩和を発表

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響がオーストラリアにも及ぶなか、同国の高等教育質・基準機構(TEQSA)は新型コロナウイルスに起因する教育への影響に関して、教育・職業訓練機関に対する留学生受入に関する基準の部分的な緩和や、プログラムの提供方法の変更の許可といった対応策を発表している。

また、2020年3月15日現在、中国、イラン、韓国及びイタリアから出国もしくは通過してから14日以内の外国人(オーストラリア永住者を除く)の入国が制限されている。そうした中、オーストラリアの11年次および12年次の教育課程に在籍する留学生に対しては、課程修了への配慮のため、渡航制限の特例的な除外を個別判断により認める措置が講じられている。なお、海外から入国する全ての渡航者を対象に、渡航後14日間の自宅等での自己隔離措置が求められている。

National Code 2018の部分的な緩和

オーストラリアでは、留学生に対する質の高い教育の提供と留学生保護のため、留学生に教育や職業訓練を行う機関が遵守すべき規範として「留学生受入れにかかる登録行政および教育訓練機関に対する全国行動規範(National Code 2018)※1」が定められている。TEQSAは、新型コロナウイルスに起因する渡航制限により、教育・職業訓練機関がNational Code 2018のうち下記の基準を完全に遵守できない可能性があるとしている。

  • 登録された教育・職業訓練機関は高等教育または職業教育の3分の1以上をオンラインまたは遠隔教育によって提供してはならない(基準8.19)。
  • 登録された教育・職業訓練機関は各コースの最低学習期間に関して、既にコースを修了している場合を除き、海外で学習する学生が少なくとも1ユニットをオンライン又は遠隔教育によらない方法で学習することを確保しなければならない(基準8.20)。

そのため、例えば、教育・職業訓練機関が2020年の第1学期を全てオンライン又は遠隔教育によって提供することが学生にとって最善であると判断した場合、TEQSAは違反行為とはみなさないことを表明した。なお、教育の提供方法を変更する場合には、提供主体は学生にオンラインまたは遠隔教育へのアクセスの提供と支援を行うことが義務付けられる。

最低基準(Threshold Standards)との関係

TEQSAは、新型コロナウイルスの影響で、教育・職業訓練機関がTEQSA法のもとに定められている高等教育機関の質に関する最低基準(Threshold Standards)の充足が困難、または困難となることが予見される場合にはTEQSAへ通知するよう求めている。最低基準は全ての高等教育機関に対するTEQSAの質保証の基準であるが、具体的な事例としては、海外で学習する留学生に対する教育提供方法の変更により、National Code 2018の基準8.19、基準8.20の遵守に影響が出る場合や、財政や運営体制の維持に変化が生じる場合を挙げている。

教育・職業訓練機関および学生への配慮

TEQSAは、新型コロナウイルスの影響を受けている学生への配慮として、教育・職業訓練機関が2020年の第1学期の開始時期を遅らせることを認めることとした。また、学期の開始に間に合わない学生に対し、教育・職業訓練機関は学習開始時期を個別に先送りにすることも選択できるとしている。

さらに、2020年2月22日より教育・技能・雇用省は、オーストラリアの11年次および12年次の教育課程に在籍する留学生に対して、オーストラリアへの入国制限を個別判断により特例的に除外する措置を設けることとなった。これは11年次及び12年次の教育課程では授業への出席が厳格に求められ、特に12年次に在籍する学生については授業への出席状況によっては今年度中の課程修了が困難になることに配慮したものである。

※1:National Code of Practice for Providers of Education and Training to Overseas Students 2018

原典:TEQSA(英語)
参考①:内務省(英語)
参考②:教育・技能・雇用省(英語)
参考③:教育・技能・雇用省(英語)

カテゴリー: オーストラリア パーマリンク

コメントを残す