米国:大統領令による高等教育行政の規制改革

米国では大統領令に基づき、国として大幅な規制緩和に舵を切るため行政改革が進められており、高等教育行政に関しても、連邦教育省によって規制改革に向けた作業がなされている。

1.大統領令による規制改革

トランプ政権は2017年1月30日、規制改革を実施する姿勢を示す大統領令13771※1を発令し、2月24日、規制改革に向けたアジェンダとして、各機関(Agency)に対し、規制改革担当官の指名、タスクフォースの設置、及び既存の規制の見直しと改善を要求する大統領令13777を発令した。この大統領令では、(1)軽微な業務、慣習的な業務を生じさせる規制、(2)時代遅れ、不必要、非効果的な規制、(3)利益に比しコストがかかる規制等を、廃止、改正及び修正の対象としている。

2.連邦教育省の規制改革タスクフォースの進捗

これらを受け、連邦教育省は規制改革タスクフォースを設置し、5月25日に「規制改革タスクフォース進捗報告書」を作成した。報告書の概要は以下の通り。

  • 利害関係者からの規制緩和に対する意見聴取にあたっては、パブリックコメント及び連邦教育省の主要部局の各利害関係者への意見聴取の2つの方法で実施する。
  • 2017年秋に、米国教育協会(American Council on Education: ACE)等の高等教育関係団体を招集することを通じて、高等教育機関からも意見聴取を行う。
  • タスクフォースは今後、連邦教育省の主要部局に対して、既存の規制やガイダンスが大統領令における廃止、改正及び修正の対象となるかを諮り、膨大な数の規制及びガイダンスの見直し、分析及び優先順位づけを行う。
  • 高等教育局によって、プログラムの情報提供に係る規制(Gainful Employment Disclosure)※2及び奨学金返済の借主保護に係る規制についてはすでに見直しが検討されている。

連邦教育省は、6月22日に規制の廃止、改正及び修正について意見を募るパブリックコメントを実施している。当初、8月21日を期限としていたが、その後、9月20日まで延長することを発表した。

3.規制改革と並行した行政機関改革

大統領令13771では、規制改革にあたり、規制コストの削減を目指すための財政面からもアプローチする姿勢が示されている。同政権は、2017年3月13日、不必要な機関等の削減や機能統合を通じて行政機関の効率、効果及びアカウンタビリティの向上を目指す大統領令13781を発令した。

これを受け、連邦教育省は行政機関改革タスクフォースを設置し、7月26日に利害関係者に対して、連邦政府機関の効率、アカウンタビリティをどのように向上させるか意見を求める文書を送付した。

本文書を受け、米国高等教育アクレディテーション協議会(Council for Higher Education Accreditation: CHEA)や米国教育協会(ACE)は意見文書を提出した。CHEAは8月3日に発表した意見文書で、「連邦教育省が学生やその家族及び教育関係団体のニーズに応え効率を向上させる方法、及び見直すべき連邦教育省の役割」について、4月に発表したCHEAの政策方針書(本サイト2017年5月2日投稿記事)に基づき、学習時間を基準とした単位の定義の廃止や、大学の質に関する国家諮問委員会(National Advisory Committee on Institutional Quality and Integrity: NACIQI)の役割の再検討等について提案している。一方、ACEは8月4日に発表した意見文書で規制の作成過程の見直しを提案しているが、それ以外の全般的な意見については、前述のパブリックコメントの中で述べるとしている。

※1 大統領令13771については、発令後の4月5日に、同法令を補足する大統領令実施に関する覚書が公表されている。
※2 連邦政府の奨学金プログラムに参加している高等教育機関に対し、入学希望学生に機関が提供する有益な雇用につながるプログラムに係る情報を公表することを求めるもの。詳細はこちら

原典①:CHEA
原典②:ACE

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