米国:モビリティ促進のための新たな海外展開事例―マイクロキャンパスを拡大するアリゾナ大学

米国のアリゾナ大学は、従来の海外ブランチキャンパスよりも大学の負担やリスクが少ない海外展開モデルとして、海外のパートナー大学にマイクロキャンパスを展開すると発表した。マイクロキャンパスは、自大学で在外キャンパスを持つのではなく、パートナー大学のキャンパスや教室において開講する。アリゾナ大学の各学部単位でパートナーシップを結び、多くの場合でデュアルディグリープログラムを提供しアリゾナ大学及びパートナー大学から学位を授与するという。

1.マイクロキャンパスの特長

アリゾナ大学によると、マイクロキャンパスには主に次のような特長があるという。

  • マイクロキャンパスは海外大学と互恵的なパートナシップを提供する。つまり、パートナー大学はキャンパス及び教室をアリゾナ大学に提供し、アリゾナ大学はパートナー大学と協力し質の高い教育を提供する。
  • 安価で広範な高等教育のネットワークを設けることで、グローバルに入手しやすい学位プログラムのニーズに応える。
  • 海外にインフラを整備するための投資が必要なブランチキャンパスとは異なり※1、マイクロキャンパスは財政的に自立しているため、長期間にわたって国際化を促進する。
  • 教育課程の国際化2のプラットフォームとしてのみならず、学生の短期留学、インターンシップのプラットフォームや、教員研修、研究者間の共同研究のためのハブとして機能する。
2.マイクロキャンパスのパートナー大学

アリゾナ大学は、今回新たに提携する以下の11大学を含む10か国13大学でマイクロキャンパスを展開するとしている。

・Princess Sumaya University of Technology (ヨルダン)
・Telkom University (インドネシア)
・Lebanese International University (レバノン)
・Vietnam National University, Hanoi (ベトナム)
・Tzu Chi University of Science and Technology (台湾)
・De La Salle University (フィリピン)
・Universidad Popular Autónoma del Estado de Puebla (メキシコ)
・Shanghai University of Politics and Law (中国)
・University of Sharjah (アラブ首長国連邦)
・the Harbin Institute of Technology (中国)
・Soochow University (台湾)

なお、既にパートナー大学である中国海洋大学(中国)では2015年から法学プログラム、プノンペンアメリカン大学(カンボジア)では2017年5月から経営管理、土木工学、法学のプログラムを提供している。アリゾナ大学は、今後3年間で25大学以上のマイクロキャンパスをパートナー大学に開設し、25,000人以上の学生に教育を提供できるネットワークを構築する見込みであるという。

3.マイクロキャンパスの質保証

マイクロキャンパスは、アリゾナ大学を適格認定しているHigher Learning Commission(以下、HLC)による認定の結果待ちの状態であり※3、またマイクロキャンパスが所在する地域の規制当局による承認も得る必要がある。なお、既にプログラムを提供している中国海洋大学及びプノンペンアメリカン大学のマイクロキャンパスについては、追加キャンパス(additional locations)として認定されている。

※1 海外キャンパスの成功例と失敗例については、こちら(本サイト2015/3/26投稿記事)。財政的支援や学生獲得が滞ることで、投資の回収ができなくなることは、海外ブランチキャンパスの存続にとって致命的となることがうかがえる。
※2 教育課程の国際化の実施形態の一つとして、課程認定(Validation)がある。例えば、コベントリー大学は海外のパートナー大学のプログラムを課程認定することで、同教育課程を修了した者にコベントリー大学の学位を授与している。
※3 HLCのアクレディテーション基準では、「提供場所及び提供方法の如何を問わず、高品質の教育を提供する」(基準3)としており、主要キャンパス、追加キャンパス、遠隔教育、デュアル単位等を含む、全ての場合についてこの基準を適用するとしている。

原典①:The University of Arizona(英語)
原典②:Inside Higher Ed(英語)

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