ビジネス・イノベーション技能省が政策文書の中で教育卓越性枠組(TEF)の具体的な制度案を提示

原典:ビジネス・イノベーション技能省(BIS)(英語)

英国のビジネス・イノベーション技能省(Department for Business, Innovation & Skills:BIS)は、2016年5月16日に政策文書(ホワイトペーパー)「Success as a Knowledge Economy: Teaching Excellence, Social Mobility and Student Choice」(全83ページ)を公表し、現状の教育卓越性枠組(Teaching Excellence Framework: TEF)の具体的な制度案を提示した。

当政策文書は、2015年11月に公表された政策提案書(グリーンペーパー)(本サイト2015/12/21投稿記事)に対するパブリックコメントの結果を踏まえて作成されたものである。

英国では、政府の政策は政策文書が議会に提出され、これに基づいて法案が立案される。このうち、政府が国民の意見を問う必要があると判断した場合は、政策提案書を作成・公表した上でパブリックコメントを実施し、国民の意見を踏まえた上で、政策文書が作成される。

当政策文書には、TEFの制度案の他にも以下の施策の制度案も含まれており、高等教育部門のステークホルダー(学生・雇用者・納税者)を意識した、高等教育の価値を高めるための取組みを実施していくこととしている。

  • 学生局(Office for Students: OfS)や、UKリサーチ・イノベーション(UKRI)の設置を始めとする行政機関の統廃合。
  • 高等教育部門への新たな教育機関の参入を促し、高等教育部門の競争を活発化させるための規制緩和。
  • 高等教育部門の有する情報を積極的に公開することによる学生の進路等の選択肢拡大。
  • 高等教育進学に不利な学生の進学率の向上。

なお、公表されたTEFの具体的な制度案は以下のとおりである。

  • TEFにおける評価結果は、雇用者及び学生等が賛同した基準に照らし、高等教育機関の主要な指標や各機関から提出された資料等に基づき判断される。
  • TEFは、以下の3段階で判定される。
    1. 期待を満たしている(Meets Expectations)
    2. 優秀(Excellent)
    3. 卓越(Outstanding)
  • TEFについては、マイノリティーな人種、障害のある学生など、不利な立場にある学生の学習成果に配慮したものになっている。
  • この政策文書と同時に、TEF導入2年目以降の具体的な制度設計のため、技術的なパブリックコメントを実施する。
  • TEF導入により、最初の10年間で高等教育部門に年間約10億ポンドの経済効果がもたらされると試算している。
  • いずれの年度においても高等教育機関がTEFに申請するための料金は発生しない。TEF実施に係る経費は、政府より支出される。

TEFの制度現案で示されたスケジュールは以下のとおりである。
1) 導入初年度(2016-2017年に実施、2017-2018年入学生の学費等に反映)

  • 政府は従前の質評価で好評価を受けた機関のリストを公表し、その機関については自動的に、「期待を満たしている」(Meets Expectation)の判定が与えられる。なお、この判定の有効期限は1年のみである。
  • 導入初年度に「水準を満たしている」という判定を得た機関については、以下の財政的インセンティブを得ることができる。
    1. 学費及び奨学金支給上限額が基礎額である6,000ポンドである機関については、限度額である6,000ポンドから物価上昇分の学費の値上げが可能となる。
    2. 学費及び奨学金支給上限額が上限額の9,000ポンドである機関については、限度額である9,000ポンドから物価上昇分の学費の値上げが可能となる。
    3. 学費の上限が決まっていない機関については、6,000ポンドを限度に、その物価上昇分の学費の値上げが可能となっている。

2) 導入2年目(2017-2018年に実施、2018-2019年入学生の学費等に反映)

  • 導入2年目より「期待を満たしている(Meets Expectations)」、「優秀(Excellent)」、「卓越(Outstanding)」の3段階で判定が行われる。
  • TEFへの申請を予定し、かつ高等教育の質保証における基礎的要件を満たしている機関については、少なくとも「期待を満たしている(Meets Expectations)」の判定が与えられる。
  • 導入2年目で得た判定は最長で3年間有効となる。
  • 財政的なインセンティブは導入初年度のものと変わらない。「期待を満たしている(Meets Expectations)」より高い判定を得ることによるインセンティブは、財政的なものよりも、当該機関の評判を上げることにある。
  • 導入2年目の主要な評価指標については、以下のものが規定されている。
      1. 全国学生調査における学生満足度
      2. 高等教育機関の在籍率(retention rate)
      3. 卒業6ヶ月後の雇用・進学状況

    この他に、機関が提出する15頁以内の申請書も評価する。

  • 導入2年目から、TEFはQAAとHEFCEが共同で実施する。ただし、OfSが設立された後は、OfSがTEFを実施する。

3) 導入3年目(2018-2019年に実施、2019-2020年入学生の学費等に反映)

  • 導入3年目以降については、異なる学費及びローンの上限額を設定する予定。
  • TEFで良い判定を得た機関に対する財政的インセンティブを与えるため、「卓越(Outstanding)」あるいは「優秀(Excellent)」の判定を得た機関については、物価上昇分のうち100%を、「期待を満たしている(Meets Expectations)」の判定を得た機関にはその50%分だけ学費の値上げを可能にする等、判定の種類によって物価上昇分の引き上げられる学費の割合に差を設ける予定。
  • 導入3年目にはTEFが本格的に実施されるとともに、主要指標以外に、教育活動の重視度等の新たな指標を開発する。
  • 分野別評価の試行も行う。

4) 導入4年目(2019-2020年に実施、2020-2021年入学生の学費等に反映)

  • 導入4年目には分野別評価を正式に開始し、大学院修士課程も対象にすることを検討する。
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