2021年:イギリス大学入学資格「GCE Aレベル」試験がコロナの影響で2年連続中止

※(参考)GCE Aレベルは、2022年に3年ぶりに実施されました。
 イギリス:2022年大学入学資格「GCE Aレベル」試験を3年ぶりに実施(2022/6/3掲載)
※(参考)GCE Aレベル2021年の結果について2021年10月に記事を掲載しました。
 イギリスAレベルで44.3%がA判定以上:コロナ禍での試験中止の影響とは(2021/10/20掲載)

 イギリスの教育大臣は、2021年1月に新型コロナウイルスの感染拡大がカリキュラムの学習進捗や生徒の試験準備に与える影響を考慮して、イングランドで今夏に予定していた「GCE Aレベル」試験の中止を発表した※1。本試験は2020年も新型コロナウイルスの影響で中止(本サイト2020/5/27掲載記事)している。2021年試験の代替措置では教員が各生徒の成績の判定を行う。なお、ウェールズ及び北アイルランドでも地方政府が2021年試験の中止を発表している※2

【1】イングランドの教育制度とGCE Aレベル

 イングランドの教育制度では、5~11歳の6年間が初等教育、11~18歳の7年間が中等教育である。GCE Aレベル(以下Aレベル)※3は、イングランドで最も一般的な大学(学士課程)入学資格として知られており、大学進学希望者は通常18歳で試験を受験する。例年5~6月に試験が行われ、同年8月に結果が公表され、生徒は同年9~10月に大学へ入学する。なお、Aレベルを保有する者には日本の大学入学資格が認められる※4

【2】試験の代替措置について

 2021年2月25日、資格・試験規制機関(Ofqual※5)は、試験中止の代替措置として、今夏の資格授与方法をまとめた「Decisions on how GCSE, AS and A level grades will be determined in summer 2021」を発表した。前年の試験代替措置とは異なり、中等教育学校等の教員が各生徒の最終成績を決定する仕様となっている。なお、本代替措置は2021年1月15日~29日に実施されたコンサルテーション※6の結果を踏まえて決定した。

参考:前年の代替措置について

 2020年の代替措置では教員が判定した学校の成績をOfqualが開発したモデルを用いて標準化し、最終成績を判定することになっていた。[詳細はこちら(本サイト2020/5/27掲載記事)]

 しかし最終成績発表後に、教員の判定よりも低い判定を受けた受験生の割合が約40%に上ったこと、また昨年に比べてA以上の判定を受けた受験生の割合は増えていたものの、私立校に比べて公立校の生徒の成績の伸び率が低かったことが明らかになり、中等教育機関や生徒から公平性に疑問の声が上がった。その結果、教育省は成績判定方法の検証を行い、成績発表の4日後にアルゴリズムによる成績判定は一貫性がなく、不公平なものだったとして、教員による判定を最終成績とするよう変更した。ただし、標準化後の成績が担当教員による判定を上回る場合には、標準化後の成績を最終成績とした。

■代替措置の概略

 2021年の成績判定方法の概略は以下の通りである。

  1. 教員が幅広いエビデンスを用いて生徒の最終成績を判定。
    (2020年と異なり、試験実施団体は成績の標準化を行わない)
  2. 学校が試験実施団体に1で判定した生徒の最終成績を提出。学校は、判定が過度に厳しい/易しいことがないことを、各学校の過去の成績データを考慮して確認する【内部質保証】。
  3. 試験実施団体が各学校の内部質保証結果(最終成績判定の際に用いられたプロセス及びエビデンスが適切なものであったか)を確認する。加えて、いくつかの学校(サンプル校)で1以上の科目についてエビデンスのレビューを実施する【外部質保証】。
  4. 外部質保証が完了し、その結果が試験実施団体として納得できるものであった場合に初めて、試験実施団体は学校から提出された成績の処理を進める。
■その他のポイント
  • 新型コロナウイルスの影響でカリキュラムの範囲や生徒の試験準備状況が様々であることを踏まえ、教員は生徒に教授した内容のみに基づいて生徒を評価しなければならない。
  • 校長は、所属する生徒が次の段階へ進学しても困らない程度の教育内容を教わっているかを確認しなくてはならない。ただし、政府は生徒が教わるべき教育内容の最低要件を規定しない。
  • 試験実施団体は教員向けにサポート資料のセットを提供する。これには、設問(主に過去に出題された問題)、採点案、各設問での生徒の回答の想定等が含まれる。また、教育内容の範囲、トピックの選択、採点、成績判定に関する教員へのアドバイスも含まれる。ただし、サポート資料を使用するか否かの判断は教員に委ねられている。

※1 GCSE(General Certificate of Secondary Education)、GCE AS Level(General Certificate of Education Advanced Supplementary Level)の試験の中止も同時に発表されている。
※2 スコットランドでは他地域と異なり、「Scottish Higher」(通称:ハイヤー)が最も一般的な大学(学士課程)入学資格として知られている。ハイヤー試験についても、2020年12月にスコットランド副首相が2021年試験の中止を発表している。
※3 正式名称:General Certificate of Education Advanced level
なお、Aレベルの資格には最高のA*からEの成績が付される。
※4 文部科学省「大学入学資格について
※5 正式名称:Office of the Qualifications and Examinations Regulation
通常、Ofqualによって認証されたAレベルの資格はAQA、OCR、Pearson (Edexcel)、WJEC Eduqasのいずれかの機関によって試験実施の上で、生徒に授与されている。
※6 イギリスのコンサルテーション制度に近い制度として、日本ではパブリックコメント制度がある。

原典:Ofqual(英語)

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