数値でみる学生移動と単位互換制度―ASEAN地域

2016年2月、SHAREプロジェクト※1に関与するフランスCampus FranceとオランダNufficは、ASEAN地域における高等教育の質や国際化、競争性の促進を目的として、同地域の学生移動と単位互換制度について調査を行った。

ASEAN地域における学生移動

  • ASEAN地域の学生移動のうち、域内移動の割合は全体で9%程度であり、地域内で偏りが見られる。外国へ送り出す学生数が多いマレーシアとベトナムは同地域内への留学割合は少ない。
  • 同地域内の学生移動については社会的・文化的な関連性がみられる(例:ブルネイの学生がインドネシア、マレーシアに留学、カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムの学生がタイに留学)。
  • マレーシアとシンガポールは英語でプログラム提供ができるという魅力がある。

ASEAN諸国におけるASEAN域内外への留学比率(2013年データ)

ASEAN地域における単位互換制度の特徴

UCTS(the University Mobility in Asia and the Pacific Credit Transfer Scheme)

  • UCTSはUMAP※2が2000年に開発し、2012年に改訂したものであり、欧州単位互換制度(ECTS)(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)をモデルとした制度で、アジア太平洋地域における初めての単位互換制度となった。UMAPに参加している大学で運用されている。2016年現在、23ヵ国、438大学が加盟(うちASEAN諸国は7ヵ国)。2012年に改訂されたものはAAC(Asian Academic Credits)※3の概念を取り入れたものとなっている。
  • UMAPの学生交流プログラムはアジア太平洋地域の認可を受けたあらゆる機関が参加することが可能であり、学部レベルと修士レベルの学習に適用できる。ECTSをモデルとしているが、ECTSと比較してUCTSは学習成果に焦点を当てたものとなっていない。

ACTS(ASEAN Credit Transfer System)

  • ACTSはASEAN大学連合(AUN)(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)の加盟大学間の学術交流を促進することを目的として2008年に提案され、2009年3月にAUNによって開発された。ACTSのパイロットプロジェクトは2011年7月に開始された。
  • AUNの加盟大学はASEAN地域における限られた30大学のみであり、そのうち、12大学しか奨学金を提供していない。同制度は同地域内の移動に限定したものであるが、AUN加盟大学だけでなく、AUNと提携している大学やASEAN+3にも影響を及ぼしている。
  • 2015年7月現在、ACTSを使ったAUNの交流プログラムへの申請者の受理数は577件にのぼる。
  • この制度はECTSをモデルとしており、学習成果と結びついた評価や学習量に基づいた学生を中心に設計された制度である。
  • 大学への出願はオンラインでも可能となっており、全ての人に共通のプラットフォームを提供し、単位や学位制度につきまとう複雑さを回避できるようになっている。

AIMSプログラムにおける単位互換制度

  • ACTSがASEAN地域における全ての高等教育機関に適用可能な制度ではないことから、SEAMEO-RIHED(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)は同地域における新たな単位互換制度の開発を試みたが、上手くいかなかった。AIMSプログラム(参照:NIAD-QE国際連携ウェブサイト)ではUCTSを使用している。
  • 近年のAIMSプログラムの取組みとしてはメコン地域における単位互換制度の構築(Common Credit Transfer System for Greater Mekong Subregion(GMS))がある。また、アジア地域における既存の単位互換制度を調和させる目的からAcademic Credit Transfer Framework(ACTFA)の開発に取り組んでいる。

単位互換制度の参加国、参加機関、実施年数

ASEAN地域外の単位互換制度

AECTS(ASEAN-EU Credit Transfer System)

  • SHAREプロジェクトではASEAN地域とEUに跨る単位互換制度(AECTS)の作成を目指している。また、ASEAN地域とEUにおける4つの大学※4が事実上のAECTSに近いものを作成している。このプロジェクトはAsia-Link※5から助成を受けている。アウトカムベースの教育に焦点を当てたもので、試行的に運用することが検討されている。

まとめ

  • ASEAN地域では複数の単位互換制度が存在し、同地域における単位互換制度の分断は学生移動の増加に関する障壁となっている。
  • AIMSプログラムにおいても、ACTFAにおいても、UCTSを単位互換において補助的に使っていることから、ASEAN地域ではUCTSの枠組みが広く導入されていると言える。しかし2009年の研究によると、UCTSの実際の活用例はあまり多くないとされる。ただし、AACの概念をUCTSに取り入れたことにより、より活用しやすいものになった。
  • ASEAN地域における単位互換制度を学生移動と結び付けて発展させる上での主な課題は、既存の高等教育制度の調和である。

※1SHARE:European Union Support to Higher Education in ASEAN(「EU-ASEAN間の高等教育分野の連携プログラム」)
※2UMAP:University Mobility in Asia and the Pacific(アジア太平洋大学交流機構)。2016年にUMAP単位互換スキームの利用促進のためのユーザーズガイドを公開(本サイト2016/10/17投稿記事)
※3Asian Academic Creditsでは単位の移行手続きの簡易化を目指しており、1AACは38-48時間の学習(うち13-16時間の講義)に等しい。
※4マレーシア国民大学、デュイスブルク・エッセン大学(ドイツ)、インドネシア大学、パルマ大学(イタリア)
※5Asia-LinkとはEUとASEANにおける高等教育機関の地域的・多国間的なネットワークを育成するためのイニシアティブで2002年に立ち上げられたプロジェクト。

原典: SHARE(英語)
参考:Asia-Link(英語)
参考:『アジア高等教育圏のダイナミクス』杉村美紀著(日本語)

カテゴリー: ASEAN, AUN関係(ASEAN), EUとの連携関係(ASEAN), SEAMEO関係(AIMSプログラム含む) タグ: , , , パーマリンク