欧州高等教育圏におけるマイクロクレデンシャルの共通枠組みを提示

 2022年3月8日、欧州のMICROBOLプロジェクト※1が報告書「European project MICROBOL Micro-credentials linked to the Bologna Key Commitments: Common Framework for Micro-credentials in the European Higher Education Area (EHEA)」を発表した。プロジェクトの2年間の成果資料として、マイクロクレデンシャルが欧州高等教育圏にどのように適合するかについて、高等教育機関、政府、その他のステークホルダーに共通の枠組みを提示するものである。
※1 正式名称はMicro-credentials linked to the Bologna Key Commitments。Erasmus+の資金により2020年に始まった2年間のプロジェクト。

 本報告書によると、マイクロクレデンシャルは各国や欧州地域にとどまらず、世界的にも高等教育において新興の話題となっている。社会、経済、技術の変化に遅れを取らず、社会の挑戦に応えるために、生涯学習での利用可能性、アクセス可能性、柔軟性をどのように高めていくかという広範な議論に密接に関係しているためである。さらに、新型コロナウイルス感染症のまん延により、この課題の緊急性は増している。
 過去2年間、MICROBOLプロジェクトはボローニャ・フォローアップ・グループ(BFUG)※2に関与する教育関係省庁およびステークホルダーと協力して、既存の欧州高等教育圏(EHEA)ツール※3が通常の教育プログラムと同様にマイクロクレデンシャルに適用できるかどうか調査を行ってきた。2021年2月に35か国が参加した調査の結果を公表し(本サイト2021/5/25投稿記事)、その結果を踏まえてワーキンググループでの議論を重ね、最終報告として今回の共通枠組みがまとめられた。
※2 ボローニャ・プロセス(NIAD-QE国際課まとめ)や共同声明の実施状況を監督する組織。
※3 欧州高等教育圏の取組みとして開発された、欧州単位互換制度(ECTS)(NIAD-QE国際課まとめ)ディプロマ・サプリメント(DS)(NIAD-QE国際課まとめ)欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)(NIAD-QE国際課まとめ)外部質保証結果データベース(DEQAR)(本サイト2020/3/13掲載記事)等のこと。

 以下では、本報告書で提示されたマイクロクレデンシャルに関する共通認識とともに欧州地域の高等教育における主要な取組(質保証、資格の承認、資格枠組み(NQF)とECTS)の中でマイクロクレデンシャルがどのように位置づけられるかについての検討結果を紹介する。

マイクロクレデンシャルに関する共通認識

定義

マイクロクレデンシャルは(資格によって)証明された少量の学習である。

目的

マイクロクレデンシャルは、社会、個人、文化、または労働市場のニーズにもとづき、特定の知識、スキル、またはコンピテンシーを提供することが目的である。

用途

マイクロクレデンシャルは、学習者に帰属し、より大きな証明や資格に統合することが可能である。
マイクロクレデンシャルは、高等教育学位プログラムの履修前~履修中~履修後に取得でき、人生の早い段階で獲得した能力を証明する新しい手段として利用することができる。

マイクロクレデンシャルを証明する共通様式

 プロバイダー(マイクロクレデンシャルを提供する高等教育機関、企業、NGOなど)がマイクロクレデンシャルとその価値を証明するには、共通の様式が必要であり、その構成要素は以下の通りである。
・学習者の情報:学習者の本人確認
・プロバイダーの情報:
所在する国や署名
・マイクロクレデンシャルの情報:タイトル、発行日、成績評価日、真正性の証明
・学習経験の情報:学習成果、学習量、成績評価や質保証の形態
・資格枠組みの情報:資格枠組み(NQF)レベル、欧州資格枠組み(EQF)(NIAD-QE国際課まとめ)欧州高等教育圏資格枠組み(QF-EHEA)(NIAD-QE国際課まとめ)レベル、ISCEDレベル※4と科目分野コード等
・学習活動への参加形態
・(学習活動への)申請要件
※4 UNESCOが策定している統計フレームワークで教育プログラムとそれに関連する資格を分類した国際標準教育分類(International Standard Classification of Education:ISCED)のこと。

