学生の声を評価に反映する意義‐欧州の視点から

欧州では、学生を評価委員として採用するなど、評価への積極的な学生の登用が進んでいます。他方、日本においては、認証評価制度の仕組みの中で、各高等教育機関が行っている学生満足度調査の結果を参照し、また、訪問調査の際に学生にもインタビューなどを行っているものの、それほど深くは関わっておらず、認証評価の仕組みがあることすら知らない学生がほとんどでしょう。

英国では、高等教育質保証機構(QAA)の評価において、評価チームの一員として学生を採用しています。導入当初は、学生でも評価できるのかといった懸念があったようですが、QAAが、他の評価者に行うような研修を実施し、今では、学生も評価書を適切に作成できるようになったそうです。学生自身が、評価を通じて視野が広がるなど成長が感じられ、その後の社会経験にも有利に働いているようです。

フランスの研究・高等教育評価高等審議会(HCERES)の理事会のメンバーは30人で、大学関係者、国会議員、外国の質保証機関関係者(スペイン、ベルギー、スイス)、研究機関関係者のほか、学生も含まれており、HCERESが行う評価活動について学生が意見を表明する機会があります。2017年からは、教授法に対する学生による評価の導入が必要という考え方から、学生の評価委員の募集を開始しました。また、大学の自己評価委員会の委員に学生を登用している事例もあります。

オランダ・フランダースアクレディテーション機構(NVAO)が行う機関別オーディットやプログラム評価では、評価者チームの構成員4名のうち、1名は学生であることが要件となっています。

このように、欧州において、学生を評価に積極的に取り入れている背景には、学生を「顧客」として捉えている点にあるように思います。例えば、英国では、大学への助成や質保証を主導する政府系機関として、2018年より「学生局(OfS: Office for Students)」が設置されるなど、学生保護の視点にたった考え方が強く表れています。この考え方は、これまで、日本の高等教育関係者の中では、あまり耳にすることはありませんでした。「学生=顧客」として捉えるという考え方の根底にあるのは、単に学生をお客様として扱い、心地よさを提供するということではないのです。評価への参画など、学生が様々な経験を通じて、卒業時に将来の仕事や夢につながる学習成果をしっかりと獲得していることが、顧客である学生を満足させるということになるのではないでしょうか。

(文責:I・W)

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