韓国:高等教育法改正。専門大学での専門技術修士課程設置へ。

2021年3月23日付けで韓国の高等教育法が一部改正され、専門大学(原文:전문대학)に新たに専門技術修士課程(原文:전문기술석사과정)を設置し、修了者に専門技術修士(原文:전문기술석사)の学位を授与できることとなった。専門大学が授与できる学位として従来の専門学士と学士※1に専門技術修士が新たに加わった背景には、文在寅政権の国政課題解決策の一つである、高度な職業教育課程を備えた専門大学、いわゆる「マイスター大学」の制度の導入があり、今回の改正はマイスター大学の制度化に向けた第一歩となった。なお、本改正法は同年9月24日から施行される※2

※1 韓国の専門大学は、高等学校の卒業者等を入学資格とし、一部の分野を除き修業年限は2~3年間、卒業すると専門学士の学位が授与される。また、専門大学卒業者の継続的な教育のために専攻深化課程が設置されており、同課程を修了した者には学士の学位が授与される。専門大学の詳細については当機構発行「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要 韓国」の7ページを参照のこと。
※2 本法律の一部改正案は、2021年2月26日に開催された韓国の第284回国会本会議で成立。


高等教育法の改正内容

今回新設された高等教育法第49条の2では、「熟練技術者の養成のために、大統領令で定めるところにより、専門大学に専門技術修士課程を設置・運営することができる。」とし、第50条の4では「専門技術修士課程を修了した者に専門技術修士を授与できる」ことが明記されている。また、同じく第50条の4では、「専門技術修士課程に入学することができる者は、学士の学位を有する者又は、法令に基づきこれと同等以上の学力があると認められる者のうち、関連分野に在職した経験がある者とする。」と、在職経験が入学要件に含まれること、さらに「専門技術修士を有する者は、修士と同等の学力があると認められるものとみなす。」と、専門技術修士が大学等で授与される修士の学位と同等であることなどが明記されている。
※条文は当機構国際課による仮訳。

マイスター大学制度の導入に向けて

冒頭に述べた通り、今回の法律改正には文在寅政権の国政課題解決策の一つである、いわゆる「マイスター大学」制度の導入が関係している。韓国では、先端技術を担う人材の需要の高まりに対し、人材育成が追い付いていないのが現状である。政府はこの課題解決のため、先端分野での高度専門職業人材の育成を趣旨とし、専門学士から専門技術修士に及ぶ職業中心の教育課程を運営する専門大学「マイスター大学」制度の導入に向けて取り組んできた。従来の高等教育法では専門大学は修士レベルの学位を授与できなかったが、今回の法律改正により、専門大学で修士と同等の専門技術修士の学位を授与できることとなり、マイスター大学の法的根拠が整備された。

なお、マイスター大学制度の導入に向けた今後の予定については、2021年から試験的な補助事業として、専門大学5校がそれぞれ2年間で20億ウォン(2億円程度)の助成を受けて、実際に教育課程を開発・運営することとなっている。併せて教育部がマイスター大学の制度化に向けて整備を行っていくとしている。
2021年4月15日付の教育部報道発表によれば、採択校は次の通り:大林大學校、東洋未来大学校(協力校:硏成大学校)、東義科学大学校(協力校:東洲大学校)、永進専門大学、韓国映像大学校(協力校:亜洲自動車大学)。なお専攻分野はコンピューターソフトウェア、建築、映画映像、自動車工学、リハビリテーションなど多岐にわたる。

原典➀:国家法令情報センター(韓国語)
原典➁:韓国大学新聞(韓国語)
原典➂:教育部(韓国語)

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