2018年7月16日、イギリスの質保証機関である英国高等教育質保証機構(QAA)は、所属する欧州高等教育質保証協会(ENQA)の外部レビューを5年ぶりに受審し、高い評価を得たと発表した。これにより、QAAはENQAの正会員資格を継続して今後5年間有することになる。
ENQA外部レビューとは?
ENQAは欧州高等教育圏(EHEA)各国の質保証機関が所属する上部団体である。ENQAの正会員資格を有するためには、5年に一度、欧州高等教育圏における質保証の基準とガイドライン(ESG)(NIAD-QE国際課まとめ)に基づく外部レビューを受けなくてはならない。正会員資格を獲得した機関は、欧州高等教育機関登録簿(EQAR)への登録が許され、欧州圏を中心に幅広い地域の大学に対して、ESGに基づく評価を実施することができる。
なお、ESGは2005年に制定されたのち、2015年に改定が行われている。QAAが改定後のESGに基づく外部レビューを受けるのは今回が初めて。改定前に実施された前回の外部レビュー(本サイト2013/11/14投稿記事)でも、QAAはすべての項目において「完全に満たしている(Fully compliant)」の評価を獲得し、高評価を得ている。
QAAの評価結果概要
今回QAAは、ESGの14項目中13項目で「完全に満たしている(Fully compliant)」、1項目で「おおむね満たしている(Substantially compliant)」と判定された。この結果、QAAはESGを「おおむね満たしている」と判定され、正会員資格を継続した※。各項目における評価結果の詳細は以下の表のとおり。
※ ESG項目ごとに、4段階(fully compliant, substantially compliant, partly compliant or not compliant)で判定される。正会員資格はESGに関して「おおむね満たしている(substantially compliant)」以上の判定を受けた機関のみ得ることができる。
ESG項目 | 判定 |
質保証機関に関する基準 | |
3-1. 質保証の活動、方針及びプロセス | Fully compliant |
3-2. 公的地位 | Fully compliant |
3-3. 独立性 | Fully compliant |
3-4. 活動の分析 | Fully compliant |
3-5. 資源 | Fully compliant |
3-6. 内部質保証と専門性 | Fully compliant |
3-7. 質保証機関に対する周期的な外部の評価 | Fully compliant |
外部質保証に関する基準 | |
2-1. 内部質保証の考慮 | Fully compliant |
2-2. 目的に沿った方法論の設計 | Fully compliant |
2-3. 実施プロセス | Fully compliant |
2-4. ピアレビューの専門家 | Substantially compliant |
2-5. 成果に対する基準 | Fully compliant |
2-6. 報告 | Fully compliant |
2-7. 苦情と不服申立 | Fully compliant |
ENQAの報告書は、QAAが「2-4. ピアレビューの専門家」の基準を「完全に満たしている」と判定されなかった要因として、学生がTNE(国境を越えた教育)などの一部レビューに参加していないことや、ビジネス・産業界出身の専門家が評価者にいないことを挙げている。
ENQAからQAAへの提言
今回のQAAのレビューにおける、ENQAからの提言は以下のとおり。
ESG項目 | ENQAからの提言 |
2-4. ピアレビューの専門家 | QAAはESGに沿ったレビューの基本として、無条件ですべてのレビューに学生を参画させるべきである。 |
3-1. 質保証の活動、方針及びプロセス | 質の高い高等教育を受ける学生の利益や英国の大学が提供する教育に対する海外での評判を守るため、海外でのTNEレビューに関わる活動を強化し、国際共同教育協定の監視を強化すべきである。 |
(参考)2016年にフランスの研究・高等教育評価高等審議会(HCERES)が、ENQA外部レビューを受けた際の評価結果はこちら(本サイト2017/9/11投稿記事)。