「欧州大学イニシアチブ」の初の採択コンソーシアム17件が決定

欧州委員会は、2019年6月にエラスムス・プラスプログラムの一つである「欧州大学イニシアチブ」(European Universities Initiative)の採択結果を発表した。54件の申請中、17件のコンソーシアムが採択された(採択率31%)。「欧州教育圏」(European Education Area)構想(本サイト2018/2/19掲載記事)の旗艦プロジェクトとして立ち上がった「欧州大学イニシアチブ」の初の採択となる。17コンソーシアムには、24か国・114の高等教育機関が参画しており、各コンソーシアムにつき3年間で最大500万ユーロ(約6.1億円)が助成される。

欧州大学イニシアチブとは

欧州理事会は2017年11月に、欧州における教育・文化の未来について議論し、2025年までに「欧州教育圏」を構築することを決定した。教育面のモビリティ促進に対する課題意識のもと、次世代の欧州の人々が、欧州の一員としての強力なアイデンティティを育みながら、言語や国を越えて連携することを可能にするため、「欧州大学イニシアチブ」が立ち上げられたものである。

「欧州大学」には、少なくとも3つのEU加盟国、3つの高等教育機関で1つの「大学」(=コンソーシアム)を構成することを求めるほか、以下の要素を具備することが期待されている。

  • コンソーシアムは、持続可能性、卓越性、欧州としての価値を中心とした長期戦略をもつこと。
  • 欧州の様々な国の大学が参画し、大学間の広域的キャンパスを形成すること。そこでは、以下のような取組が想定される。
    • 学生は何をどこで学ぶか自由にカスタマイズできる
    • 学士・修士・博士の各課程において、最新技術と教育手法を駆使して共同性と柔軟性を持った新たなカリキュラムを提供する
    • 起業家精神と地域貢献の意識の醸成のため、学生に実践的な経験を提供する
    • 多様な背景をもつ学生や多様な学びの形態に対応し、教育を提供する
  • 学生や研究者が産業界や自治体などと連携し、欧州が直面している重要課題(気候変動、持続可能な農業生産)を複数の分野から取り組むこと。

採択コンソーシアム

採択された17コンソーシアムには、総合大学、理工系大学、芸術系大学など、様々な高等教育機関が名を連ねた(下表)。そのひとつ、「CIVICA – The European University in social sciences」は、フランス、イタリア、ハンガリーなどで社会科学分野を先導する大学が参画し、学士・修士・博士の各段階での教育プログラムを通じて、社会科学分野の広域的キャンパスを形成する構想を掲げている。

質保証機関の動き

欧州の質保証機関では、「欧州大学」に対する質の保証を将来課題と捉え、欧州高等教育アクレディテーション協会(ECA)において質保証の方針と具体策の議論が始まっている。「欧州大学」では、複数国の大学が共同で学位プログラムを実施することが想定されるため、当該の複数国間でプログラムの質保証の結果を承認し、その学位を通用性のあるものとすることが必要となる。

ECAは、「JOQAR」「MULTRA」(当機構国際課別サイト)といった国際的な共同教育プログラムの質保証プロジェクトでの豊富な経験を活かしながら、欧州大学の事情に沿った戦略性のある新たな質保証手法の開発を模索している。

原典:欧州委員会教育・視聴覚・文化執行機関(EACEA)(英語)
原典:欧州委員会「Erasmus+ Programme Guide」(英語)

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