台湾教育部が台湾留学と留学後の就労を奨励する計画を発表

2023年9月、台湾教育部は、台湾への留学と留学後の現地での就労を奨励する計画「促進國際生來臺及留臺實施計畫」を発表した。本計画では、海外拠点を設置し、大学と企業が共同で設計したSTEM(科学、技術、工学、数学)分野を中心とする特別プログラムの留学生の選抜・支援を行う。留学生には、政府・企業から奨学金、生活費及びインターンシップ手当が提供され、これらの支援を受けた留学生は留学終了後も台湾に残って最低2年間、台湾で就労することが求められる。

本計画は、2024年から2028年まで実施される予定で、5年間で52億台湾ドル(約240億円、1台湾ドル≒4.6円)が投じられる。海外拠点は、欧米諸国と「新南向国家」(東南・南アジア、オセアニアの国々)※1に10か所設置し、留学生の台湾での就職支援体制も整える。

本計画を通じて、台湾政府※2が取り組む「強化移民政策※3の推進及び優秀な留学生を求める台湾の産業界の要請に応えることが期待されている。

  • ※1. 台湾政府が実施する留学生誘致政策である「新南向政策」の対象となっている、インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオス、インド、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、スリランカ、ブータン、オーストラリア、ニュージーランドの18か国を指す。新南向政策については、本サイト2017/1/18投稿記事も参照。
  • ※2. 具体的には国家発展委員会を指し、国家発展の計画、審議、調整、資源配分を行うために行政院が特設した機関である。(國家發展委員會組織法 第一條
  • ※3. 台湾では少子高齢化に伴って15~64歳の労働人口が2015年をピークに減少に転じたのを機に、台湾政府は産業の発展に必要な外国人人材の移民を積極的に受け入れる政策を打ち出している。国家発展委員会は、2011年から2023年8月までの間、各政府部門と協議を重ね、外国の専門人材、華僑の学生と外国人留学生、外国の中級レベルの技術者を主たる対象とし、2030年までに40万人の外国人人材を獲得して台湾の経済成長の維持につなげることを目標としている。(國家發展委員會 強化人口及移民政策

【参考情報】
台湾政府は、2030年時点で留学生総数を32万人、留学後の就労者数を21万人にする目標に掲げている。現在の留学生数と留学後の就労状況は次の通り。
留学生数
2022年時点での台湾における留学生の総数は103,658人で出身国・地域の内訳は以下の通り(カッコ内は全体に占める割合):ベトナム23,728人(23%)、インドネシア16,639人(16%)、マレーシア12,378人(12%)、香港9,248(9%)、日本6,539(6%)、タイ4,047人(4%)、中国(原語:大陸地區)3,150人(3%)、インド3,029人(3%)、フィリピン2,969人(3%)、マカオ2,138人(2%)、その他19,793人(19%)(國家發展委員會 國際人力移動 7.大專院校境外學生人數
留学後の就労状況
2022年に台湾の高等教育機関を卒業した留学生は13,650人だった。台湾は2014年から台湾の高等教育機関を卒業した者を対象としたポイント制による就業許可(僑外生留臺工作評點制)を出しており、この制度を利用した人は、2022年は12,309人に上った。(國家發展委員會 國際人力移動 8.留臺工作僑外生人數

<実施計画の内容(概要)>

1.国際的な大学連携を構築し海外拠点を設置

  • ・政府の重点分野※4に関する大学の連携を構築し※5、欧米諸国と「新南向国家」(※1参照)に海外拠点を設置する。
  • ・ベトナム、インドネシア、フィリピン等での拠点設置を優先し、2024年に7拠点を設置する予定。2025年までに計10拠点まで増やす計画である。
  • ・各拠点では、留学予定者向けの中国語(原語:華語※6)教育及び国際的な産学共同研究等を推進し、優秀な人材の交流を促進する。
  • ・各拠点にて、特別プログラム(後段の2.を参照)の学生選抜を大学と企業が協力して実施する。(ただし、学生募集対象国は海外拠点設置国に限らない。)

2.新たな特別プログラムに参加する学生への学習・生活支援

  • ・大学と企業が共同で、STEM、金融、半導体関連の分野を中心とした新たな特別プログラムを開設する。特別プログラムは、ダブルディグリー学士、2年制学士※7、2年制ポスト学士(原語:学士後)※8、2年制修士、博士の各学位を授与することができる。
  • ・特別プログラムの学生には、台湾政府※9から最大2年間の奨学金が、企業からは生活費及びインターンシップ手当が提供される。これらの支援を受けた学生は卒業後も台湾に残り、最低2年間台湾で就労して企業の人材需要を満たすことが求められる。
  • ※7. 2年制学士プログラムは、短期大学等を修了した者を対象とし、大学に置かれる学士プログラム。
  • ※8. 2年制ポスト学士プログラムとは、大学である分野の学士の学位を取得し、さらに別の分野の学士の取得を目指す者を対象とし、大学に置かれるプログラム。
  • ※9. 具体的には国家発展基金を指す。これは、産業発展と経済促進のために資金を運用する行政院の機関である。(國家發展基金

3.留学生への学習・就職支援の強化

  • ・台湾の高等教育機関に現在留学中の学生の卒業後の台湾での就職率を高めるため、留学生向けのキャリア相談、就職支援体制を強化する。
  • ・高等教育機関には4年間にわたり補助金が交付され、①留学生への専門就職支援員の配置、②企業との共同プログラム(インターンシップを含む)の企画、③学習と就職に関する標準作業手順書(SOP)の作成、④就職フォローアップ体制構築のために使用される。
  • ・各機関の支援体制に問題がある場合は、速やかに政府が意見を聴取して改善する。

原典:台湾教育部
教育部規劃「促進國際生來臺及留臺實施計畫」吸引優秀國際學生來臺就學與留臺工作

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