資格と技能の認証に係る欧州の課題―認証における障害を克服するための提言

原典:欧州委員会(英語)

2016年11月、欧州委員会(EC)は、欧州連合(EU)加盟国における、資格と技能の認証に関する報告書「Study on Obstacles to Recognition of Skills and Qualifications」を公開した。
同報告書は、資格や技能の認証において、一連の認証手続きに関して想定される障害について各国の事例を交えつつ解説している。また、様々な視点から障害を分類し、その結果を踏まえて障害を克服するための提言を示している。

資格等の認証の目的は、各国で異なる高等教育制度や職業資格制度の中で、国境や教育のレベル・種類を越えて高等教育機関へ編入する場合や、業種を越えて就職する場合に、受入側において申請者の資格等を適切に判断することである。報告書では認証時における障害の例として下記の場合を挙げている。

障害の種類

認証手続きの前にみられる障害:
資格・教育・職業訓練に関連する諸制度を理解する難しさ、言語や費用など認証手続きの利用の困難さ、資格の認証に係る認識・情報・ガイダンスの面に係る問題。

認証手続き中にみられる障害:
関係者が外国資格を理解するために必要となる情報と能力に関する問題、申請者個人が保有する資格・就業経験を示すための証拠の不足。

認証手続きの最終段階にみられる障害:
特定の機関からの資格等の認証の欠如、部分認証に係る認証手続きの複雑さ。 

認証における障害を克服するための提言(一部抜粋)

  • EUの政策立案者は既存のEUのツール※1の役割を説明し、認証手続きにおいてその活用を促進するために意識向上を図ること。各国にツールが既にあって優れている場合、EUのツールを利用することの論理的根拠や利益を含め、各国のツールとの連携や読み換えの方法について説明する努力をすること。
  • 国および地域の利害関係者に対し、欧州資格枠組み(EQF)(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)の活用を奨励し支援すること。
  • インフォーマル・ノンフォーマル学習※2の検証に関して、取り決めの締結状況を積極的にモニタリングし、加盟国レベルで提言を実行すること。各加盟国の状況を考慮しつつ、迅速かつ広範な実施を促すこと。優良事例を促進し、広めること。
  • ツールの有用性と国および地域の利害関係者間のコミュニケーションを促すために、ツールの簡易化とツール間の相乗効果の模索を図ること。
  • EUおよび欧州経済地域(EEA)加盟国でなされた認証に係る政策、実行、決定に関する情報を一つに集約したポータルサイトを作成すること。ポータルサイトは、認証の取組概要が明確にわかるよう、各国の関連の法律、枠組み、制度における認証の実施慣行、既存のツールやリンク集、優良事例を含むこと。国内向けには、加盟国ごとにEUのポータルサイトとリンクしたウェブプラットフォームを作成し、利用者個人に対し、様々な職業、業界、教育、訓練の認証のための要件と手続きについての正確な情報を提供すること。
  • EUと各国の政策立案者と実務者は、特に雇用主や個人、加盟国を対象に、認証の必要性や利益に対する意識を向上させるための効果的な制度を検討し、特定すること。
  • EUと各国の政策立案者と実務者は、社会的弱者(難民や移民など)のために、資格や技能の認証について特定の支援を確保し、強化する必要がある。取組みには、認証に掛かる費用の免除、情報や指導の提供制度の強化を含むこと。

実際、資格等の認証に関する様々な取組みが行われており、例えば、外国資格の公正な認証を目指すFAIRプロジェクト(本サイト2015/3/18投稿記事)や資格等の認証作業を統一すべく、共通の認証基準や判断材料をまとめたEARマニュアル(本サイト2014/12/26投稿記事)が作成されている。

※1例えばリスボン認証条約欧州資格枠組み(EQF)、欧州職業教育質保証枠組み(EQAVET)、欧州単位互換制度(ECTSやECVET)等がある(いずれのリンク先もNIAD-QE国際連携ウェブサイトを参照)。

※2ノンフォーマル学習・インフォーマル学習
ノンフォーマル学習:
計画された活動に埋め込まれているが、(学習目標、学習時間又は学習支援などの点で)明示的に学習として示されていない学習。学習者の視点から見て意図的なものである。
(参考:職業能力開発総合大学校「欧州教育・訓練政策関連用語集」)

インフォーマル学習:
計画された活動に埋め込まれておらず、学習者本人も意図していない学習。

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