イギリスの欧州連合離脱(ブレグジット)のエラスムス+に与える影響

英国のEU離脱問題、いわゆるブレグジット(Brexit)はエラスムス+(Erasmus+)に大きな影響を与えかねないことをBBCは9月27日に報じた。

エラスムス+は、政府主導の欧州最大の留学サポートプログラムで、2014年のプログラム開始以来実に110万人(2017年時点)を超える学生と教職員がこのプログラムの枠組みで移動している。エラスムス+には英国も積極的に参画しており、2016年には約16,000人の学生を派遣し、約31,000人の学生を受け入れている。

もし、英国がEUを離脱した場合、エラスムス+の枠組みの中で、EUから奨学金を受給するはずであった英国の学生がEUから奨学金を受給できなくなるのではないか、という懸念が生まれていた。

これに対し英国政府は以下の見解を示している。

・英国がEUとの間で、離脱後の連携の在り方などについて合意を結んだうえで離脱をした場合、エラスムスプラスの運営は2020年末まで従来通りとなる(=英国の学生も奨学金を受け取ることが出来る)。
・英国がEUとの合意を結ぶことなく離脱※1をした場合、学生への奨学金は支払われるものの、条件により支払い主体が異なる。もし学生が参加するエラスムスのプログラムがEU離脱日より前に開始していた場合、奨学金はEUにより支払われるが、EU離脱の日以降に開始するプログラムの場合は英国政府により支払われることとなる。

当初英国は2019年3月31日での離脱を予定していたが、英国国内での反発もあり、離脱の予定日を2019年10月31日に延期している。それにより2019年度※2分の奨学金については通常通り、EUから支払われることが保証されているものの、2020年度分については未だ財源が(EUか英国か)定まっておらず、英国の教育現場では混乱を招いている。

英国の離脱のタイミングがいつになるのか、引き続き注目が必要である。
追記:2019年12月現在、英国は未だEUを離脱しておらず、政府は2020年1月31日まで離脱の日を延期することを表明している。
また、英国下院が2019年12月20日にEU離脱協定法案を可決したことをBBCが報じた。これにより、今後同法案が上院でも可決し法律が成立した場合、英国はEUと合意を結んだうえで離脱をする可能性が確実となる。


※1英国とEUが合意を結ぶためには、英国政府の提唱する合意案を英国議会が承認する必要があるが、議会での反発が大きく、合意案が可決されない状況が続いており、場合によってはEUと合意を結ぶことなく離脱をすることが想定されている。
※2学年の開始時期はプログラムを実施する国により異なるが、欧州各国は主に9月開始になることが多い。


原典: BBC(英語)

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