ボローニャプロセスの主要な取組との関連

1.欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)に沿った質保証

  • ESG※5は、欧州地域における高等教育の質保証に関するガイドラインであるが、EHEA内で提供される全ての高等教育に対し、修学期間や教育形態を問わず適用できる。そのため、高等教育レベルのマイクロクレデンシャルを提供しているプロバイダーであれば、高等教育機関ではなくとも適用できる。
  • マイクロクレデンシャルは通常の教育プログラムよりも少量の学習で、頻繁に更新されることが予想されるため、マイクロクレデンシャルの外部質保証はプログラム(プログラム別評価)ではなく、提供する機関自体に焦点を当てる(機関別評価)べきである。外部質保証によって、マイクロクレデンシャルを提供する機関が、質を自ら管理するための適切で信頼あるシステムを持っていることを担保する必要がある。
  • ※5 欧州地域における高等教育の質保証に関するガイドライン。ただし、欧州全体に適用される唯一の質保証基準を設けて一律に評価を行う趣旨ではなく、国・地域間の違いをある程度認めたうえでの共通の質保証基準。

    2.資格の承認

  • マイクロクレデンシャルの承認には、既存のリスボン承認規約(NIAD-QE国際課まとめ)に沿った承認方法※6が使用できるが、そのためには情報の透明性が鍵となり、上述の共通様式の全ての構成要素が適切に示されていることが重要である。
  • 記録内容に不透明な構成要素がある場合には、従前学習の承認※7手段を用いて承認する可能性も残されている。この場合、学習成果(学習者が学習の最後に示すことができる能力を証明するもの)と学習量(学習者がそれらの能力を形成するために使用する時間)で構成されるECTSについて説明したECTS Users’ Guideやe-ラーニングの承認について取り組むE-valuateプロジェクト※8の観点(本サイト2020/1/20投稿記事)が有用である。
  • ECTSの主な目的は学習成果の一部を可視化し、理解されやすい形で示すことであり、マイクロクレデンシャルの発展と説明をサポートできるものである。
    ※6 規約の締約国に対し、実質的な相違があることが明らかである場合を除くほか、他の締約国において付与された高等教育の資格を承認するというもの。
    ※7 通常の教育プログラムだけでなく、ノンフォーマル教育やインフォーマル教育などでも獲得された学習成果が、特定のプログラムや資格としての要件を満たすことを正式に証明する過程。
    ※8 欧州高等教育圏における、オンライン教育の承認のための効果的な政策貢献を目的とするプロジェクト。

  • 3.資格枠組み

  • マイクロクレデンシャルは、可能な限り各国の資格枠組み(NQF)に組み込まれることが望ましいが、その決定は国ごとに行われるため、NQFに組み込むための基準(規模、名称、価値、質保証など)が定められるべきである。
  • マイクロクレデンシャルの開発にあたり学習成果を主軸に置くことは、マイクロクレデンシャルをNQFに組み込む上で不可欠である。
  •  最後に本報告書では、EHEAツールはマイクロクレデンシャルに適用できるという認識に達したとする一方で、以下をはじめとする課題が多数残っている点も指摘した。
    ◆高等教育において望ましい学習単位の細分化とパスウェイ(学習経路)の柔軟化とはどの程度か。
    ◆高等教育機関以外のプロバイダーを質保証システムや信頼できるプロバイダーリストに含めるにはどうすればよいか。
    ◆EHEAツールを使用して、欧州以外で提供されるマイクロクレデンシャルの承認をどう簡素化するか。
    ◆NQFにマイクロクレデンシャルを含めるためのガイドラインの必要性。
     欧州高等教育においてマイクロクレデンシャルを効果的に使用し、理解を進めるためには、EHEAおよび世界レベルで更なる対話が必要であると述べられている。

    原典①:microbol(英語)
    原典②:microbol(英語)
    原典③:microbol(英語)

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