ドイツのベルテルスマン財団(Bertelsmann Stiftung)を筆頭とするコンソーシアムは、欧州の国境を越えた高等教育(CBHE: cross-border higher education)の現状に関する調査報告書を発表した。この調査は欧州委員会の助成を受けて前述のコンソーシアムが主導し、調査会社CHE Consultが2012年に調査を行ったもの。フランチャイズ、課程認定(validation)、海外分校の3形態をCBHEと定義し、欧州域内でのCBHEについて①実態②規制③課題について調べられた。
フランチャイズ:学位を授与する教育機関が、自らの教育課程の一部または全てを別の教育機関で行うことを承認すること。通常、課程の内容、教育や成績評価の方法、質保証に関しては学位を授与する機関が責任を持つ。また、学生は学位を授与する機関の在籍扱いとなることが多い。
課程認定(validaton):学位を授与する教育機関が、別の教育機関における教育課程(具体的には、その内容、教育と学習、成績評価)を認定し、その課程修了者に自らの学位が授与されるようにすること。課程認定は、学位を授与する機関自らが開設する課程と、パートナー機関が開設する課程の両方に適用される。
海外分校:高等教育機関が所有するキャンパスで、メインキャンパスや本校とは別のキャンパスのうち、国境を越えた位置にあるもの。大抵の場合、その規模はメインキャンパスや本校よりも小さい。
(参考:QAA用語集)
主な調査結果は、以下のとおり。
①実態
- → 欧州におけるCBHEは253件:数は少ないものの増加傾向にある
- → EU27ヶ国中、エストニア、ポルトガル、スロベニアではCBHEは行われていない
- → 海外分校に比べ、フランチャイズと課程認定の件数が圧倒的に多い
- → 提供側は主に英語を母国語としている国の機関
- → 受入側は小規模の私立教育機関が多数を占める
- → 高等教育に対する需要に供給が追いついていない国で、CBHE受入れ数が多い
- → CBHEは基本的に自主財源に頼っており、授業料も高い
- → 質保証に関する情報は、受入機関でも公開しているところは少なく、提供機関ではほとんど見られない
②規制
- → 4つの規制タイプに各国がほぼまんべんなく分けられる
- ♢ 外国の教育機関による活動への規制がほとんど(あるいは、全く)ない(7ヶ国)
- ♢ 外国の教育機関は受入国での登録か、本国でのアクレディテーションが必要(8ヶ国)
- ♢ 外国の教育機関は受入国または本国での登録と契約、あるいは承認が必要(4ヶ国)
- ♢ 外国の教育機関は受入国でのアクレディテーションが必要(6ヶ国)
- → CBHEに対するさらなる規制を求める声は現在の規制強度を問わず強い
- → 受入側は提供国の質保証制度へ頼る一方、提供側は質保証に対する姿勢が消極的(英国を除く)
③課題
- → CBHEに対する調査文献がほとんど見られない