韓国教育部は2022年6月3日、一般財政支援大学の追加選定結果を発表した。2021年に実施された大学基本能力診断評価の結果、一般財政支援大学(「大学/専門大学革新支援事業」の補助を受ける)に選定されなかった大学を対象に追加の評価が行われ、13大学(4年制大学6大学、専門大学7大学)が追加選定されたものである。
【背景】大学基本能力診断評価と一般財政支援大学
韓国教育部は、急激な学齢人口の減少に備え、大学の量的規模の縮小を目的に、2015年から3年ごとに大学基本能力診断評価を実施し、大学の構造改革に積極的に取り組む大学に対してインセンティブを与えることなどにより、2023年までに大学定員の16万人削減を目指している。2021年9月3日に教育部は第3周期の大学基本能力診断評価の結果を発表し、一般大学136校・専門大学97校が「大学/専門大学革新支援事業」補助金の交付対象として選定された一方で、選定されなかった大学(未選定大学)は52校あった(本サイト2021/11/1投稿記事)。その後、未選定大学を中心に反発があり、2022年に再評価の上未選定大学の一部を追加選定することとなっていた(本サイト2022/1/11投稿記事)。大学基本能力診断評価の概要については当機構「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要 韓国」p.15-18を参照のこと。
一般財政支援大学追加選定
一般財政支援とは政府の実施する補助事業「大学/専門大学革新支援事業」のことである。一般財政支援大学に選定された大学は2022~2024年度の間、1校あたりの年間平均額として4年制大学は50億ウォン(約5億円)、専門大学は40億ウォン(約4億円)の補助金を受けることができる。今回の追加選定評価には、2021年大学基本能力診断評価の未選定大学52校※1のうち43大学が申請し、13大学(4年制大学6大学、専門大学7大学)が追加選定された。追加選定大学への補助金(1校あたりの年間平均額)については、4年制大学が30億ウォン(約3億円)、専門大学が20億ウォン(約2億円)と、当初の選定大学と比べて補助額に差がつけられている。
評価指標については、定量指標は2021年評価で用いた5つの定量指標が再利用され、定性指標は新たに設定された(表1)。

また今回の評価では、大学の責務や透明性の確保のために制定された「2021年大学基本能力診断評価不正行為等制裁基準」に則り、指摘事項のあった大学(5校)については減点措置が行われた。
※1 これにはそもそも大学基本能力診断評価に参加資格のない大学(2021年度の財政支援制限大学)や評価に参加しなかった大学は含まれない。
※2 学費(登録金)に対する教育費の比率。
2023年度財政支援制限大学評価
今回の発表では併せて、国の補助事業(特殊目的事業)や国家奨学金・貸与型奨学金の申請・支援が制限される2023年度の財政支援制限大学評価の結果も発表された。 同評価は、一般大学、産業大学、専門大学を対象に毎年実施されている。評価に当たっては、表2の各指標について政府による最低基準が設定されており、それらの充足状況が確認される。未充足が確認された指標数が3つの場合は「財政支援制限大学Ⅰ型」に、4つ以上の場合は「財政支援制限大学Ⅱ型」に指定される。評価の結果、10大学(4年制大学4大学、専門大学6大学)がⅠ型、11大学(4年制大学5大学、専門大学6大学)がⅡ型に指定された。

財政支援制限大学に指定された場合の各種制限措置は表3の通りである。国家奨学金・貸与型奨学金については多くの学生が利用する制度であり、特に貸与型奨学金は約42万人の学生が利用している(教育部、2021)ため、これらの制限の影響は少なくないものと思われる。なお、国家奨学金・貸与型奨学金の制限の具体的内容については、今後学資金支援制度審議委員会を経て確定する予定である。

※3 一般財政支援大学追加選定と同様、「2021年大学基本能力診断評価不正行為等制裁基準」に則り、指摘事項のあった大学については制裁措置としてこの指標が未充足とされた。
原典①:教育部(韓国語)
原典②:教育部(韓国語)
原典③:韓国教育開発院大学基本能力診断評価センター(韓国語)