中国教育部2022年の質保証関連業務計画を発表

中国教育部は、2022年に国が行う教育関係事業の計画の概要である「2022年業務要項」(原語:2022年工作要点)を発表した。業務要項は全35項目から構成され、質保証関連の業務については30番目の「教育監督指導体制とメカニズム改革を深化」の中で示されている。詳細は以下の通りである。

1.法規関連

• 県級以上※1の政府が下位政府の管理監督をすると定めた「教育督導条例※2」の改定を進める。

※1 中国の行政区は①省級(省・自治区・直轄市)、②県級(自治州・県・自治県・市)、③郷級(民族郷・鎮)の3つに区分される。県級以上とは、県級および省級を指す。
※2 2012年10月に中華人民共和国国務院令第624号として発布された。

• 政府の教育監督指導機関が関連の職能部門や教育機関とその職員の職務不履行等を監督指導すると定めた「教育監督指導アカウンタビリティ方法」(原語:教育督导问责办法※3」について、各地域(地方政府)がその実施方法(原語:教育督导问责实施办法)を策定するよう指導する。

※3 2021年7月に国務院督導委員会より発表。

2.政策関連

• 「双減※4」の監督指導を最優先事項とし、監督の実施、通報、行政指導、アカウンタビリティを引き続き強化する。

※4 「双減」とは、2021年7月に中国共産党中央弁公庁と国務院によって発表された教育改革政策。過熱する教育競争を抑えるため、義務教育段階における児童の宿題と塾通いを制限した。この政策により、小中学生を対象とした営利目的の学習塾は全面的に禁止された。(参照)「義務教育段階の生徒の宿題の負担と学外学習の負担のさらなる軽減に関する意見(关于进一步减轻义务教育阶段学生作业负担和校外培训负担的意见)」

3.地方政府の評価

• 省級政府教育職責評価(原語:省级政府教育职责评估)※5を実施する。「双減」、「両個只増不減(一般公共予算からの、全体の教育支出と生徒一人当たりの教育支出の両方を増やす)」、「義務教育の教員の給与を政府機関の職員の給与より低くしない」ことを重点項目とする。

※5 省級(省・自治区・直轄市)政府の教育行政の履行状況の評価。2017年に「省級人民政府に対して履行される教育職責評価方法(对省级人民政府履行教育职责的评价办法)」が発表され、2018年から国務院督導委員会によって毎年実施されている。毎年その年の評価重点項目が提示される。

4.就学前教育、義務教育(小中学校教育)、高校教育関連

• 就学前教育の監督指導・評価を着実に実施する。

• 小学校長、中学校長、幼稚園長の任期終了時に総合的な監督指導・評価を試験的に実施する。

• 「全国の県内の義務教育の基本的な均衡的発展※6を総括する会議」(原語:全国县域义务教育基本均衡发展总结大会)を開催し、義務教育の「質が高く均衡のとれた(优质均衡)」県(市、区)を認定する。

※6 中国政府は、県(市、区)内の義務教育の均衡的な発展を目指す取組みとして、2012年に「県域の義務教育基本均衡発展督導評価暫定方法(县域义务教育均衡发展督导评估暂行办法)」を制定し、省・自治区・直轄市政府が県(市、区)内の義務教育機関の質の均衡、県(市、区)政府が義務教育の均衡的発展のための業務をそれぞれ評価し国が認定してきた。これらの評価業務を総括し、特に質の高い県を認定する。
(参考) 2016年実績:評価が実施された544県(市、区)中522県(市、区)が認定。(国务院教育督导委员会关于公布2016年全国义务教育发展基本均衡县(市、区)名单的决定

• 北京市、上海市、江蘇省、浙江省はOECDのPISA※72022テストを実施する。

※7 生徒の学習到達度調査(Programme for International Student Assessment)

