ドイツのNRW州がオランダのMBO資格を認証へ
州内の専門職人材の不足へ対処
独蘭国境に住むMBO取得者の就職先拡大
ドイツのノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州で政権を担うキリスト教民主同盟(CDU)と自由民主党(FDP)は、オランダの上級中等職業訓練学校修了資格*であるMBO資格の認証制度を整備することを両党の政策合意文書に盛り込んだ、と複数のメディアが報じている。
*オランダの教育段階に関しては、「諸外国の高等教育分野における質保証システムの概要 オランダ」9ページを参照
MBO (Middelbaar Beroeps Onderwijs)資格はオランダ国内の66の職業教育訓練校を卒業すると授与される資格で、現在およそ49万人の学生と5万人の労働者が学んでいる。医療、工学、環境、ビジネスなどあらゆる分野の職業教育で修了後に授与され、経済基盤を支えるための専門人材であることを示すものとして認知されている。
一方、ドイツ西部にあるNRW州(下図参照)はオランダと国境を接し、州都デュッセルドルフをはじめとして大都市が多く、国内16州で最も人口の多い州である。現在では専門職の人材が、特に飲食、小売、産業工学の分野で不足している。
これまでオランダでMBO資格を取得した者がドイツ国内でその分野の職に就くためには、資格の読み替え審査に何ヶ月も要し、資格認証の確約もない状況であった。そのため、ドイツ国境に近い場所に住むMBO資格取得者にとって、ドイツでの就労機会はごく限られたものであった。
今回、ドイツの州政府が積極的にMBO資格認証に向けて動き出すことで、州内の雇用問題を改善するだけでなく、オランダのMBO取得者の就職ニーズにも応えることが期待される。
このような外国の資格の認証に関しては、高等教育と一部の職業分野では進んできている。例えば、欧州各国は学位制度を3段階に統一し、学生の移動を促進する体制を整えている。日本も大学協会を通じてフランス(本サイト2014年7月14日掲載)、ドイツ(本サイト2015年8月7日掲載)、オーストラリア(本サイト2015年9月24日掲載)との資格の相互認証協定を締結している。一方、医師や建築士などの6つの資格(本サイト2015年3月16日掲載)は欧州域内での相互認証が認められている。
オランダのMBO資格のような中等教育レベルの資格認証としては、2017年2月に韓国とニュージーランドが両国の中等教育修了資格を相互に認証することに合意(本サイト2017年4月5日掲載)した。今後も高等教育に留まらず様々な教育段階で資格認証のための制度が導入されることは想像に難くない。