グローバル化が急速に進む現在、文化や言語、考え方や習慣等の多様性に対する理解が今後さらに必要とされるコンピテンスであることは言うまでもありません。しかし、とくに日本においては、このような多様性に触れられる機会はそう多くないのが現状です。
欧州委員会(EC)が実施するエラスムス・プラスをご存知でしょうか。本プログラムは、その前身となるエラスムス計画が開始された1987年以来、助成対象を欧州圏内から欧州以外の国・地域に拡げるなど、さまざまな変容を経て2014年から現在の体制となった、欧州圏屈指の留学支援等の助成金プログラムです。その名称は、「デジデリウス・エラスムス」というネーデルランドの哲学者に由来します。彼は欧州各地を訪れ、著名な知識人との交流を深めるとともに、その生涯で研究を続けたと言われ、まさにプログラムの趣旨を体現した人物でした。
エラスムス・プラスは、主に欧州圏内の学習者・研究者のモビリティ促進を目的としますが、なかには他の地域から参加できるプログラムも存在します。その一つが、日本人学生も申請できるEMJMD(Erasmus Mundus Joint Master Degree Project)です。ここでは、2カ国以上の留学先で学ぶことが必須とされており、通常の留学よりも多くの学びの場が得られるため、その分多様性に触れる機会も増えます。さらに、留学先での単位認定や授業料免除、給付型奨学金の獲得など、留学をすることの障壁を破る支援が受けられることも大きな魅力です。
2014年から2016年の間に、200万人以上がエラスムス・プラスに参加し、各国間のモビリティが活発になりました。また、プログラムの質保証のため、参画教育機関や修了生に対する調査を定期的に実施し、その内容改善や事務手続き簡素化を繰り返し行っています。とくに修了生による意見は、プログラム改善にあたり重視されており、毎年インパクト調査を実施(本サイト2017年2月15日投稿記事)し、その結果が公表されています。また、2018年1月には、100万以上の回答者から得たプログラムの中間レビュー結果がECにより公表され、ステークホルダーや社会から総合的に高い評価を受けていることが明らかとなりました。
欧州地域だけでなく、世界の他地域からも多くの学生が参加する本プログラムは、学業面の向上のみならず、さまざまな背景をもつ他の学生との関わりから、多様性への理解も自然と身につくことでしょう。今後、より多くの日本人学生がエラスムス・プラスに参加することが期待されます。
(文責M・Y)