【欧州】欧州25か国でマイクロクレデンシャルがすでに存在―MICROBOL報告書

ボローニャプロセス(NIAD-QE国際課まとめ)に参加する国を対象にしたマイクロクレデンシャル(MC)の発展状況調査の結果「Micro-credentials and Bologna Key Commitment: State of play in the European Higher Education Area」が、2021年2月19日に公表された。調査をしたMICROBOLプロジェクトは、欧州委員会から資金提供を受けた2年間の事業。回答した35か国中MCが存在していたのは25か国(開発中を含む)であった一方、欧州地域でMCに対する共通の定義や枠組の必要性も認識された。

調査の対象
調査は2020年10月15日~11月25日の間、欧州高等教育圏(EHEA)に加盟する国へ向けて呼びかけられ、35か国が回答した。すでに各国の教育制度上に存在する短期教育のうち、プロジェクトが示したマイクロクレデンシャルの定義(下記参照)に該当するものを調査対象とした。該当する短期教育は、マイクロクレデンシャルという呼称が使われていなくても調査の対象とした。そして、これらの教育に対してボローニャプロセスの諸制度(国家資格枠組、ECTS(NIAD-QE国際課まとめ)、資格承認、質保証)の適用状況が尋ねられた。

MICROBOLでのマイクロクレデンシャル定義:資格によって証明される少量の学習。EHEAにおいて、高等教育機関によって提供されるか、場合によってはリスボン承認規約(NIAD-QE国際課まとめ)または既修得学習の認定に沿って承認され得る。
マイクロクレデンシャルは、社会、個人、文化、または労働市場のニーズにもとづき、特定の知識、スキル、またはコンピテンシーを提供するために創られる。マイクロクレデンシャルにはEHEA/国レベルの資格枠組上に示された明確な学習成果があり、ECTS単位にもとづく学習量が示され、成果測定の方法と観点があり、欧州基準(ESG)にもとづく質の保証が行われる。

このように、本調査での「マイクロクレデンシャル」とは、既に制度として存在する短期の教育のうち、高等教育機関が提供または承認するものに限定されている。記事の後半で紹介する他の事例で言及される「マイクロクレデンシャル」とは、まったく同一のものを指すわけではない点に注意が必要である。

調査の結果
回答した35か国中、25か国でMCがすでに存在しているか開発中であった。また、23か国では法令上MCの提供が可能であり、このうち8か国は当該教育に特化した規制が存在した。MCに特化した規制のない15か国では、こうした短期教育はMICROBOLでのマイクロクレデンシャル定義において、(1)既修得学習の認定制度の対象、(2)正規教育の単位として認定、(3)正規課程の一部、(4)質保証された機関による教育、のいずれかに該当した。具体的には、学位プログラムの一部として履修される学習モジュール/コース(オンラインを含む)、MOOC、短期の生涯学習プログラムなどが挙げられる。一方、国としてMCを提供すべきでないとの回答も1か国から挙がった。

ボローニャプロセスの諸制度(各国資格枠組、ECTS、資格承認、質保証)に対する結果は次のようになった。各国資格枠組(NQF)に組み込まれたMCがある国は9つで、該当する資格レベルは欧州資格枠組(NIAD-QE国際課まとめ)上のレベル1-8の範囲に及んだ。ECTSなどで示されているMCは24か国に存在し、単位数には大きな開き(1~100ECTS単位以上)があった。18か国ではMCが学位等の他の資格取得につながる資格として承認される一方、17か国では法令上すべてまたは一部において承認不可であった。MCに特化した質保証制度は2か国で存在し、それぞれ(1)大学院レベルの生涯教育と(2)専門分野の特別教育課程を対象としたものであった。一方、MCとその提供者の登録状況については、MCそのものの登録簿を有していないと回答した国は19か国(有していると回答した国は 7か国)、MCの提供者の登録簿を有していないと回答した国は18か国(同9か国)という結果だった。

結論と今後の方向性
MICROBOLによる報告は、MCへの共通の定義と枠組の必要性が認識されたと結論付けている。また、ボローニャプロセス諸制度をMCに適用するためには、これに特化した努力と手続きが必要であるとも述べている。さらに、国内での議論だけでなく、国を越えたMC提供の可能性も指摘している。

マイクロクレデンシャルを含む短期高等教育に関する他の事例
高等教育レベルの短期教育は、呼称はさまざまであるものの、世界各国で発展がうかがえる。例えば、ニュージーランドでは2018年よりマイクロクレデンシャルを正規の教育訓練制度に位置づけている(本サイト2018/9/12投稿記事)。高等教育機関に限らず、NZQA(質保証機関)の審査を受けた機関による5-40単位相当の教育が対象となる。

カナダのオンタリオ州政府は、高等教育機関と産業界が協力して行うマイクロクレデンシャル制度を開発しており(本サイト2020/7/2投稿記事)、2019年より試験的にいくつかの課程が提供されている。オーストラリア政府は、2020年にBachelor Degreeにつながる短期教育としてUndergraduate Certificateを新設した(本サイト2020/8/12投稿記事)。新型コロナウイルスの流行で社会的活動が制限される間、この制度で個々人の職業スキルを高めることを狙いとしている

MICROBOLプロジェクトが展開される欧州では、2020年に発表された欧州スキルアジェンダの1つとして、マイクロクレデンシャルの欧州アプローチを掲げている。この中で欧州委員会は、マイクロクレデンシャルの質、透明性、浸透の支援に取り組むこととしている。

原典①:MICROBOL報告書(英語)
原典②:MICROBOL報告書(英語)

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