職業直結の短期スキル学習―カナダ・オンタリオ州が進める14のマイクロ証書課程

カナダ・オンタリオ州がマイクロ証書制度を開発中

14のパイロット事業で高等教育機関と産業界が連携

職業と関連する短期の高等教育は世界的に発展傾向

学位を得るよりも短期間で、就職に役立つスキルを身に着ける高等教育が世界中に広がっている。カナダ・オンタリオ州政府もマイクロ証書(micro-certification)が授与される短期教育の制度化を進めている。マイクロ証書は学位のような従来の教育資格と違い、取得期間が短く、職業に関連する先端のスキルを学ぶ点が特徴となっている。

オンタリオ州政府はeCampusOntarioという非営利組織を通じ、州のオンライン学習の環境を整備している。州からの助成を受けるすべての高等教育機関が加盟するこの組織は、オンラインでの高等教育と訓練へのアクセスを広げるためのさまざまな活動を行っている。その一環として、学生のエンプロイアビリティ向上のための14のマイクロ証書プロジェクトが立ち上げられている。

オーストラリアのRMIT大学による定義では、マイクロ証書は「特定のスキルに対する個人の達成を証明し、取得までの期間が短く、場合によってはウェブ上で展示が可能(stackable)で、変化する仕事の世界でも高い価値と関連性がある点で、学位やディプロマといった従来の教育資格とは異なる」とされている。

マイクロ証書と同様の取り組みは世界各国で見られ、例えばニュージーランドではマイクロクレデンシャルが2018年より正式な教育訓練制度として認められている(本サイト2018年9月12日投稿記事)。このマイクロクレデンシャルは、従来の資格よりも学習量が少なく、技能の発展に焦点が当てられている。

産業界横断で共通の枠組

eCampusOntarioが推進するマイクロ証書も、取得までの期間が学位やディプロマよりも短くコストも低いため、多くの人に提供が可能となっている。さらに、オンタリオ州は複数の業界代表者を集めたワーキンググループを立ち上げ、州の制度としての枠組を策定している。この枠組では、マイクロ証書が産業界で受け入れられ、真正性・有効性の照会が電子的に行えるようにするために必要な原則と運用方法が示されることになっている。eCampusOntarioは、実際の証書がブロックチェーン技術を用いて授与されることも明らかにしている。

産業界と協力した開発

マイクロ証書が授与される課程では、高等教育を終えた学生が就職時に直面するスキルギャップの問題を解決するため、州内の高等教育機関と産業界が協力した教育内容となっている。

例えば、ジョージ・ブラウンカレッジでは医療現場で視覚聴覚障害者を介助し、(手話などでの)コミュニケーションの円滑さと正確さを評価するスキルが身についていることを示すマイクロ証書を、地域の障害者支援組織と共同で開発している。他にも、OCAD大学が提供する「人間中心デザインのための共感と社会への理解」のマイクロ証書は、センサーやアクチュエータを埋め込んだ繊維を開発するMyant社と共同開発され、デザイン、テクノロジー、社会理論を交えた課題解決のスキルを身につける。

エンプロイアビリティのための高等教育

就職につながるためのスキル獲得のため、短期の高等教育が用いられる事例は隣国のアメリカ合衆国でも見られる。同国ではブートキャンプと呼ばれるコーディング技術が学べる短期講座が企業によって提供されている。ブートキャンプによって学生のエンプロイアビリティが高まる一方で、費用が高額なため所得格差が教育格差につながるという懸念から、米国教育省は質がある程度保証されたブートキャンプを対象に国の奨学金を支給したことがある(本サイト2015年11月25日投稿記事)。 また、取得までの期間が学士よりも短い高等教育はエンプロイアビリティの向上効果から注目を集めている。アメリカのジョージア州立大学は、2年間で取得でき、州内の産業界が必要な人材を育成するネクサス学位課程の提供を始めている(本サイト2020年2月4日投稿記事)

日本の動向は?

オンタリオ州のマイクロ証書の特徴の1つである、従来の学位よりも少ない学習量で完結する高等教育の制度は、日本では見られない。一方、産業界と連携した教育提供としては、2019年4月から専門職大学および専門職短期大学の制度が開始し、専門職の学士または短期大学士の学位が授与されるようになった。この課程は産業界等と連携した教育を実施することが義務付けられ、学位授与には実習による単位修得が必要などの条件がある。

原典①:eCampusOntario (英語)
原典②:eCampusOntario (英語)

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