韓国:大学で100%オンラインの修士課程が初めて承認

韓国教育部は2022年2月17日、教育課程のすべてをオンラインで提供する修士課程を設置する大学を承認したことを発表した。一般大学※1におけるオンライン教育による学位課程は、2021年の関連法令の施行に伴い制度化されたものであり、今回承認された6大学7専攻が初めての事例となる。コロナ禍において、一般大学の遠隔授業拡大のための規制緩和※2が行われてきたが、今回の完全オンラインによる学位課程はさらに踏み込んだ形となった。
※1 大学、産業大学、教育大学、専門大学、技術大学、各種学校
※2 これまで一般大学は、「一般大学の遠隔授業運営基準(現在廃止)」に則り全科目単位数の20%を上限に遠隔授業を開設することができたが、新型コロナウイルス初年の2020年に教育部がこの上限を撤廃したことにより、学生が卒業要件のすべてを遠隔授業のみで充足する場合を除き、遠隔授業による履修単位の上限等を大学が自律的に設定することが可能となった。

オンライン学位課程の概要

教育部の「一般大学のオンライン学位課程承認基準」によれば本制度の概要は以下の通りである。
  • 制度概要:対象大学において対面教育を組み合わせることなくすべての教育課程をリアルタイムまたは録画された教育コンテンツを用いて提供し、課程修了者に学位を授与する。
  • 対象:高等教育法第2条第1項から第4項、及び第6項から第7項に規定される学校(大学、産業大学、教育大学、専門大学、技術大学、各種学校)
  • 対象学位課程:修士課程、(専門)学士課程※3
  • 承認手続き:承認審査委員会による審査を経て、4年単位で承認
  • 承認後のフォローアップ:承認2年後に中間点検実施
  • ※3 (専門)学士課程は外国大学と共同で運営される課程のみ対象(次項根拠法令参照)。

    根拠法令

    一般大学における遠隔授業の運営に関する訓令(2021年2月15日施行)
    第4条(オンライン学位課程運営)
    一般大学は次の各号に該当する場合には、教育部長官の承認を得て、オンライン学位課程を運営することができる。
    1. 高等教育法施行令「第13条第1項第1号及び第3号に基づき、国内・外の一般大学と共同で学士又は修士の学位課程を運営する場合」
    2. 高等教育法「第2条第1項から第3項までの大学が修士の学位課程を運営する場合」

    承認大学・専攻一覧

    今回承認された大学と専攻は下表の通り。公募時には12大学22専攻からの応募があったが、専門家による審査を経て最終的に6大学7専攻が承認された。なお、2021年に導入されたオンライン学位制度は(専門)学士、修士課程を提供対象とするが、今回承認された大学・専攻はすべて修士課程であった。
    表:承認大学・専攻一覧

    教育部長官のコメント

    ユ・ウネ(兪銀惠)副総理兼教育部長官(当時)は今回の発表に際し、「コロナ禍の2年間で蓄積された非対面授業の経験をもとに整備されたこのオンライン学位課程制度が、高等教育分野の教授・学習イノベーションの強固な軸となることを期待する」とともに、「緻密に設計された教育課程や優秀な教授陣、良質なデジタルインフラを備えたオンライン授業が、対面授業以上の可能性を広げられるよう大学とともに努力していきたい」とコメントしている。

    遠隔大学界の声

    これまで遠隔教育による学位課程の提供は遠隔大学が担ってきた。遠隔大学とは、高等教育法第2条第5項に規定される、「放送大学」、「通信大学」、「放送通信大学」、「サイバー大学」の総称であり、情報通信メディアを用いた教育を通じて高等教育や生涯教育の発展に寄与してきた。

    今回の制度導入によりオンライン教育による学位課程の提供が遠隔大学以外の大学でも可能になったことに対し、遠隔大学界からは懸念を示しつつも競争を生き抜く自信の声が聞かれている。サイバー大学大学院長協議会のユン・ビョングク会長は、「この制度導入により、今までオンライン教育をしてこなかった大学院もオンライン教育を提供するようになるのではないかと懸念している。一方で、オンライン教育には相当なノウハウが必要であり、そういった点でサイバー大学、大学院がこれまでに蓄積したノウハウに基づく利便性と教育の質の高さは十分な競争力を持つ」とのコメントを残している。

    原典:教育部(韓国語)
    原典:教育部(韓国語)
    原典:韓国大学新聞(韓国語)

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