イギリス:質保証機関QAAが新戦略(2017-2020年)を公表

2017年5月10日、英国高等教育質保証機構(QAA)は、2017年から2020年までのQAAの新戦略「世界一流の質を築く(Building on world-class quality)」を公表した。QAAの最高責任者であるBlackstock氏によると、新戦略は英国内外を問わず高等教育で起きている変化に対応している。新戦略には新たに設定されたQAAの3つの目標と各目標の達成手段及び成功を判定する基準が示されており、学生団体、教育機関、政府によって、この3つの目標の達成が承認及び尊重されることを目指している。また併せて、この戦略を支えるQAAの5つの価値観として、専門性、イノベーション、協働、説明責任、誠実さが挙げられている。以下、3つの目標について説明する。

QAAの3つの目標
目標1:英国高等教育の協働規制の多様なシステムを支える専門的かつ独立性のある質保証機関

(目標達成のための手段)
①ウェールズで質保証を実施し、質を確保する。
②スコットランドで向上型機関レビュー※1を提供し、スコットランド以外の地域にも大きな影響を与えることを保証する。
③イングランドと北アイルランドで規制及び質保証制度を企画・実施し、重要な役割を果たす。

(成功を判定する基準)

・向上型機関レビューやリスクベースアプローチの利点が高等教育プロバイダーに認識され、評価される。

・質保証の比較可能性の確保及び英国全体へのアプローチによって得られる共通の利点を保証することで、QAAが英国の各地域において高等教育質保証の先導的役割を担う。

・イングランド及び北アイルランドで効果的な質アセスメントシステムを運営する指定質保証機関となる。

なお、新戦略の発表と同日に、ウェールズの大学の代表機関であるウェールズ大学協会(Universities Wales)は、QAAを外部質保証を提供する独立機関に選んだことを発表した。

目標2: 質を保証し、向上させる価値の高いサービスを実現する

(目標達成のための手段)
①英国の高等教育プロバイダーや英国政府に対し、アドバイスや指導、分析など信頼される情報源となる。
②学生の学習体験の改善に貢献する。
③申請者の需要に沿った革新的な活動やサービスを開発し、提供する。
(成功を判定する基準)

・QAAの業務から得られた分析や洞察によって、改善や変革が促される。

英国高等教育のための質規範(クオリティ・コード)(本サイト2014/10/10投稿記事)やその構成要素が政策において先駆性を維持しつづける。

・QAAの意見やアドバイスが信頼された専門的意見として求められる。

・QAAの製作物及びサービスが明確で支持されるパッケージとなっている。

なお、QAAは信頼された情報源になることを目指して、QAAと英国高等教育統計機関(HESA)※2及び英国情報システム合同委員会(JISC)※3で結成されたM5グループ(本サイト2016年11月8日投稿記事)として2017年11月に質向上に向けたデータ利用に関する会議を主催する。

目標3.:英国の高等教育のために、QAAの国際的な信用性やパートナーシップを利用する

(目標達成のための手段)
①英国の高等教育提供者を国際的にサポートする知識を提供する。
②国際的なパートナーとともに国境を越えた教育(TNE)の規制枠組の改善を図る。
国際質レビュー(NIAD-QE国際連携ウェブサイト)やその他サービスの需要を保証する。
(成功を判定する基準)

・2017年-2018年に欧州高等教育質保証協会(ENQA)のレビューで高評価を得て、欧州質保証登録簿(EQAR)に再登録される。

・QAAの質に関するレポートや分析が評価され、期待されるリーダーであり続ける。

・QAAの有料サービスへの需要がさらに増加する。

・QAAの業務が英国の国境を越えた教育(TNE)を積極的に促進していることを認識される。

なお、QAAは今後3年間のTNEレビュープログラムの計画を発表しており、2017年にアイルランドを皮切りに香港、マレーシアで実施する。その他に、アイルランド質保証資格機構(QQI)と提携して2017年10月に英国のBelfastでTNE会議を主催する。

※1 向上型機関レビューは、スコットランドで用いられているピア・レビューの手法である。英国内の他の地域と大幅に異なり、機関間の連携の向上・促進が図られている。
※2 主に英国高等教育に関するデータの収集・分析・公表を行う非営利団体。
※3 英国高等教育機関等に対し、ITインフラを提供したり、ITに関わる様々な技術的助言を与えることを目的とした非営利団体。

原典①:QAA(英語)
原典②:QAA(英語)

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