韓国教育部が「2021年大学基本能力診断評価」の便覧を公表

韓国教育部が「2021年大学基本能力診断評価」の便覧をウェブサイトに公表した。便覧には、2021年大学基本能力診断評価の推進の背景や具体的な実施計画が掲載されており、同評価は、韓国における教育の質向上及び大学の量的規模の適正化を支援する方向で行われる計画となっている。

○大学基本能力診断評価について
「大学基本能力診断評価」は、韓国教育部が2015年に導入した新たな大学評価制度である。(ここでいう「大学」は、高等教育法第2条第1,2,4号に定める4年制の一般大学、産業大学及び2・3年制の専門大学を指す。以下同様。)同評価は大学の構造改革を図る趣旨から、導入当初は「大学構造改革評価」と名付けられていた。大学基本能力診断評価は、韓国における急激な学齢人口の減少に備え、大学の量的規模を減らすことを目的としている。具体的には、2015年から2023年までを3年ごとの周期に分け、全ての大学を対象とする評価を実施し、評価の結果によって最も優秀な大学グループには財政支援を行い、それ以外の大学には政府主導の財政支援事業への参加を制限したり、定員削減を勧告するなどの措置を取ることによって、大学の定員を合計16万人減らす取組である。

○第1・2周期について
同評価の第1周期(2015-2017年)及び第2周期(2018-2020年)では、評価の結果によって全ての大学をそれぞれ5つと4つのグレードに分け、最優秀グレード以外の大学にはグレードごとに差をつけて定員削減の勧告及び財政支援事業への参加制限が行われた。第1周期の評価で実際に削減された定員数は約2万4千人であった。第2周期には当初掲げられた約1万人定員削減に向けて、2020年現在も引き続き該当大学への定員削減勧告や財政支援の制限が行われている。

○第3周期(2021-2023年)の評価の特徴について(第2周期からの主な変更点を中心に)

・本評価が実施される前に、財政支援制限大学が先に指定される。(※財政支援制限大学の指定方法については、教育部が「大学側に意見聴取のうえ、2020年初頭に確定の予定である」と予告した。)財政支援制限大学に指定された大学は、本評価に参加できず、一般財政支援、特殊目的財政支援、国家奨学金・貸与型奨学金の申請が制限される。また、財政支援制限大学は毎年再指定されるが、一度財政支援制限大学に指定された大学であっても再指定の審査により、一定基準を満たしていると判断された場合は、制限の一部が解除され、自治体による特殊目的財政支援のみ申請することができる。

・評価の対象は、財政支援制限大学に指定されなかった大学のうち、教育部に受審を申し出た大学である。受審しない場合は、 政府による一般財政支援、 特殊目的財政支援 、国家奨学金・貸与型奨学金の申請が制限されるが、一部の自治体による特殊目的財政支援は自治体の判断により申請が可能である。

・評価を受審したが一般財政支援大学に指定されなかった、いわば「未指定大学」は、一般財政支援は受けられないが、政府及び自治体による特殊目的財政支援及び国家奨学金・貸与型奨学金の申請が可能である。

・第2周期の評価では2段階に分けて評価が実施されたが、第3周期の評価では段階を分けずに1回で行われる。

・4年制大学の評価項目は6項目(発展計画の成果、教育環境、大学運営の責務性、授業及び教育課程の運営、学生支援、教育成果)で構成され、13の指標で配点(100点満点)が設定される。大きな変更点として、「学生の定員充足率」の比重の拡大(13.3%→20%)が挙げられる。(※2・3年制の専門大学の場合は、評価項目は4年制大学と同じように6項目あるが、「授業及び教育課程の運営」に「産学連携」の評価指標が加わる。) また、「継続的な定員充足率」という概念が導入され、評価の結果一般財政支援の受給対象となった大学でも、一定水準以上の定員充足率を引き続き満たしている大学に限り、継続的に財政支援が受けられる。

・「一般財政支援大学」の指定にあたっては、第2周期でも地域間格差是正のため、全国を5つに分けた5圏域ごとに大学を指定してきた(圏域別指定)。第2周期では、「圏域別指定」と圏域に限らず全国から大学を指定する「全国指定」の割合を、5:1としたが、第3周期では、9:1に増やし、更なる地域間のバランスを図る。

・大学側の評価負担軽減のため、評価指標を簡素化(一部の評価指標の削除や複数の指標を一つに統合など)し、質保証機関が実施する機関別評価認証において類似する評価指標との連携が図れるよう、今後方針を検討する予定である。

図1 2021年大学基本能力診断評価の特徴

※上図は韓国教育開発院の資料(http://uce.kedi.re.kr/introduce3.do)を基にNIAD-QE国際課にて作成。

○第3周期の評価に対する大学側の反応
韓国教育部は、昨年8月に2021年大学基本能力診断評価の基本計画案を一度発表したが、これに対し、大学側からは、大学間の競争を助長し、大学の自律性を侵害するものとして、方針の是正を求める声があがっていた。4年制大学の協議体である韓国大学教育協議会(KCUE)は、教育部に同評価の計画発表の見送りを正式に要請し、教育部はこれを受け、昨年12月末までに大学側からの意見を聴取、本年2月に便覧を公表した。

○今後の計画
・財政支援制限大学の指定:2020年上半期中に計画発表、2021年2月に指定及び結果発表
・2021大学基本能力診断評価の実施:2021年5~7月
・2021大学基本能力診断評価の結果発表:2021年8月

関連記事
2018大学基本能力診断評価の結果
2015大学構造改革評価の結果

原典
大学能力診断センター(韓国教育開発院) 韓国大学新聞(UNN)

カテゴリー: 韓国 タグ: パーマリンク

コメントを残す