オーストラリアとインドの両政府が資格承認のためのタスクフォースを始動

 2022年3月、オーストラリアとインドの両政府は、両国間の高等教育資格の承認に関するタスクフォースの始動を発表した。資格の承認に関する課題や改善について議論することで両国の学生が資格を活用する新たな機会を生み出し、モビリティの成果を最大化することを目指す。

■オーストラリアの受入れ留学生数:インドは第2位

 オーストラリアは、教育や技能、研究を通してインドと長年にわたって強固な関係を築いてきた。オーストラリアにとってインドは国際教育における主要なパートナー国の一つであり、オーストラリアで高等教育を受けるインド人留学生※1の数は多い。新型コロナウイルスの流行前には、9万人以上のインドの学生が学んでいた。2022年1~2月時点ではオーストラリアの学生ビザ保有留学生数422,095人のうち、インドが16%(68,937人)を占め、中国(30%[125,070人])に次ぐ人数となっている(教育・技能・雇用省)。

■高等教育資格の承認に関するタスクフォースの設置

 2022年3月21日、オーストラリア政府とインド政府は、双方向の交流強化に向けた両国間の高等教育資格の承認に関するタスクフォースを設置することを発表した※2。高等教育資格の相互承認の改善を通じて、両国の学生、卒業生、教育機関のモビリティの成果を最大化することを目指す。オーストラリアの教育・青年担当相代理によると、タスクフォースは今後ステークホルダーとの協議を進め、両国の高等教育資格承認についての改善の可能性を探り、提言を行う。これにはオンライン学習、ブレンド学習、ジョイント・ディグリープログラム、オフショアキャンパスにより取得された資格の承認も含まれる。

 オーストラリア大学協会(Universities Australia)は、タスクフォースの設立について歓迎の意を表するとともに、今後マイクロクレデンシャル※3も議論の対象になるだろうとの期待感を示した。学位や資格の承認は、オーストラリアで学び/働き帰国するインドの学生やインドで働くことを希望するオーストラリアの学生にとって重要であると考えられている。

 インド紙インディアン・エクスプレスも、「タスクフォースの設置により、インドとオーストラリアの卒業生が資格を活用する新たな機会への道が開かれることを期待している。」と報じている。

 また、オーストラリア政府が2021年11月に策定した「国際教育に関する国家戦略2021-2030(Australian Strategy for International Education 2021-2030)」ではオーストラリアの質の高いオフショア教育※4の持続的な成長を支援することや、高等教育の資格承認に関する二国間協力を強化することが打ち出されているが、今回の取組みはこれらの戦略の実現を後押しするものとみられている。

 2022年中に資格承認を拡大するための仕組みの検討が両国間で行われ、2023年から承認の取組みが開始される予定である。

国際教育に関する国家戦略2021-2030

 2016年にオーストラリア政府が2025年までの国際教育に関する国家戦略(National Strategy for International Education 2025)(本サイト2016/6/28)を発表して以来、同国の留学生受入れは発展を続けてきたが、新型コロナウイルスの影響により今後数年間にわたり渡豪留学生数が減少するという状況に直面し、オーストラリアの国際教育セクターは大きな打撃を受けた。これを受けて2021年11月にポストコロナに対応する新戦略として策定された。

※1 Education Services for Overseas Students (ESOS) Act 2000の定義に基づくと、留学生(Overseas students)とは、オーストラリアの国内・国外にいるかを問わず、オーストラリアの学生ビザを保有している者を指す(ただし、ESOS Regulationsに規定される者は含まない)。

※2 タスクフォース設置の発表は、両国間の経済協力・貿易協定(Australia-India Economic Cooperation and Trade Agreement (AI ECTA))の署名に先立って行われた。この協定には、サービス分野として高等教育・成人教育も含まれ、以下の内容が合意された。

● オーストラリアにおける高等教育修了後の在留資格の継続(ディプロマ・Trade Qualification(トレードコース):最大18か月、学士:最長2年、修士:最長3年、博士:最長4年)。STEM(科学、技術、工学、数学)や情報通信技術分野で優秀な成績を修めた学生(学士)の卒業後の就労可能期間を2年から3年に延長する。
●高等教育と成人教育分野のサービスの貿易に対して、インドはオーストラリアに最恵国待遇を認める。
●専門職機関間の資格、免許、専門職の資格の登録の相互承認を促進する枠組みを実施し、双方向のモビリティを促進する。
●オーストラリアはインドからのワーキングホリデーの受入れを開始する。
●インドは同国で教育を修了したオーストラリア人に就労のルートを提供する。
 ※ Trade Qualification/Recognitionとは、オーストラリア国内・海外で得た職業技術(調 理師、美容師等、多様な職業技術を含む)に関する資格のこと。トレードコース修了後に政府指定の技能評価機関による技術審査に合格し各種条件を満たすと、移住を目的とした技術独立ビザ(Skilled Independent Visa)等の申請を行うことができる。

※3 一般的に、学位取得を目指す学習よりも細かく区切られた学習単位であり、個別に大学などの主体が認証したものとされる。

※4 オーストラリアの高等教育機関が自国以外の国・地域において提供する教育プログラム。

原典①:Ministers’ Media Centre(英語)
原典②:Universities Australia(英語)
原典③:Ministers’ Media Centre(英語)

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