欧州連合(EU)と東南アジア諸国連合(ASEAN)の協働イニシアティブであるSHARE※1のプログラムは、ASEAN域内の高等教育の質の向上、競争力の強化、高等教育機関の国際化を目的として実施されている。SHAREは2018年8月に報告書「QUALITY ASSURANCE ARRANGEMENTS RELATED TO NATIONAL QUALIFICATIONS FRAMEWORKS IN ASEAN AND THEIR IMPACT ON HIGHER EDUCATION」を公開した。
当報告書では、ASEAN地域の高等教育に関連する資格枠組制度において、有用な質保証との連携を考察することを目的としており、ASEAN各国における国家資格枠組(NQF)※2の構築・実施状況、及びNQFと質保証枠組とのリンク(link)のあり方について紹介している。
※1SHARE:European Union Support to Higher Education in the ASEAN Region(「EU-ASEAN間の高等教育分野の連携プログラム」)
※2NQF(National Qualification Framework)とは、学位・資格について、学習量、学習成果、能力等を指標として学習の達成水準を段階的に分類する国単位の仕組みである。学習者の教育の水準を示し、学位・資格の透明性を確保することを狙いとしている。
ASEAN10か国のNQFの主な構築状況
ASEAN各国における国家資格枠組の構築状況は下記のとおりである。なお、2015年10月に発表されたSHAREの報告書「ASEAN Qualifications Reference Framework and National Qualifications Frameworks」にまとめているが(本サイト2017/8/29投稿記事)より構築状況は進展している。
*WSQ(workforce Skills Qualifications)
**SSG(SkillsFuture Singapore Agency)
当報告書に記載されている情報を基にNIAD-QE国際課が作成
資格枠組と質保証枠組のリンク:両枠組が発展するほど両者のリンクは強まる
当報告書によれば、資格枠組と質保証のリンクの程度がもっとも顕著に表れる部分は、高等教育プログラムの設計、承認、レビュープロセスである。成熟したNQFと質保証制度を有する国はこのリンクが強い傾向にあり、質保証の基準やガイドラインに表れているという。また、NQFを有する国の中には、NQFの構築によって、学習成果重視の方針へと移行するきっかけとなった国もあった。
一方、比較的最近にNQFを構築した国ほど、資格枠組と質保証のリンクは弱まる傾向にある。外部質保証のプロセスに関しても、資格枠組と質保証のリンクについて同様の傾向が見られ、外部レビューのプロセスにおいて、資格取得要件がNQFで定める学習成果と合致しているかどうかの確認プロセスが組み込まれていないことが多いとされる。
ASEAN地域の質保証の発展や資格枠組とのリンクにおいて重要なこと
当報告書では、ASEAN諸国における質保証の発展や、質保証と資格枠組のリンクの強化のために下記の事項を発展させるべきである。
- NQFと質の高い教育・訓練において、学習成果に焦点を当てた取組の実施を拡大し、支援すること。
- 高等教育機関の内部質保証を強化すること。その一環として職員の能力強化や設備の充実化に取り組むこと。
- プログラムの承認とレビュープロセスの強化に焦点を当てること。特に高等教育機関は、NQFの要件とステークホルダーの需要を満たしたプログラムを提供すること。
- 学習者の学びを促し、様々な形態の学習が接続されるよう、高等教育以外の教育・訓練とNQF・質保証を強化すること。
原典:ASEAN(英語)