出典:英国高等教育質保証機構(QAA)(英語)
英国高等教育質保証機構(QAA)は、2016年12月1日に「Quality Review Visit Handbook」(全46ページ)を公表した。
このハンドブックは、イングランド及び北アイルランドにおいて、2016年より導入された新たな質保証制度(本サイト2016/6/2)の一環として実施される、質評価に係る訪問調査(Quality Review Visit)の実施概要(2016-2017)についてまとめたものであり、内容は毎年更新されるとしている。なお、2016年の質評価に係る訪問調査は2017年2月より実施される。
この質評価に係る訪問調査は、従前の高等教育レビュー(Higher Education Review: HER)における訪問調査と比較して、在籍学生より選抜された学生代表が積極的に当該訪問調査に関与することが期待されているほか、学生自身により、当該機関の質保証プロセスに学生が関与していることを示す資料を作成し、提出することが求められているなど、より学生を中心に据えた制度となっている。
質評価に係る訪問調査の概要
目的:
QAAは、イングランド高等教育財政カウンシル(HEFCE)及び北アイルランド経済省(DfENI)の委託により、高等教育の質保証活動の一環として、質評価に係る訪問調査を以下の目的で実施する。
- 新たに高等教育セクターに参入して公的資金の助成を希望する機関について、質保証における基礎的要件が満たされているかを厳格に審査する。
- 新たに高等教育セクターに参入した機関の「発展段階(参入後4年間)」の終わりに、質保証における基礎的要件を満たしているか再審査を行う。
- 「基礎的要件が具備された」機関のカテゴリーに入れられるものの、質保証に懸念が見られる機関に対し、質保証における基礎的要件を満たしているか再度審査を行う。
審査対象:
質評価に係る訪問調査では、受審機関において学術基準が適切に設定され、学生の学習経験の質が確保されているかを判断するため、高等教育資格枠組(FHEQ)、英国高等教育のための質規範(UK Quality Code for Higher Education:クオリティ・コード)、高等教育に関連する管理規範(the relevant Code of governance)※1、消費者や学生の保護に関する規定について基礎的要件を満たしているか確認する。
評価チーム:
原則3名とし、2名となる場合もある。いずれの場合でも、必ず学生を1名含めなければならない。
実施内容:
質評価に係る訪問調査は、以下の5段階で行われる。
ステージ1:QAAが、受審機関と訪問調査を行うにあたっての取り決めについて協議。
ステージ2:QAAが、受審機関にとって最も適切な訪問調査のアプローチの検討のため、書面調査(initial provider assessment)を実施。また、当該機関に対して訪問調査についての概要説明を行う。
ステージ3:評価チームが、HEFCEから得られた年次プロバイダーレビューに係るデータ及び受審機関からの提出資料(学生から提出された資料も含む)を分析。
ステージ4:訪問調査の実施(原則2日)。訪問調査では、評価チームが受審機関の役員、教職員及び学生等と面談を実施。TNE(国境を越える教育)が含まれる場合には、QAAは、その規模や煩雑さについて確認。その際、海外のブランチキャンパスとビデオ会議を行うなど、ヒアリングの方法については受審機関と協議し決定。訪問調査終了後、評価チームにおいて、方針や決定事項について承認。
ステージ5:評価チーム及びQAAは、協力して評価結果を作成及び公表。
判定:
評価チームは、以下の2つのそれぞれの観点について、評価委員が基礎的要件と照らし「信任(Confidence)」、「部分的に信任(Limited confidence)」及び「不信任(No confidence)」の3つの中から判定を行う。
b. 高等教育提供機関における、学生の成果を含む学業経験の質。
なお、評価チームは、4年後に再度実施される質評価に係る訪問調査を経て、新規に高等教育セクターに参入する機関が、「基礎的要件を具備された」機関となるために、新たに「進展が望まれる分野」(the area for development)を抽出する。
判定結果は、HEFCE及びDfENIが、高等教育セクターに参入を希望する機関を認証するか、あるいは、「発展段階」にある機関を「基礎的要件を具備された」機関に移行させるか決定する際に用いられる。
質評価に係る訪問調査報告書:
質評価に係る訪問調査の結果は専門家である評価チームにより決定され、QAAにより、報告書にまとめられる。報告書は、通常10ページ以下とし、「見解」、「判定」、「進展が望まれる分野」及び「改善事項」で構成される。
アクションプラン及びフォローアップ活動:
全ての受審機関は、その結果に関わらず、その「進展が望まれる分野」及び「改善事項」に関して、アクションプランを作成しなければならない。
QAAは、新規参入機関や「部分的に信任」あるいは「不信任」という判定を得た機関が、アクションプランを遂行できるよう支援するほか、進捗について確認する。
※1 大学等が高等教育を提供するにあたり、当該機関の統治機構(governing body)が、効果的な管理・運営を行うことを示す規範