ASEAN全10か国の国家資格枠組の進展状況

欧州地域では多くの国家が国家資格枠組(NQF)を持ち、国家間での資格の読み替えは、欧州の地域的な資格枠組みである欧州資格枠組(EQF)(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)によって行う。一方、ASEAN地域の国家でもNQFを持つ国がでてきており、ASEAN地域の資格枠組みであるASEAN資格参照枠組(AQRF(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)についても実施に向けて動いている状況である。

NQFとは、学位・資格について、学習量、学習成果、能力等を指標として学習の達成水準を段階的に分類する国単位の仕組みであり、学習者の教育の水準を示し、学位・資格の透明性を確保することを狙いとしている。一方、AQRFとは、ASEAN地域内における学生と労働者の移動に伴って必要となる、教育資格の最終的な認証や比較を可能にさせる仕組みである。

下記は、AQRFとASEAN地域各国のNQFの進展状況について、EU-ASEAN間の高等教育分野の連携プログラムであるSHAREの報告書「ASEAN Qualifications Reference Framework and National Qualifications Frameworks」(2015年10月発表)を中心に、近年の状況も踏まえ、まとめたものである。

ASEAN地域における現状

  • AQRFの領域は「知識・技能」と、それらが適用される場面である「応用と責任」の2つから成立している。AQRFの各段階は学習成果を示すものである。
  • NQFの進展状況は、ASEAN各国で異なる。一方、AQRFの進展状況については、各国のNQFとAQRFを照らし合わせるための作業が2017年2月から行われ、実施に向けた動きがみられる(本サイト2017/8/9投稿記事)
  • AQRFに裏付けられたNQFは生涯学習の促進、ノンフォーマル学習やインフォーマル学習※1での学びの認証(既習歴の認証)を促進する効果を有する。既習歴の認証はASEAN地域で唯一、マレーシアのみで行われている(2015年10月時点)。

欧州との比較

  • 欧州では38か国のうち、32か国が自国のNQFについて、EQFと同じ8レベルの枠組みを採用または構築している(本サイト2015/7/6投稿記事)。一方、AQRFは8レベルで構成されているが、ASEAN加盟国10か国のうち、7か国が8レベルのNQFを持っている。なお、AQRFはEQFを参考に作成された枠組みである。
  • ASEAN地域の複数国のNQFにおいて、責任感や自律性といった要素が含まれている。この点に関して、欧州では従来、EQFの領域の一つである「能力(competence)」の説明として「責任感と自律性(Responsibility and autonomy)」が記されていたが、2017年5月にEQFが改訂され、「能力(competence)」に変わって「責任感と自律性(Responsibility and autonomy)」が領域として明示された(本サイト2017/6/29投稿記事)

参考:各国が採用するNQFのレベル数(区分の数)とNQFの領域(同報告書に掲載されている情報をもとにNIAD-QE国際課にて作成)

国(NQF開始年) レベル NQFの領域
ブルネイ
(2013年)
8レベル ž   ・知識・技能
ž   ・実践(実践的な知識と理解)
ž   ・一般的認識能力
ž   ・コミュニケーション、ICT、数的能力
ž   ・自律性、説明責任、協働性
カンボジア
(2012年)
8レベル ž   ・知識
ž   ・認識能力
ž   ・精神運動能力
ž   ・対人能力と責任感
ž   ・コミュニケーション、情報技術、数的能力
インドネシア
(2012年)
9レベル ž   ・一般的能力 – 特性、人格、働く能力、
倫理、モラル
ž   ・専門的能力
– 仕事を遂行する技術と能力
– 科学・知識
– 科学・知識を応用する方法と能力の段階
– 運営能力
ラオス
(計画段階)
8レベル ž   ・知識
ž   ・技能運用
ž   ・社会的スキル
マレーシア
(2007年)
8レベル ž   ・知識
ž   ・実践的技能
ž   ・社会的スキルと責任感、価値、態度、専門性
ž   ・コミュニケーション、リーダーシップ、
チームスキル
ž   ・問題解決能力・科学的技能
ž   ・情報運用、生涯学習能力
ž   ・経営・事業能力
ミャンマー
(計画段階)
8レベル ž   ・知識と技能
ž   ・応用と能力
ž   ・責任感
フィリピン
(2012年)
8レベル ž   ・知識、技能、価値観
ž   ・応用
ž   ・独立性(自律性・責任感)
シンガポール
(2003年)
6レベル ž   ・関連する知識と技能
ž   ・知識と技能の応用度合
ž   ・説明責任、独立性、自他をとりまとめ、
問題解決能力や業務遂行能力
ž   ・資格と関連する仕事の知識・技能のレベルや
業務上の認識の段階や領域の幅
タイ
(2014年)
9レベル ž   ・知識
ž   ・技能
ž   ・貢献度
ベトナム
(2016年)※2
8レベル ž   ・知識
ž   ・技能
ž   ・自律性、責任感

※1ノンフォーマル学習・インフォーマル学習
ノンフォーマル学習:
計画された活動に埋め込まれているが、(学習目標、学習時間又は学習支援などの点で)明示的に学習として示されていない学習。学習者の視点から見て意図的なものである。
(参考:職業能力開発総合大学校「欧州教育・訓練政策関連用語集」)
インフォーマル学習:
計画された活動に埋め込まれておらず、学習者本人も意図していない学習。

※2なお、同報告書ではベトナムは計画段階であったが、2016年10月にベトナムの首相によってNQFが承認された(本サイト2016/12/22投稿記事)

原典:SHARE(英語)

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