中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁から、「教育対外開放業務に関するガイドライン」(原語:关于做好新时期教育对外开放工作的若干意见)(以下「ガイドライン」と表記)が発表され、同時に、各地区、各部門に向けて、当該ガイドラインの実行を徹底するよう通達が出された。
「教育対外開放業務に関するガイドライン」
このガイドラインでは、2020年までに、中国から海外への留学サービスシステムの整備、海外から中国への留学の質の向上、教育の国際化のレベルアップ、教育の対外開放ルール作り、法整備を行うなどを目標に掲げている。
教育の国際化については、国内における設置認可制度の整備、評価認証の実施、情報公開の強化、優良事例の共有メカニズムの構築、海外の優れた教育資源の導入による教育レベルの向上等といった目標を掲げている。同時に大学や職業教育機関が企業などと協力し、海外へ進出することを奨励している。
また「一帯一路」構想*1に沿って、沿線の各国との教育の国際協力を強化していくとしている。
質保証の面では、アジア太平洋地域での学習歴と学位の相互認証を推進するほか、政府の管理、大学の内部質保証、社会の評価を一体とした質保証システムの構築を目指すとしている。
国内・海外両面における教育の国際化に関するスピーチ
上述のガイドラインを受けて、2016年9月19日に郝平教育部副部長が教育の対外開放に関して、「国内・海外における教育の国際化(原語:统筹国内国际两个大局 做好教育对外开放工作)」と題するスピーチを行った。中国の教育の国際化(対外開放)が量から質という新たな段階へ入っている今、国内における国際化と海外に向けた国際化の二つの面を重視した統一的な計画に従って、教育の国際化の質とレベルの向上を実現しなければならないとし、以下のように述べている。(抜粋)
・教育の国際交流の質向上
国内においては、最先端・良質の教育資源を海外から取り入れ、優秀な人材を育成し、中国の教育力とイノベーション力アップをめざしている。既に上海ニューヨーク大学をはじめ、多くの外国との共同教育機関やプログラムの設置が認可されている。その一方で、国として、発展途上国との教育協力交流の拡大や中国教育機関の海外校運営にも力を入れており、習近平総書記とヨルダン国王が、“中国・ヨルダン大学*2”フレームワーク協定に調印したほか、厦門大学マレーシア校などが既に設立されている。
このほか、学習歴や学位の相互認証を推進しており、現在43の国と地域との間で学習歴と学位の相互認証協定を結んでいる。また教育のグローバルガバナンスへの積極的参画をめざし、ユネスコやその他の国際組織の様々な取組に参画し、グローバル教育の発展について提案を行い、国際教育のルールや基準づくりに主体的に取組んでいる。
中国が現在国策として推し進めている「一帯一路」建設における教育の果たす役割の一環として、沿線の国々と協力し、各国のニーズに合わせた教育の提供、相互補完的な教育協力を通じて、共存共栄のための教育共同体構築を目指す。具体的には、「シルクロード」中国政府奨学金を設立し、毎年1万人の沿線国の新入生を中国に招いて学習・研修を実施する。
・留学事業の質向上
2015年度の中国からの海外留学生総数は52.37万人に達し、そのうち国家による派遣が2.59万人、公的機関による派遣が1.60万人、私費留学が48.18万人となっており、中国は既に世界最大の留学生送り出し国となっている。
更なる留学事業の発展のため、選抜から派遣、管理、帰国、就職までの一貫した留学管理サービスシステムの整備を推し進める
外国人留学生の受入れにおいては、2015年度には、202の国と地域から39.76万人の外国人留学生を受け入れている。2020年には50万人を受け入れ、アジア最大の留学先になると予測されている。中国との友好事業を担う海外の親中・知中人材の育成、「中国留学」ブランドの構築が急務である。
・文化・人的交流の質向上
国民同士の心を通わせるため、文化・人的交流の質向上を対外開放政策の柱にすえ、政府間の教育ハイレベル協議から、教育分野の専門家の実務協力、教員学生の友好交流など、中国と海外との文化・人的交流メカニズムを構築する。国内外における国際理解教育を強化し、各国の学生との相互理解を促進する。中国語と外国語による言語の疎通のため言語協力交流に工夫を加える。また、中国の文化ソフト力を強化し、国際社会における中国文化の発信力を高め、中国への理解を促進する。
*2: 中国・ヨルダン大学:中国初の政府主導による、中国大学の海外校。武漢にある中国地質大学が、ヨルダンのアンマンに海外校を設置し、2017年から募集を開始する予定。