ポーランド:大学の研究力や質保証システムに課題、ECによる⾼等教育および科学システムのピアレビュー

2017年9月13日、欧州委員会の(EC)の政策支援ファシリティー(Policy Support Facility:PSF)は、ポーランドの高等教育および科学システムに関するピアレビュー報告書「Peer Review of Polish Higher Education and Science System」を公表した。

このピアレビューは、8名の専門家(オランダ、オーストリア2名、スウェーデン2名、デンマーク、フィンランド、ベルギー)からなる委員会により2017年1月から9月にかけて実施された。本報告書では、ポーランドの高等教育および科学システム、それらのパフォーマンスおよびイノベーションの状況は、「準最適」と評価されているものの、大学の研究力や質保証システムにおいて課題が見られる。

ポーランドにおける高等教育

大学型の高等教育機関、博士号の学位授与権を持たない非大学型の高等教育機関、短期高等職業教育プログラムを提供する社会福祉カレッジがある。高等教育機関数は415(2016年)で、そのうち公立は132(大学型は92)、私立は283(大学型は19)となっており、学生数の約3/4が公立の高等教育機関に所属している。OECDのEducation at a Glance 2017によると、高等教育を受けた者(25-34歳)の割合は43%(2016年)となっている。

研究大学の強化

ピアレビュー報告書は、政策により研究大学を強化する、ドイツのエクセレンス・イニシアティブ(German Excellence Initiative)に基づくアプローチを提案している。

第1期では、ポテンシャルの高い少数の研究大学(10機関程度)を選抜し、多額の追加資金を複数年度にわたり提供する。第2期では、さらに少数の国際競争力のあるフラッグシップ大学(3機関程度)を選抜し、さらに複数年度にわたり追加資金を提供する。

また、デンマークが大学や公的研究機関の統合・再編を実施したように、ポーランドにおいても公的研究機関や科学アカデミーの優秀な研究ユニットを研究大学に統合・再編することにより、科学分野におけるポーランドの国際的な認知度を高め、世界大学ランキングを向上させることにつなげる。

質保証および評価システム

現在、ポーランドの質保証システム、高等教育機関および研究の評価は、国家主導となっており規制当局の影響下にある。当局は過度な規制と負担を高等教育機関に課しており、国際的な科学水準に十分適合しておらず、また、透明性が欠けている。

そのため、質保証システム構造の単純化、国際基準への適合性の確保、高等教育機関主導の質保証システムの構築、透明性の高い評価システムの開発が求められる。

教育プログラムの評価

現在の手法
ポーランドアクレディテーション委員会(Polish Accreditation Committee:PKA)は、学士および修士レベルの教育プログラムを評価している。評価基準は、プログラム設計、教員の質、国際化、学習成果など、過剰な項目とリストで構成されている。リストは適切ではあるが、評価の重点は高等教育機関の質保証システムではなく教育プログラムにおかれている。

改革への提言
アクレディテーションのための質保証と、改善・向上のための質保証を区別する。現在の手法は、これらの2つの要素が混同している。また、アクレディテーションを通した改善・向上のためのフィードバックが高等教育機関に提供されていない。

アクレディテーション委員会にプログラム別評価に代えて機関別評価を実施する権限を与え、委員会の自律性を高める。アクレディテーション委員会は、高等教育機関の教育プログラムのサンプリング評価と内部質保証システムの評価に重点をおくことで、アクレディテーションの効率化を図る。高等教育機関の内部質保証システムが十分なものでない場合は、プログラム評価を再び実施する。

また、国際競争力を高めるため、例えば、少数の高等教育機関にEQAR(欧州地域共通の質保証ガイドラインであるESGを遵守する評価機関で構成する欧州質保証機関登録簿)に登録されている他国の質保証機関から認定を受ける権利などを付与する。

研究ユニット評価

現在の手法
科学ユニット評価委員会(The Committee for the Evaluation of Scientific Units:KEJN)は、研究ユニット評価を実施し、約900の研究ユニットをA+、A、BおよびCの4つのカテゴリに分類する。半数以上(56%)のユニットはカテゴリBに属し、カテゴリA+はわずか4%となっている。

評価は、論文数、研究規模、外部資金、および研究ユニットが提出した10のハイライト(優れた研究業績)の4つの基準による。論文数は評価全体の60〜80%を占めており、論文被引用数の影響はわずかとなっている。

(出典:Peer Review of Polish Higher Education and Science System)

改革への提言
3つの柱に基づいた研究評価システムを開発する

  • 出版物(論文、著書等)に基づいた研究成果の評価
  • 研究のインパクト(社会的影響)の慎重な測定
  • すべての研究分野に対する定期的な国際的ピアレビュー

現在、ポーランドの研究ユニット評価では、出版物の数に重点を置いている。新しいシステムでは、抄録・引用文献データベースを用いて研究のインパクトを測定する。

英国の研究卓越性枠組(Research Excellence Framework:REF,本サイト2015年1月19日掲載記事)のように、評価結果と研究予算の配分を結びつけ、最先端の研究を促進する。あるいは、ドイツのように競争的研究資金を配分する機関、ポーランドにおいてはナショナル・サイエンス・センター(National Science Centre:NCN)が研究資金の配分を通じて、質の高い博士プログラムへの資金提供を行う。NCNが研究評価を担うことはポーランドの質保証システム構造の単純化につながる。

さらなる発展に向けた7つの提言

  1. 大学、科学アカデミーおよび公的研究機関における研究能力の断片化を解消する。
    – 研究大学にポーランド科学アカデミーや公的研究機関の研究ユニットを統合・再編
  1. 国立大学における効果的なガバナンス体制を確保する。
    – 執行部の権限強化、大学運営への外部委員の参画
  1. 高等教育および科学システムへの公的な投資目標を設定する。
    – パフォーマンス応じた資金配分、複数年(3-4年)の予算システムの導入
  1. 博士課程やアカデミックキャリアパスを根本的に改革することにより、高等教育および科学システムの質を向上させる。
    – 透明性の高い研究者評価指標の策定、テニュアトラックの導入、女性研究者の登用
  1. 多様な高等教育および科学システムを支援するための質保証文化を築く。
    – 各機関のミッションに応じた評価基準の設定、分野の特性に応じた研究評価、継続的な改善を促進する研究評価システムの構築
  1. イノベーションへの幅広いアプローチを確保する。
    – 教員・研究者および学生の起業家精神の涵養、産学官連携の推進、社会人の学び直し
  1. 科学およびイノベーションの国際化を促進するための明確な指針と行動を定めた包括的な戦略を策定する。
    – 教員・研究者および学生の国際交流の推進と財政支援、若手研究者の海外研究活動へのインセンティブの提供

 

原典:Peer Review of Polish Higher Education and Science System,European Commission(英語)
原典:世界の学校体系,教育調査第152集,文部科学省(日本語)

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