QAAが、デジタル技術の活用による教育の質向上に関する報告書を公表

原典:英国高等教育質保証機構(QAA)(英語)

2016年10月、英国の高等教育の質保証機関であるQAAが、デジタル技術の応用力(digital capability)、卓越した教育(teaching excellence)及び教育におけるデジタル技術の効果的な利用方法に関する調査研究報告書「Digital capability and teaching excellence: an integrative review exploring what infrastructure and strategies are necessary to support effective use of technology enabled learning (TEL)(56ページ)」を公表した。

この報告書は、QAAの「会員研究」(Subscriber Research Series)と呼ばれる事業の一環としてとりまとめられた。「会員研究」は高等教育機関間の連携強化や情報共有を目的とし、QAAの会員機関の関心の高いテーマに関して、高等教育機関へ調査研究を委託するもので、毎年数件のプロジェクトがQAAによって選定される。当該報告書については、シェフィールド・ハラム大学の教員が中心となって取りまとめた。

本研究のねらいは、デジタル技術をいかに教育に応用すれば、教育の質を向上させ、学生の学習経験(student experience)を改善することができるのか、また、そのための戦略として何が挙げられるか等を明らかにすることであるとしている。また、当報告書の内容は、教育卓越性枠組(TEF)(本サイト2016/6/13投稿記事)が、本年度より実施される中で、デジタル技術の応用力及び卓越した教育の関係を検討する材料になるとしている。

報告書では、デジタル技術の活用による教育の質向上のための提言の他、7つの原則からなる「デジタル技術の応用力の向上による卓越した教育実現のためのガイドライン」が示されている。

<報告書の主な見解>

  • テクノロジーは、教育を変えると信じられてきたが、従来の戦略等を精査してみるとそのポテンシャルを完全に活かしてこれた訳ではない。今後、従来型の戦略の変革が求められる。
  • デジタル技術の応用力が、卓越した教育の実現を可能にする。ただし、あくまでもテクノロジーは補助的なものにとどまり、核となるのは教育の内容そのものである。
  • 今後は、一部の教職員だけでなく、全員がデジタル・スキルを高めていくことが重要である。
  • 高等教育機関は、既存のテクノロジー及び新しい教授法について、あり得る将来展開などを体系的に観察・分析し、卓越した教育の実現のため、そのテクノロジーと新たな教授法の統合モデルを検討するべきである。
  • 「デジタル技術の応用力の向上による卓越した教育の実現のためのガイドライン」を既存の優良事例と結びつける等により、改善していくことが必要である。

<「デジタル技術の応用力の向上による卓越した教育の実現のためのガイドライン」における7つの原則>

  • Start with pedagogy every time(常に教育を一番に据えよ)
  • Recognise that context is key(状況把握が重要であることを認識せよ)
  • Create a digital capability threshold for institutions(機関におけるデジタル技術の応用力の最低基準を設けよ)
  • Use communities of practice and peer support to share good practice(優良事例の共有のために、実践コミュニティ及びピアの支援を活用せよ)
  • Introduce a robust and owned change management strategy(変化に対応するための厳格かつ固有戦略を導入せよ)
  • Develop a compelling evidence-informed rationale(確固たる証拠に基づく理論的な解釈を推進せよ)
  • Ensure encouragement for innovation and managed risk-taking(イノベーション及び管理されたリスクテイクを奨励せよ)

 

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