米・アクレディテーションが直面する今日的な課題

原典: ①CHEA(英語)
CHEA(英語)

米国高等教育アクレディテーション協会(Council for Higher Education Accreditation: CHEA)は、2016年5月に大学理事会へ向けたアクレディテーションの手引“A BOARD MEMBER’S GUIDE TO ACCREDITATION: THE BASICS, THE ISSUES, THE CHALLENGES”を発表し、アクレディテーションが直面する今日的な課題について言及した。

CHEAは2009年9月に大学理事会協会(Association of Governing Boards of Universities and Colleges: AGB)と共に大学理事会がアクレディテーションへ参画することの重要性を強調する声明を発表しており、本手引も大学理事会にアクレディテーションへの参画を促すものとみられる。手引の執筆者であるCHEA会長のJudith S.Eaton氏は、「アクレディテーションは大きな変化に直面している。大学のリーダーである理事会がアクレディテーションや学術の質に関する課題を認識し対処することは、不可欠である」として、問題意識の共有を図っている。

手引によれば、米国におけるアクレディテーションは以下の課題に直面しているという。

(1)連邦政府の役割の拡大

ブッシュ政権やオバマ政権に見られるように、アクレディテーション行政における政府の監督機能は拡大している。賛否はあるが、議会や教育省の許容できる方法で連邦政府の規制を減らし、アクレディテーション認定を合理化することが求められている。

(2)公的な説明責任の増大

アクレディテーションに関する公的な説明責任が増大している背景には、もしアクレディテーションがより有効であるならば、卒業率が上がり、学生は高いスキルをみせ、学生ローン債務残高が減少するだろうという期待がある。アクレディテーション機関や大学には、従来通りの質改善アプローチを維持しつつ、成果や透明性を確保することが求められている。

(3)高等教育におけるイノベーションへの注目

無料・低価格、オンラインによるアクセスの拡大を利点とする代替高等教育提供者や、学習成果を確保することに応えるコンピテンス・ベース教育といった、教育へのアクセスのしやすさやパフォーマンスに係るイノベーションについても、これらの質評価においてアクレディテーション機関がリーダシップを発揮することが期待されている。(第三者による独立した任意の質評価の必要性を訴える提言書については、こちら(本サイト2014/11/13投稿記事)参照。

(4)質判断の新たな方法の出現

アクレディテーションに代わり学術の質を判断する新たな方法として、ランキングやデータ・セットが出現している。高等教育界ではランキングで質を判断することへの疑問が投げかけられている一方で、実際にはランキングで質を判断することが一般的になされている。またデータ・セットの出現によって、質に関する情報が各々で収集・比較されるようになり、アクレディテーションに依らずに質が判断されるようになっている。アクレディテーション界は、将来的にはこれらの方法との連携を考慮する必要があるであろう。

(5)高等教育における国際化

米国内の大学が国際的な活動を拡大させている中で、アクレディテーション機関は、質保証に係る情報を提供したり、他国の機関・プログラムについてアクレディテーションを実施したり、国際的な質保証の枠組みに協力したりといったように、国際的な質保証に係る見識も必要とされている。

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