米国:コンピテンスを中心に据えた資格認証制度の構築―アクションプランで具体的な取組みが示される

米国のルミナ財団※1及び48の賛助団体※2は、2015年6月より、資格※3保有者の持つ知識・技能を説明し各資格の質や資格の接続を明らかにすることで、学習者及び雇用者にとってより理解・利用しやすい資格認証制度の構築を目指している。具体的には、(1)「コンピテンスを中心に据えた資格制度構築へ向けた全国対話」の発足、及び (2)資格枠組ベータ版を公表している(本サイト2015年6月25日掲載記事)

1.「コンピテンスを中心に据えた資格制度構築へ向けた全国対話」の進捗状況

2015年10月、「資格認証に関する全国サミット」が開催され、21世紀における資格認証制度の共通ビジョンについて議論された。共通ビジョンには、以下の6つの概念を含む。

  • 修得したすべての学習を対象とする
  • すべての資格は学習成果及びコンピテンスに基づく
  • 資格は、学生、雇用者及び被雇用者にとって携帯性、移転性、透明性、有用性があり、理解しやすいものである
  • 学習者及び雇用者(資格の消費者)は、各々の資格へのニーズや投資のため、様々な資格の価値を情報に基づいて選択できる
  • 資格は、学習者が何を修得し何ができるかを伝達するほか、多様な提供者からの学習を集約し、学習者の実際の作業成果物へのアクセスを提供する包括的な電子記録により支えられている
  • 技術と共通用語により資格間の透明性及び相互利用性が実現可能となる

同サミットでは、これらのビジョンを実現するにあたり優先的なアクションを絞り込むため、分野別作業部会の設置を決定した。

2.7つのアクションプラン及び推奨アクション

2016年9月、同サミットにより設置された各作業部会による成果を踏まえ、「資格認証エコシステム」※4のビジョンを再設計する7つのアクションプランが策定され、具体的な推奨アクションが示された。7つのアクションプラン及びそれらの推奨アクション(抜粋)は以下のとおり。

(1)資格の市場に、雇用者の関与を拡大させる方法を開発する

(2)学習者が「資格認証エコシステム」を積極的に活用できるようにする

(3)コンピテンスを中心とした共通の用語を開発する
資格認証に係る主要な用語について、専門分野ごとに様々な定義をしている現状から、資格認証において共通に使用できる主要な用語を収めた用語集※5を開発する。

(4)データを公開し相互利用を可能にする技術インフラの構築
雇用者と資格保有者が相互利用可能な技術インフラを構築する。例えば、雇用者が求める被雇用者像をどのように発信するか、また被雇用者個人がどのように資格証明に係る情報を活用していくかなど、職業と資格認証の接続に関する情報やコンピテンスに係る公開データの活用方法について改善する。

(5)ステークホルダー間における資格の質や質保証プロセスに関する共通理解の醸成
ステークホルダーが資格の質を理解したり質保証をするための、柔軟性のある基準をかいはつる。その際、米国教育協会(ACE)が報告書Quality Dimensions for Connected Credentialsにおいて提案している質基準※6等を参照する。

(6)「資格認証エコシステム」において、教育機会の公平性を促進する公共政策アジェンダを追求する

(7)現場に根差した新たな資格認証のツールの開発、ポリシー及び実践を促進する

3.資格枠組ベータ版ガイドブック

全国対話の取組みのほか、2016年2月には、Skilled Workforce (CSW)、Center for Law and Social Policy(CLASP)が各ステークホルダーからの意見を踏まえて「資格枠組みベータ版ガイドブック」を作成した。

資格枠組ベータ版とは、2015年6月の全国対話で発表された”Connecting Credentials: A Beta Credentials Framework”であり、欧州において資格・学位を欧州共通の視点で理解するために用いられているEuropean Qualifications Framework (EQF)を参考に8段階で構成されている。

このガイドブックは、プログラム開発者、教育者、人材開発の専門家、資格認証団体、及び人事関係者等を対象に、資格枠組ベータ版の促進を目的としており、資格枠組を適用するにあたっては、次のような分析(profile)を必ず行うこととしている。

  • 機関のコース、教育・訓練プログラム等を定義し学習者の学習成果を明らかにする
  • 個人の知識・技能、習得レベルの到達度を説明することで、特定の資格の実際の習得レベルを明らかにする

本ガイドブックは、上記の分析のほか、コースに必要なコンピテンスの決定や、新たなコース・資格の開発等といった場面での適用方法についても、手順や作業シートを示しながら詳細に説明されている。

※1 米国の高等教育の発展に特化して、学生や州への支援などを行う国内最大規模の私立財団。高等教育への進学と卒業後の成功への途を開くために学生の能力開発支援を行っており、2025年までに国民の60%が質の伴う学位や資格を得ることを目標にしている。
※2 2017年4月時点の賛助団体数は117機関
※3 資格とは、学位資格及び次のような非学位資格をいう:一定の教育課程の修了者に対して授与される修了証(Certificate)、規制のある職業に対する免許(License)、特定の技能の習得レベルを認める認定証(Certification)、見習い修了証、デジタルバッジ(オープンバッジ)、及びその他マイクロクレデンシャルなど。なお、デジタルバッジ(オープンバッジ)やマイクロクレデンシャルについてはこちら(「NIAD-QE 海外高等教育質保証動向ニュース」バックナンバー)を参照。
※4 資格認証エコシステム(credentialing ecosystem)とは、学習者が自らの学習やキャリアを継続するにあたり、上位の資格を認識したり、資格保有者が自らの知識や技能を教育者や雇用者に対し明確に伝達したりするなどの活動の総称。
※5 全国サミットによって設けられた共通用語に係る作業部会にて、用語集の暫定版を作成し、ウェブサイトにも公開されている。
※6 資格の種類別に、透明性、機能的集合性(modularity)、携帯性、妥当性、公平性といった6つの質の評価基準を設けている。

原典:Connecting Credential(英語)

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