ジョイントディグリーの認証に関する勧告を改訂

出典①:enic-naric.net(2016年版)
出典②:enic-naric.net(2004年版)

ユネスコがリスボン認証条約の付属文書を改訂

ジョイントディグリーの定義などここ10年超の環境変化を反映

各国のより強いリーダーシップを求める

複数の大学が共同で授与する単一の学位、ジョイントディグリー(JD)。ユネスコでは、JD取得者の進学・就職先がこうした学位の取扱いに戸惑うことがないよう、各国政府に対し「ジョイントディグリーの認証に関する勧告」を定めている。しかし、勧告から10年が経ちJDを取り巻く環境も変化していることから、2016年2月29日に勧告の改訂が行われた。

ジョイントディグリーの認証に関する勧告:Revised Recommendation on the Recognition of Joint Degrees

本勧告は、欧州を中心とした世界53ヶ国が批准する『欧州地域の高等教育に関する資格認証条約』(通称リスボン認証条約)の付属文書の1つで、2004年に策定された。リスボン認証条約締約国は、学生の進学・就職目的の移動を促進するため、高等教育進学に必要な中等/高等教育資格は、他国で授与されたものであっても実質的な差異がない限り、自国の類似した資格と同様に扱うことになっている。しかし、JDを授与する教育機関は複数国にまたがる場合も多く、そのような場合の扱いを整理するため、独立した勧告が設けられていた。今回の改訂では、この12年間で開発された様々な参照文献も含みつつ、より実効性の高い提言への変更が行われた。

ジョイントディグリー:共同教育プログラムを提供する高等教育機関によって授与され、当該プログラム修了の証として法的に認められる、単一の学位記のこと

参考:ジョイントディグリーの認証に関する勧告(共同教育プログラムの質保証ブログ)

主な変更点

  • 参照文献の追加
    下記の4文献を参照先として追記:

共同教育プログラムの質保証に関する欧州的アプローチ
欧州地域で実施される国際共同教育プログラムに対し、統一した単一の質保証アプローチを提供するために策定された提言書。2015年5月にボローニャプロセス参加国によって承認された

外国資格認証における資格枠組みの使用勧告
リスボン認証条約付属文書の1つ。外国の資格や学位を認証する際の資格枠組み利用を推進するために策定された勧告

EARマニュアル(本サイト2014年12月26日掲載)
各国のENIC-NARICセンターでの資格認証作業が統一した方針で行われるよう、共通の認証基準や判断材料をまとめたマニュアル

ENIC:European Network of Information Centres
国外で取得された資格の認証にかかる情報提供の拠点で、一般的に、外国のディプロマ、学位、その他資格の認定に関して、「Statement(報告書)」等を発行したり、留学に関する奨学金や具体的な相談に応じるセンターとして機能している。
NARIC:National Academic Recognition Information Centres
欧州域内における学位と学習の認定を促進することを目的とした情報ネットワーク

外国資格審査における観点と方法の勧告(2010年改訂)
リスボン認証条約付属文書の1つ。外国で授与された資格を認証する際の手順と留意点がまとめられている

  • 外国への進学/就職の効果
    従来からうたわれていた学生個人の文化・学術的な価値向上に加え、個としての豊かさをも高める効果も指摘している。
  • ジョイントディグリーの定義
    改訂によって、本勧告が示すジョイントディグリーを「単一の文書」と変更した。以前は単一の文書に限らず、単一のカリキュラムに基く複数の学位(ダブルディグリーなど)も対象であった。複数の教育機関による単一学位記の授与が難しい国もいまだに存在するため、同勧告では各国が積極的にJD発行を認めるよう求めている。
  • 法的根拠
    今回の改訂により新たに、高等教育機関が国際共同プログラムを提供したりJDを授与することが認められるよう、各国が法整備を進めることが求められている。そして、JDが法的根拠に基づいて授与されるよう求めている。
  • JDの質保証
    前述欧州的アプローチに記載の通り、共同プログラムに対する質保証を1つの質保証機関が代表して行う場合のJD認証の扱いも新たに記載された。こうした評価の結果が当該JDに関係するすべての国で認められていれば、このJDは認証されるべきとしている。
  • 説明責任の強化
    12年前と比べ、情報公開を求める姿勢が強まっている。改訂版では、学生や認証を行う機関など、ステークホルダーに対して必要な情報の公開が求められている。また、JDに付随するディプロマサプリメントにおいては、下記のような情報の掲載が特に求められている:
  1. 教育プログラムの詳細―(科目名、単位数、成績を含む)当該学生の履修歴、学習成果、プログラムを構成する教育機関の情報
  2. 当該プログラムには参加するがJD授与には関わらない機関があれば、そうした機関の名称、機関の種別、プログラム上の役割
  3. 当該プログラムの代表機関や連絡先の情報
  4. 当該プログラムが質保証されている場合は、担当した質保証機関の連絡先
  5. 当該JDが属する国の高等教育制度情報
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