多様なステークホルダーに対応したアカウンタビリティが求められる米国

原典:Student Clearinghouse(英語)

1.米国における学習成果へのアカウンタビリティ

米国では、高等教育の学習成果に関し、学生及び納税者等に対してアカウンタビリティを果たすことが大学に強く求められており、学生のみならず多様なステークホルダーがこの学習成果に関心を寄せている。このような多様なステークホルダーに対し、学習成果等に関するデータベースを基に、ベンチマークやダッシュボードといった形で積極的に情報提供が行われている1National College Access Network(以下、NCAN。)は、多様なステークホルダーに対し、National Student Clearinghouse(以下、Clearinghouse。)が提供しているデータ交換サービスを基に、有益なベンチマークを提供している。

2.Clearinghouseによる学生データの蓄積及び提供

Clearinghouseは1993年に設立された非営利組織である※2。高等教育機関が30~45日ごとに学籍登録している学生の現状に関するデータをClearinghouseに送る※3ことでClearinghouseには学生データが蓄積され、高等教育機関はStudentTrackerというサービスを通じてClearinghouseの学生データを照会し、教育に対する研究及び分析を迅速・簡単に行うことができる。現在、米国の全学生の98%以上が在籍する3,600以上の高等教育機関がClearinghouseに参加している。

3.National College Access Networkのベンチマーキング・プロジェクト

NCANは、コミュニティベースの非営利組織、奨学金提供プログラム・組織、公立学区など約400の加盟メンバーから成る、低所得者やマイノリティの高等教育機関への進学の強化・促進を目的とした組織である。Clearinghouseと連携してベンチマーキング・プロジェクトを行っており、同プロジェクトにおいてNCANは、低所得学生・マイノリティ学生集団に係るベンチマークをNCAN加盟メンバーに提供する役割を果たしている。

NCANはClearinghouseから、学生別(例:所得/マイノリティ/ペル奨学金受給者の別など)に、NCAN加盟メンバーが支援している低所得学生・マイノリティ学生に関する最大6年間分の在学データと学位データの提供を受ける。NCAN加盟メンバーは、Clearinghouseから当該メンバーの支援する学生の追跡報告書及び在学・修了データの集計が提供される。これらによりNCAN加盟メンバーは、どれだけ低所得学生・マイノリティ学生とその他の学生の差を縮めることができたかについて他の州の状況と比較して判断することができる。

4.国際的なアカウンタビリティ・ツール及び日本における取り組み

多様なステークホルダーのニーズを意識した国際的な情報提供ツールとして、欧州の取り組みから始まった多元的世界ランキング「U-Multirank」(当機構国際課まとめ)がある※4

また日本においても、大学の多様な教育活動の状況を国内外の様々な者にわかりやすく発信することで、大学のアカウンタビリティの強化、進学希望者の適切な進路選択支援、我が国の高等教育機関の国際的信頼性の向上を図る大学ポートレートが設置されている。

※1 連邦政府は、College Scorecardという、大学進学の際に学生等に選択肢を提供することを目的として、学費、卒業率、債務不履行率及び卒業後の収入に係るデータの提供サービスを行っている。そして、このデータを基に、政策決定者及び専門家等向けにAccreditor Dashboardsを作成・公表している。
※3 高等教育機関にとっては、連邦政府に対する義務である、全 米 学 生 ロ ー ン・デ ー タ シ ス テ ム(National Student Loan Data System)への学籍報告(Student Status Confirmation Report)をClearinghouseに依頼することでメリットがある。
※4 U-Multirankについては、当機構の平成26年度大学質保証フォーラムのテーマとして扱っており、同報告書(2014年当機構国際課作成)についても、是非合わせてご覧頂きたい。
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