• 義務教育の質モニタリング※8を実施する。

※8 国務院督導委員会が企画し各政府(省、県など)が実施する3年を1サイクルとした定期評価。1年目に数学、体育と健康、心の健康、2年目に国語、芸術、英語、3年目に徳育、科学、労働のモニタリングを実施する。生徒(小学4年と中学2年)、教員、教育行政関係者に対し、テストやアンケート調査を実施して報告書を作成・分析する。生徒の認知能力と学習能力を把握し、教育の問題点を見つけ出して、政策に反映させる。(参照)「国家義務教育質モニタリング計画2021年改訂版(国家义务教育质量监测方案(2021年修订版)」

• モデル校を対象に高校の質モニタリングを研究・実施する。

5.職業教育(中等教育と高等教育)機関の評価

• 職業教育機関評価について規定する「中等職業学校運営能力評価方法」(原語:中等职业学校办学能力评估办法)と「高等職業教育機関の社会ニーズ適応能力評価方法」(原語:高等职业院校适应社会需求能力评估办法)を改定し、職業教育機関評価(第4サイクル)を実施する※9

※9 「中等職業学校運営能力評価方法」とは、中等職業教育機関(高校レベルの職業学校)の機関別評価について規定した文書。「高等職業教育機関の社会ニーズ適応能力評価方法」とは、高等職業教育機関の機関別評価について規定した文書。近年、職業教育の機関別評価は、中等教育と高等教育を同時期に実施している。前回は2018年に実施された。

6.普通高等教育機関の評価など

• 本科教育合格評価の方法を規定する「本科教育合格評価方法」(原語:高等学校本科教学工作合格评估办法)を改定し、第14次5か年計画期間中(2021-2025年)に「本科教育審核評価計画」(原語:本科教育教学审核评估计划])を策定する。今年度の合格評価と審核評価を実施する※10

※10 合格評価(本科教育合格評価)、審核評価(本科教育審核評価)ともに、本科教育(学士課程の教育に相当)を実施する高等教育機関を対象とした機関別評価である。合格評価は、初めて機関別評価を受審する高等教育機関が対象である。審核評価は、過去に機関別評価の受審歴のある高等教育機関を対象とした定期評価で、5年周期で実施される。現在、2021年から2025年の期間で実施中である。

• 高等教育質モニタリング国家データプラットフォーム※11の構築を進める。

※11 高等教育機関が定期的にアクセスして基本データの入力を行う。評価を実施する際などに活用されている。

• 本科教育質報告書※12を作成する。

※12 アンケート調査や高等教育質モニタリング国家データプラットフォームのデータと高等教育機関の本科教育の質に関する年次報告書などの情報を基に分析し、高等教育機関の本科教育質向上のための取組や本科教育全体の状況や問題点などを取りまとめた報告書。(全国普通高校本科教育教学质量报告(2020年度)

• 質モニタリング警報※13の実施を検討する。

※13 質のモニタリングを行い、問題のある学校についてはアラートを発出するという趣旨であるが、制度の詳細については不明。

• 質保証専門機関による本科課程の分野別評価・認定業務をサポートする※14

※14 本科課程の分野別評価は、2022年4月時点では教員養成分野、医学分野、工学分野、薬学分野、看護学分野に対して行われている。

• 大学院の分野別評価(専門職学位と学術学位それぞれの専門分野別評価)の結果を公表し、評価結果が良くなかった機関に対し監督指導を行う※15

※15 大学院の分野別評価は、全ての専門分野に対して実施されている。

•「高等教育機関評価の一元管理方法」(原語:高校评估归口管理办法)を策定し、高等教育機関の負担を軽減する。

• 本科課程(学士課程に相当)の卒業論文、修士論文、博士論文のサンプリング検査を行う。

• 高等教育機関の評価・改善・監督指導・再審査を強化する。

7.その他

• 教育監督指導情報化プラットフォーム※16の構築を検討する。

※16 教育機関のデータを管理監督するためのプラットフォーム。具体的には示されていない。

原典:教育部2022年工作要点(中国語)

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