コメント(解説):米国の大学による共同教育プログラムの現状がまとめられた報告書です。米国の共同教育プログラムに関する全体的な調査はこれまであまりされておらず、貴重な資料となっています。
正式名称
Mapping International Joint and Dual Degrees (PDF)
実施主体
ACE(米国教育協議会)
実施年
2014年
概略
ACEによってまとめられた、同国の大学が参画する国際的な共同教育プログラムの状況報告書。
調査対象はACEが2011年に行ったMapping Internationalization on U.S. Campuses Surveyにおいて、共同教育プログラムを実施していると答えた382大学。今回の調査は2014年1月に行われ、134の大学からの回答が得られた。このうち、個別の教育プログラムに関する情報を寄せたのは89大学193プログラムだった(プログラムの中には、この3年間ですでに廃止されたものも含まれていた)。
本調査においては、共同教育プログラムは下記の2種類に区別されている:
- 共同学位(joint degree)課程:国を異にする複数の教育機関が開発し、提供する学位プログラム。修了者は、各機関の署名のある単一の学位を手にする
- 複数学位(dual degree)課程:国を異にする複数の教育機関が開発し、提供する学位プログラム。修了者は、各機関から学位が与えられる。“ダブル”ディグリーもこの部類に入る
主な調査結果は下記の通り。
- 国際的な共同教育プログラムの開発を大学のポリシーの中で明記しているのは、共同学位課程―15%、複数学位課程―18%に留まった
- 外国人学生のみが対象の課程が多く(63%)、国内外の学生が混合する課程が続き(34%)、米国学生のみが対象のものは少ない(4%)
- 教育内容の同等性や教授法といった学術的要因は、事務的要因(規則整備や安全面の考慮など)よりも、困難さが感じられている。さらに、共同学位課程は複数学位課程よりもハードルが高いと思われている
- 主要な対象国は中国、フランス、トルコ、ドイツ、韓国
- 学生選抜、派遣/受入パターン、財源管理、学術ポリシーなどにおいて、かなりの多様性が見られる
一方、この報告書では共同/複数学位課程による「単位インフレ」についても触れており、回答のあった大学の4%で国際的な共同教育プログラムに否定的なポリシーがあると述べている。例えば、ミシガン大学では複数学位課程が禁止されている。同大学の国際連携教育担当理事は、ダブルディグリーなどの課程で同一の学習課題によって2つの学位を与えていることは間違いであり、そのようなプログラムはディグリーミルと同じだと述べている。また、共同学位課程では、自分の大学のブランドが希薄になってしまうため、その名声に傷がつくと語っている。このように、報告書では外国の大学との共同教育課程が手放しで歓迎されていない側面も明らかにされている。