イギリスの大学入学資格「GCE Aレベル」試験が中止に:新型コロナウイルス対策

※(参考)GCE Aレベルは、2022年に3年ぶりに実施されました。
 イギリス:2022年大学入学資格「GCE Aレベル」試験を3年ぶりに実施(2022/6/3掲載)
※(参考)GCE Aレベルは2020年に引き続き、2021年も試験が中止となりました。
 2021年:イギリス大学入学資格「GCE Aレベル」試験がコロナの影響で2年連続中止(2021/4/21掲載)
 イギリスAレベルで44.3%がA判定以上:コロナ禍での試験中止の影響とは(2021/10/20掲載)

 2020年3月18日、イギリスの教育大臣は新型コロナウイルス対策として、イングランドで今夏に予定していた「GCSE」、「GCE ASレベル」、「GCE Aレベル」の試験を中止すると発表した。これらは中等教育段階で実施される試験で、通常は毎年5~6月に行われ、同年8月に結果が公表され生徒の進学先が確定し、同年9~10月に大学に入学する。なお、イングランドのほかにウェールズ及び北アイルランドでも、地方政府がこれらの試験の中止を発表している※1

イングランドの教育制度※2

 イングランドの教育制度は、5~11歳の6年間が初等教育、11~18歳の7年間が中等教育である。大学進学希望者は、通常16歳でGCSE(General Certificate of Secondary Education)を受験して当該資格を取得する。その後、通常17歳(GCSE取得から1年後)でGCE AS Level(General Certificate of Education Advanced Supplementary Level[通称:ASレベル])を、通常18歳(GCSE取得から2年後)でGCE A level(General Certificate of Education Advanced level[通称:Aレベル])をそれぞれ受験して当該資格を取得する。Aレベルはイングランドにおいて最も一般的な大学(学士課程)入学資格として知られている。なお、Aレベルを保有する者には日本の大学入学資格が認められる※3

試験の代替措置について

 教育大臣の発表を受け、2020年4月3日、イングランドで当該資格及び資格試験の監督団体であるOfqual(Office of the Qualifications and Examinations Regulation)※4は、今夏の試験中止の代替措置としてGCSE、ASレベル、Aレベル等の資格授与方法をまとめた「Summer 2020 grades for GCSE, AS and A level, Extended Project Qualification and Advanced Extension Award in maths」を発表した。

各学校からの提供情報

 各中等教育学校等は、以下の1)及び2)の資料を2020年5月29日以降に試験実施機関(AQA [Assessment and Qualifications Alliance]、Pearson (Edexcel)等)に提出する。

1)各生徒の教科ごとの「centre assessment grades」

 「centre assessment grades」とは、もし生徒がAレベル等を受験し、試験以外の課題も完了していれば、達成していたと考えられる成績のことである。成績の判定は、以下のような様々な根拠資料を踏まえ、各教科の担当教員等による専門的な判断に基づく必要がある。

  • 生徒のすべての学習記録(授業、自習、音楽・演劇・体育等の実技科目への参加状況)
  • 試験を実施しない教科の成績(提出課題の成績等)
  • 課題や模試の結果
  • Aレベル受験予定だった生徒については昨年受験したASレベルの結果
  • その他学生の学習成果を示す資料

2)各教科で同じ成績区分中の学生の順位   

 例えばcentre assessment gradesでGCSEの数学の成績が「5」と判定された全ての学生の中で最も優秀な学生を1位として全員を順位づけする。この情報は各学校の判定基準の差異を調整するために用いられる。

試験実施機関での成績の処理

 成績判定が可能な限り公平なものになるよう、試験実施機関は全学校から提出されたcentre assessment gradesをOfqualが開発したモデルを用いて標準化して、各生徒の最終成績を確定することとしている。成績の発表時期については、通常の試験結果発表時期である8月を目指して準備が進められている。また、試験実施機関における成績の取扱は以下のとおりとなっている。

  • 各学校が作成した生徒の順位は変更しない。
  • ある学校の成績判定が他校に比べて厳しいまたは甘い場合には、試験実施機関は当該校における生徒の成績を上方または下方調整する。
  • 学校はいかなる状況においても、最終結果が生徒に通知される前にcentre assessment gradesを生徒や保護者に知らせてはならない。

代替措置で対応できない可能性がある学生について

 上記の代替措置では、private candidates(ホームスクーリングや遠隔教育などで学習しており普段通学していない学校等での受験を予定していた者)のcentre assessment gradesが判定できるのかが問題になっている。Ofqualは特に進学のために今夏の成績が必要であるが当該成績が入手できない者に対する措置を至急検討しているが、今秋や来年の夏に受験しなければならなくなる可能性もあるとしている。

※1 スコットランドでは他地域と異なり、「Scottish Higher」(通称:ハイヤー)と呼ばれる資格が最も一般的な大学(学士課程)入学資格として知られているが、スコットランド政府は今夏のハイヤーの試験の中止を発表している。
※2 イングランドの教育制度の詳細については「英国の高等教育・質保証システムの概要(第3版)」(大学改革支援・学位授与機構、2020年3月刊行)を参照すること。
※3 文部科学省「大学入学資格について
※4 GCSE、ASレベル、Aレベルについては、英国の地域ごとに資格を認証・規制する機関が異なり、イングランドではOfqualが担当している。なお、Ofqualによって認証された当該資格はAQA、OCR、Pearson (Edexcel)、WJEC Eduqasのいずれかの機関によって試験実施の上で、学生に授与されている。

原典:Ofqual(英語)

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