米国:「学位取得率」から見る学生の多様化と質保証 ―地域アクレディテーション機関が予測分析やベンチマーキングを提供へ

米国地域アクレディテーション機関協議会(Council of Regional Accrediting Commissions: C-RAC)※1は、米国の7つの地域アクレディテーション機関による、学位取得率が低い高等教育機関に関する分析及びそれに対する全米的な取組みについて報告書を発表した。

報告書では、連邦教育省が収集するIPEDS(Integrated Postsecondary Education Data System)※2の学位取得率データは、多様な学生が多く在籍するコミュニティカレッジ※3等の質を適切に評価・改善するには不十分であると分析されている。そこで地域アクレディテーション機関では、IPEDSの学位取得率データ以外についての情報を補い、予測分析※4やベンチマーキングを提供して、高等教育機関の質保証を支援していると紹介している。

1.学位取得率の低さと学生の多様性

この報告書においてC-RACは、全米で適格認定している約2,800の高等教育機関のうち14%にあたる397機関を、C-RACの基準に照らして学位取得率が低い機関としている。このうち75%の機関はコミュニティカレッジであり、また43%の機関では低収入学生が多数派となっており、約50%の機関ではマイノリティ学生※5が多数派となっている※6。そして、低収入の学生、マイノリティ学生は、その他の学生よりも学位を取得するにあたって様々な困難を抱えていることが明らかになった。

学位取得が困難になる主な要因

働きながら就学している/子供を育てながら就学している/介護が必要な家族を抱えている/健康上の不安を抱えている/学生自身または家族に強制送還の恐れがある/経済的な問題を抱えている/英語の使用に不自由がある/大学入学前の教育レベルが大学で学ぶのに不十分なレベルであった 等

2.「学位取得率の低い」機関の実態とは?―連邦政府による情報提供のすれ違い

C-RACの分析によると、コミュニティカレッジをはじめ、学位取得率が低い高等教育機関の75%では、「2機関目以上の就学先として在籍している」、「パートタイム学生である」、又は「学位取得を目的としない就学である」といった学生が多数派となっている。一方で、IPEDSの学位取得率データは、こうした学生を反映していない。

また、コミュニティカレッジの学生の学位取得までの平均年数は5.6年である一方で、IPEDSにおける学位取得率は、3年以内(標準就業年数の1.5倍)で学位を取得した場合しか学位取得の対象としていない。なお、よりコミュニティカレッジの実態に即した6年以内での学位取得率(40%)は、3年以内での学位取得率(21%)の約2倍である。このように、連邦教育省の情報提供は、コミュニティカレッジ等の機関の状況を十分に反映しているとはいえない。

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(出典:A One-Year Review of the Council of Regional Accrediting Commissions’ Graduation Rate Information Project,C-RAC)

3.学位取得率の改善を支援―予測分析やベンチマークの提供

地域アクレディテーション機関は、連邦政府が提供する学位取得率データ以外の情報を補い、より正確に機関の実態を把握できるようにしている。そして、機関の改善策、優良事例、改善のインパクトを明らかにするための、予測分析や地域内でのベンチマーキングの提供といった新たなアプローチを実践している。

例えば、北西部大学協会(Northwest Commission on Colleges and Universities: NWCCU)では、National Student Clearinghouse※7と協力して、より正確な学位取得率を把握するためのパイロット事業を実施している※8。学位取得率が低い機関群のモデルを提示することで、同様の課題を持つ高等教育機関は相互に在籍率の改善のための取組みを学ぶことに強い関心を示している。

また、西部学校・大学協会大学評価委員会(WASC Senior College and University Commission)は、機関の改善に資する予測分析の試みを継続している。さらに、中部地域高等教育委員会(Middle States Commission on Higher Education: MSCHE)はデータ分析によって学習成果に資する要素(可能性を含む)を多元的に分析するとしており、学習成果の潜在的な予測を実現することを目指している。

※1 米国の3,000以上の高等教育機関の質を監督する7つの地域アクレディテーション機関の統括組織。

※2 連邦教育省の全米教育統計センターが毎年実施している調査。連邦奨学金制度に参加している各教育機関(大学、技術・職業教育訓練校)から情報を収集している。

※3 州や市が地域住民に平等に教育の機会を与えることを目的として、教養教育や職業教育訓練を提供する2年制公立大学。オープンアドミッションとなっており、修了により準学士を取得できる。

※4 予測的モデルや機械学習、データマイニングといった多様な統計的技術によって、現在データや履歴データを分析し、未来や知られていない事実について予測する分析手法。

※5 この報告書におけるマイノリティとは、アフリカ系アメリカ人やラテン系アメリカ人などの民族的マイノリティを指す。

※6 2015年に米国国勢調査局は、2020年頃までに米国における学生(18歳以下)の半分以上は「マイノリティ」出身者になり、その後も増加していくと発表している。なお、米国における留学生派遣事情においても、マイノリティ学生の増加が焦点となっている。詳細はこちら(本サイト2016年11月28日掲載記事)。

※7 高等教育機関の学生に係る情報を蓄積・提供している非営利組織。高等教育機関が学籍のある学生のデータを30~45日ごとにNational Student Clearinghouseに送ることで、追跡可能な学生データが蓄積され、併せて高等教育機関に対して情報提供を行っている。現在、米国の全学生の98%以上が在籍する3,600以上の高等教育機関が参加している。

※8 National Student Clearinghouseのデータを基にしたベンチマーキングの提供事例として、National College Access Networkのベンチマーキング・プロジェクトがある。詳細はこちら(本サイト2017年3月24日掲載記事)。

原典:C-RAC(英語)

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