イギリスAレベルで44.3%がA判定以上:コロナ禍での試験中止の影響とは

 2021年8月10日、イギリスの大学入学資格「GCE Aレベル(以下Aレベル)」※1の結果が公表された。前年に引き続き新型コロナウイルスの影響でAレベル試験は中止となり、2021年は中等教育学校等の教員が各生徒の最終成績を判定した。本記事では、教員が判定した今年の最終成績の分布とAレベルの質を確保するために中等教育学校等で実施された対策に焦点を当てて紹介する。

■Aレベルとは

 イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの各地域で独自の教育制度を有している。Aレベルは、スコットランド以外の地域で最も一般的な大学(学士課程)入学資格として知られている※2。本記事ではイングランドの状況に焦点を当てる。

 イングランドの教育制度では、5~11歳の6年間が初等教育、11~18歳の7年間が中等教育である。大学進学希望者は通常18歳でAレベル試験を受験する。例年5~6月に試験が行われ、同年8月に結果が公表され、生徒は同年9~10月に大学へ入学するが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年(本サイト2020/5/27掲載記事)2021年(本サイト2021/4/21掲載記事)には試験が中止された。なお、Aレベルを保有する者には日本の大学入学資格が認められる※3

◇イギリスの大学(学士課程)入学資格については「英国の高等教育・質保証システムの概要(第3版)」(大学改革支援・学位授与機構、2020年3月刊行)のpp.14-16に詳細を記載。

■2021年の成績判定方法の概略

  1. 教員が幅広いエビデンスを用いて生徒の最終成績を判定。
  2. 学校が試験実施団体に1.で判定した生徒の最終成績を提出。学校は、判定が過度に厳しい/易しいことがないことを、各学校の過去の成績データを考慮して確認する【内部質保証】。
  3. 試験実施団体が各学校の内部質保証結果(最終成績判定の際に用いられたプロセス及びエビデンスが適切なものであったか)を確認する。加えて、いくつかの学校(サンプル校)で1以上の科目についてエビデンスのレビューを実施する【外部質保証】。
  4. 外部質保証が完了し、その結果が試験実施団体として納得できるものであった場合に初めて、試験実施団体は学校から提出された成績の処理を進める。

◇2020年と2021年の試験代替措置の違いについてはこちら(本サイト2021/4/21掲載記事)を参照。

■2021年の成績分布

 Aレベルの資格には最高のA*からEの成績がつけられる。今年と過去2年のイングランドの成績分布は以下の表の通り(2019年は例年通り試験を実施、2020年は試験中止)。2021年は2020年に比べて、A以上の判定を受けた生徒の割合が増加していることがわかる※4

 資格・試験規制機関(Ofqual※5)は優秀な成績判定を受ける生徒の割合が増加した一因として、例えば教員による判定が評価の寛大化を招いた可能性があると指摘している。 

表:イングランドAレベルの成績分布の比較(累積比率:2019年、2020年、2021年)

 A*A以上B以上C以上D以上E以上
2019年(%)7.725.251.175.590.897.5
2020年(%)14.338.165.487.596.899.7
2021年(%)19.144.369.888.296.299.5
Ofqualの公表資料より作成。

■2021年:Aレベルの質を保証するために実施された措置

 中等教育学校等には、教員が行った成績判定の質を確保するため、成績判定の指針(ポリシー)の整備により内部質保証プロセスの構築を行うことが求められた。

 また、外部質保証の一環として、試験実施団体は学校から提出されたポリシーやエビデンスの確認を行い、学校の成績判定方法に懸念を抱いた場合にはポリシーの変更を求めた。

ポリシーの策定

 中等教育学校等は試験実施団体の指導の下、生徒の成績判定方法を各校のポリシーの一項目として規定した。具体的には教員が判定した成績 [TAGs(Teacher assessed grades)と呼ばれる] が最低2名の教員によって確認されていること等、学校が適切に成績判定していることを保証するために行う対策が盛り込まれた。また、各学校の校長は、試験実施団体に成績を提出する際は要件やポリシーに基づいた判定を行ったことに関する誓約書の提出も求められた。

成績判定のチェック

 試験実施団体はTAGsを受領した後、いくつかの学校に対して、特定の科目・特定の生徒の判定に用いられた学習成果物の提出を求め、内容を精査した。指名された学校は48時間以内に試験実施団体に資料を提出しなくてはならなかった。

 精査対象となった学校として、前年に比べて成績分布の傾向が異なる学校等が指名されやすいほか、ランダムに選ばれた学校もあった。また試験実施団体はすべての学校種及びすべての地域の学校を確認することになっており、イングランドからは1,101校(約5校に1校)がこの方法で精査され、イングランド以外の地域でも同様の措置が図られた。

 精査を受けた学校の85%については、各科目の専門家によりTAGsを裏付けるエビデンスがあることが確認された。残りの学校については、さらなる精査(科目専門家と教員との間の専門的な協議等)が実施され、適宜学校側が成績判定の見直しを行った。

※1 正式名称:General Certificate of Education Advanced level
※2 スコットランドでは他地域と異なり、「Scottish Higher」(通称:ハイヤー)が最も一般的な大学(学士課程)入学資格として知られている。
※3 文部科学省「大学入学資格について
※4 ウェールズ、北アイルランドでもA判定以上の生徒の割合が増加している。
   ウェールズ  :2019年 27.0%、2020年 41.8%、2021年 48.3%
   北アイルランド:2019年 30.9%、2020年 43.3%、2021年 50.8%
※5  正式名称:Office of the Qualifications and Examinations Regulation 通常、Ofqualによって認証されたAレベルの資格はAQA、OCR、Pearson (Edexcel)、WJEC Eduqasのいずれかの機関によって試験実施の上で、生徒に授与されている。

原典①:Ofqual(英語)
原典②:Ofqual(英語)

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