欧州:ECがキーコンピテンスに関する新たな提言を採択

2018年1月、欧州委員会(EC)が、生涯学習におけるキーコンピテンス※1に関する新たな提言(a new Recommendation on Key Competences)を採択した。

欧州において2006年から取り入れられた生涯学習におけるキーコンピテンスは、欧州圏内の様々な国の教育改革・戦略に影響を与え、各国の国家資格枠組(NQF)に組み込まれるなど、高等教育や職業教育において発展してきた。2016年、ECは、幅広いステークホルダーとキーコンピテンスに関する協議を行い、複雑化する社会に対処するため、個人に幅広いスキルやコンピテンスが求められるようになった現在の状況を反映するため、今回の改訂に至った。新たな提言では、以下の8つのキーコンピテンスが提示されている。

2出典:EC: a new Recommendation on Key Competences

【新旧8つのキーコンピテンス】
各キーコンピテンスは、相互に関わり、連動している。批判的思考、問題解決能力、チームワーク、コミュニケーション能力、交渉力、分析力、創造性、異文化理解能力などのスキルは、全てのキーコンピテンスに組み込まれている。

旧(2006年版) 新(2018年版) 2018年版における説明
母国語によるコミュニケーション

Communication in the mother tongue

読み書き能力、応用力

Literacy competence

概念、感情、事実及び意見を、口頭及び筆記の両方の形で、分野・文脈横断的に、視覚、聴覚、デジタル素材を用いて、識別、理解、表現、創造、解釈する能力のこと。これは、適切かつ創造的な方法で、他者と効果的にコミュニケーションをとるための能力を意味する。なお、本コンピテンスは、母国語または学校教育で使用される言語、公用語で発達するものである。
外国語によるコミュニケーション

Communication in foreign languages

言語能力

Languages competence

コミュニケーションの際、異なる言語を適切に、効果的に操る能力のこと。本能力は、自身の必要性に応じ、適切な範囲の社会的及び文化的状況において、口頭および筆記の両方の形(リスニング、スピーキング、リーディング、ライティング)で概念、思考、感情、事実及び意見を理解、表現、解釈する能力に基づいている。
数学的能力及び科学、技術分野における基本的能力

Mathematical competence and basic competences in science and technology

数学的能力及び科学、技術、工学分野における能力

Mathematical competence and  competences in science, technology, engineering

数学的能力とは、日常生活において数学的思考を幅広い問題解決に用いることができる能力のこと。科学的能力とは、疑問を見極め証拠に基づく結論を引き出すため、自然界の説明に用いられる知識と方法論を使うことができる能力とその意欲のこと。技術、工学分野における能力とは、認知された人間のニーズに応じて知識や方法論を適用させる能力のこと。
デジタルコンピテンス

Digital competence

デジタルコンピテンス※2

Digital competence

学習、仕事、社会参加のため、自信を持ち、批判的に責任を負いデジタル技術を使用・関与できる能力のこと。情報リテラシー、データリテラシーを始め、プログラミング能力等も含む。
学ぶことの学習

Learning to learn

個人的・社会的・学習能力

Personal, social and learning competence

自分自身と向き合い、時間・情報の効率的管理を行い、建設的な方法で他者と協力し、順応性を保ち、自身の学習やキャリアを管理する能力のこと。不確実性や複雑性に対処し、学び方を学び、心身の健康を保ち、争いごとを理解し対処する能力も含む。
社会的・市民的コンピテンス

Social and civic competences

市民的コンピテンス

Civic competence

世界的発展や持続可能性と同様に、社会的・経済的・政治的概念・構造への理解のもと、責任がある市民としてふるまい、十分に社会参加をする能力のこと。
先導力、起業家精神に関するセンス

Sense of initiative and entrepreneurship

起業家精神力

Entrepreneurship competence

様々な機会や考えに基づいて行動し、それらを他者の価値に変えられる能力のこと。創造性、批判的思考、問題解決能力、先導力や忍耐力のほか、文化的、社会的、商業的価値を持ったプロジェクトの計画・管理のために共同して働くことができる能力から成る。
異文化理解、文化的表現

Cultural awareness and expression

異文化理解、文化的表現力

Cultural awareness and expression competence

異文化や様々な芸術、他の文化的形態について、それぞれの考え方や意味がいかに独創的に表現され伝えられているかを理解・尊重できる能力のこと。様々な方法や文脈で、自己表現や社会での役割等について理解し、発展させ、伝えることへの関与も含む。

※1…本提言におけるキーコンピテンスとは、個人の充足と発展、雇用可能性、社会的包摂(social inclusion)及び主体的社会参加(active citizenship)のために全ての人が必要とするもので、知識(knowledge)、スキル(skills)及び態度(attitudes)の組み合わせからなる。キーコンピテンスは、高等教育だけではなく、生涯学習の視点から、フォーマル教育、ノンフォーマル教育、インフォーマル教育において発展してきた。参考:高等教育に関する質保証関係用語集

なお、欧州各国において、政策策定者や教育・訓練提供者、教育関係者、雇用者、学習者自身に参照ツールとして用いてもらうため、各キーコンピテンスの定義づけがなされている。

※2…欧州では、教員はデジタルコンピテンスの習得が求められており、「欧州:教員に求められる新たなFD、「デジタルコンピテンス」の習得」(本サイト2018年3月16日投稿記事)が発表された。

原典:EC(英語)

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