コメント(解説):異なる大学同士が国を越えて共同教育プログラムを実施する場合、アクレディテーションをそれぞれの国で複数回受審することが求められるため、大学や質保証機関にとって、大きな負担となっていました。本プロジェクトでは、1つのプログラムにつき1回の質保証・アクレディテーション手続きで済むように、共同教育プログラムに対する質保証の効率化・負担軽減を図ることを目指しました。
正式名称
Joint programmes: Quality Assurance and Recognition of degrees awarded
実施主体
ECA(欧州高等教育アクレディテーション協会)
実施年
2010-2013年
概略
JOQAR は、ECA(欧州高等教育アクレディテーション協会)のTEAM IIプロジェクトのフォローアップという位置づけで開始され、共同教育プログラムのアクレディテーション及び学位・資格の認証の分野から、エラスムス・ムンドゥス等の国際的な共同教育プログラムの活動全般の促進を目的とするプロジェクト。ECA加盟の質保証・アクレディテーション機関(10機関)が主体と なり、4ヶ国のENIC-NARICセンター※との協働で実施。
国際的な共同教育プログラムは、当該プログラムの提供先であるそれぞれの国・地域の評価制度や評価手続きに従って質保証・アクレディテーションを受けるこ とが求められる。このため、共同教育プログラムを実施するためには、当該プログラムが複数の評価を受けなければならず、プログラムを提供する機関及びそれ を評価する質保証機関双方にとって負担となってきた。こうした背景のもと、本プロジェクトは、単一の質保証・アクレディテーション手続きを構築し推進する ことにより、共同教育プログラムの質保証の効率化・負担軽減を図り、国際的な共同教育プログラムの促進を目指すものである。
JOQARプロジェクトの主な活動は、以下のとおり。
- 共同教育プログラムの質保証・アクレディテーションに関する活動
- 質保証・アクレディテーションの結果を欧州域内で共有するシステムの構築
- 国際的な共同教育プログラムの外部質保証を欧州レベルで取組むための拠点(Coordination point)の設置
- 共同教育プログラムの学位・資格の認証に関する活動
- ENIC-NARICによる学位認証において重要である共同教育プログラムの学位構造(資格枠組み)、ディプロマ・サプリメントの内容等に関する高等教育機関への情報提供
- 共同教育プログラムで授与される学位の認証に関する各国のENIC-NARIC間の共通基盤の整備
- ウェブサイトQrossroadsを通じたエラスムス・ムンドゥスプログラムに関する透明性ある情報提供
本プロジェクトでは、2012年末までに、5か国(クロアチア、スペイン、スウェーデン、イタリア、オランダ)の5大学を対象に、5つの質保証機関協働による単一のアクレディテーション手続きによる試行評価が実施され、以下の課題が明らかになった。
- 各国に固有の質保証制度があるなか、アクレディテーション結果を国境を越えて相互認証することは困難であった
- 共同教育プログラムの質保証等に関するコーディネーション拠点の設置が重要である
コーディネーション拠点については、設置の実現可能性を探るアンケート調査が2011年、大学等で共同教育プログラムに関わる担当者及び質保証機関を対象に調査が行われた。その結果、以下の点が明らかになっている。
- 大学等での担当者の多くが共同教育プログラムの外部質保証について課題を感じており、関連する情報の収集に苦労している。
- 大学側及び質保証機関の双方が、コーディネーション拠点の必要性を強く感じている。
- コーディネーション拠点の役割として、各国の質保証要件や法的枠組み、質保証の優良事例、進行中のプログラムに関する情報提供、プログラムの企画・運営の実務における支援が期待されている。
学位・資格の認証に関する活動として、2013年4月に、「共同学位授与における優良事例ガイドライン」を公表した。このガイドラインは、共同教育プログラムで授与される学位が、他の機関で円滑に認証されるように、プログラムを提供するコンソーシアム向けに、学位授与の際の注意や推奨点がまとめられたものである。
※ENIC-NARIC(European Network of Information Centres – National Academic Recognition Information Centres):
海外資格に関する情報提供及び評価事業等を行っている、欧州地域各国のナショナル情報センター