原典①:CPE: Committee for Private Education プレスリリース(英語)
原典②:CPE: Committee for Private Education プレスリリース(英語)
原典③:CPE: Committee for Private Education EduTrustガイダンス資料 (英語)
2016年10月21日、シンガポールの私立教育委員会 (CPE: Committee for Private Education) は、私立教育機関で教育を受ける学生の保護と、情報の透明性を向上させるため、私立教育機関に対する規制を強化することを発表した。
CPEは、シンガポールにおける私立教育機関を統制する役割を担う法定機関で、「EduTrust」という私立教育機関を評価する制度や、全私立教育機関が機関情報の登録を義務付けられている「登録枠組み(Enhanced Registration Framework)」といった質保証スキームを有しており、今回の発表にはこれらの制度に関連した規制強化が含まれる。
規制強化の主な内容としては、シンガポール内で海外学位プログラム※を提供する私立教育機関に対する、EduTrust受審の義務付けや、卒業生就業状況調査への参加義務化等が挙げられる。このほか、シンガポールにて海外学位プログラムを受けようとする学生に対する学力要件の設定や、CPEの提携機関による信用格付けの取得の義務化等が発表された。
1.海外学位プログラム提供機関、EduTrust受審の義務化
海外学位プログラムを提供する私立教育機関に対し、これまでは任意の評価制度であったEduTrustの受審を義務化し、いずれも4年の有効期限が付与される「EduTrust Star」もしくは「EduTrust」の認定を得ることとしている。
EduTrustとはCPEが行う質保証スキームであり、書面調査および現地調査を通じて、6つの基準への適合性を1000点満点で評価し、合計得点に応じた認定を機関に与えるものである。6つの基準と各基準への配点は以下の通りである。(詳細についてはCPEのウェブサイト上に公開されている。)
基準 | 配点 |
---|---|
運営理念と責任 | 50点 |
コーポレートガバナンスと運営体制 | 180点 |
外部リクルートエージェント | 120点 |
学生の保護と支援 | 210点 |
アカデミックプロセスと教育成果 | 350点 |
質保証システム | 90点 |
合計得点に応じて、各機関は以下の認定(称号)を受ける。
称号 | 得点 | 有効期限 |
---|---|---|
EduTrust Star | 750点~ | 4年 |
EduTrust | 600~749点 | 4年 |
EduTrust Provisional | 500~599点 | 1年 |
2.EduTrust受審の条件追加
EduTrustを受審する前提条件として、CPEが管理する登録枠組みにおいて、4年以上の有効期限が付与されていることが新たに加えられた。
登録枠組みも、CPEが管理する質保証スキームであり、全私立教育機関が登録を義務付けられている。登録には資本金額や提供予定のコース内容等の情報をオンラインシステムで提供する必要があり、CPEはそれらの情報とこれまでの運営実績や財務状況を勘案し、1年、4年、6年のいずれかの有効期限を各機関に与えている。
3.海外学位プログラム提供機関、卒業生就業状況調査への参加義務化
CPEは私立教育機関の教育成果の把握と、中等後教育に進学を検討している学生への情報提供を目的とした「卒業生就業状況調査」を毎年実施することを決定し、海外学位プログラムを提供する私立教育機関の参加を義務づけている。同調査の結果は機関別に整理され、CPEのウェブサイト上で公開される。
同調査の基盤となるパイロット調査が、2015年12月から翌年6月にかけて行われており、その結果は既に公表されている。対象は海外学位プログラムを提供する私立教育機関のうち9機関であり、卒業生約12,600人のうち約4,200人が回答した。主な結果は以下の通りである。
- 回答機関卒業生の正規雇用就業率:58%
- 回答機関卒業生全体の就業率:約79%
- 正規雇用者の月給の中央値:2,700シンガポールドル(約22万円)