ドイツ:国境を越えた教育(TNE)の共通分類枠組み及びデータ収集のためのガイドラインを公表

  • 現在、国境を越えた教育(TNE:transnational education)は世界中に広がりを見せている。
  • TNEに関連する様々な用語(’cross-border education’, ‘borderless education’, ‘offshore education’など)が存在しているが、現状、国によって用語の解釈が異なっており、TNEに関するデータ収集を困難にしている。
  • TNEに関連する用語の世界的な共通枠組みが必要であるという観点から、TNEの分類枠組みやデータ収集のためのガイドラインが公表された。

2017年6月、DAAD(ドイツ学術交流会)とブリティッシュカウンシルが、国境を越えた教育(TNE)に関する共同研究の最新の報告書「TRANSNATIONAL EDUCATION: A CLASSIFICATION FRAMEWORK AND DATA COLLECTION GUIDELINES FOR INTERNATIONAL PROGRAMME AND PROVIDER MOBILITY (IPPM)」を公表した。2015年に公表された国境を越えた教育(TNE)データの情報収集に関する研究報告書(本サイト2015/8/21投稿記事)において、TNEに関連する用語に世界共通の定義がないこと(TNE terminology chaos)が、TNEに関するデータ収集を困難にしていると結論づけたことを受けて、このたび、TNEに関するデータ収集のための共通枠組みの導入が提案された。

国境を越えた教育(TNE:transnational education)とは?

教育が「国境を越える」方法は多岐に渡り、ブランチキャンパスの設置やフランチャイズプログラム、遠隔教育等様々な方法が挙げられるが、本報告書においては、TNEとは、国際的な高等教育プログラム及び高等教育提供者のモビリティ(IPPM:international programme and provider mobility)を指す。したがって、本報告書においては、TNE、すなわちIPPMに関する共通分類枠組み及びそのデータ収集に関するガイドラインが示されている。

なお、TNEと似た意味を持つcross-border educationは、TNEよりも幅広い意味を有し、IPPMのほか、学生や学者のモビリティ(国際的な学生モビリティ(ISM:international student mobility))を含むものとし、TNEとは明確に区別されている。

TNE(IPPM)共通分類枠組み
本枠組み確立の目的

①TNEに関するカテゴリーの明確化及び共通解釈の提供。
②国内外のデータ収集及び管理を体系化するための基盤の提供。
③本枠組みを参考にして各国で収集されたデータの、ユネスコ、OECD、ユーロスタット(EC)等のデータベースへの掲載。

TNEの分類

TNEを独立したプログラム(Independent TNE provision)及び共同プログラム(Collaborative TNE provision)に大別したうえで6つのカテゴリーに分け、各カテゴリーにおいてよく使われるTNEに関連する用語が明記されている。

なお、本枠組みは、あくまでTNEに関連する用語の共通解釈の発展を目指すものであり、用語そのものの定義付けを目的としていない。現状では、国によりTNEのレベルやアプローチ方法、浸透状況等が異なることから、枠組み内の記述はあくまで説明(Description)とし、定義(Definition)という用語を避けている。

TNE(IPPM)共通分類枠組み
TNEを提供するための2つの主なアプローチ ― 独立したプログラムと共同プログラム
独立したプログラム(Independent TNE provision

学術プログラムを提供する機関(foreign sending HEI/provider)が、学術プログラムの立案、提供及び外部質保証に対し主たる責任を持ち、資格は他国で授与される。

⇒以下1~3のカテゴリーに該当

共同プログラム(Collaborative TNE provision

学術プログラムを提供する機関及び受入国の高等教育機関(host country HEI/provider)が、学術プログラムの立案、提供及び/又は外部質保証を共同して実施する。

⇒以下4~6のカテゴリーに該当

IPPMの6つのカテゴリーの説明
1. フランチャイズプログラム

(Franchise programmes)

学術プログラムを提供する機関が、受入国において提供される学術プログラムの立案、提供及び外部質保証に対し主たる責任を持つ。

資格は、提供元の国の高等教育機関により授与される。

対面式教育、遠隔教育及びブレンド型教育1といった方法が採られる。

よく使われる用語

import/export, validation, foreign, non-local, international private programmes

4. パートナーシッププログラム

(Partnership programmes)

受入国における学術プログラムの立案、提供及び質保証が、提供元の国及び受入国のパートナー機関間の共同連携によりなされる。

資格は、提供元の国及び受入国の一方または両方の高等教育機関により、シングルディグリー、ジョイントディグリーダブルディグリー、デュアルディグリーといった形で授与される。

対面式教育、遠隔教育及びブレンド型教育といった方法が採られる。

よく使われる用語

joint/double/multiple degrees,

twinning programmes2

2. 海外ブランチキャンパス

(International branch campus)

学術プログラムを提供する国の高等教育機関により、サテライト型のキャンパスが、受入国内に設置されている。

提供元の国の親機関(sending parent institution)は、カリキュラムの提供、外部質保証の実施、資格の授与を行う。

対面式教育、遠隔教育及びブレンド型教育といった方法が採られる。

よく使われる用語

satellite, private international, offshore campus, portal campus

5. 共同大学 (Joint university)

学術プログラムの受入国において、提供する側との共同出資で設立された機関。提供元の機関は受入国内外に限らず、また、プログラムの立案や運営を共同で行っている。

資格は、受入国及び提供元の国の一方又は両方の高等教育機関により授与される。

対面式教育、遠隔教育及びブレンド型教育といった方法が採られる。

よく使われる用語

co-developed, bi-national, co-founded, multinational, joint ventures universities

3. 自主学習のための遠隔教育

(Self-study distance education)

遠隔教育の提供者が、学術プログラムを受入国の学生に直接提供する。

当該プログラムの受入国における学術支援は受けられない。

資格、カリキュラムの提供及び外部質保証は派遣国の高等教育機関が実施する。

よく使われる用語

fully online education, open university, MOOCs, pure distance education

6. 受入国の学術パートナーと共同で行う遠隔教育 (Distance education with local academic partner)

遠隔教育を提供する国の高等教育機関が、受入国の学術パートナーと共同し、受入れ国の学生に対しプログラムを提供する。

カリキュラムは受入国及び提供元の国が共同で開発し、資格は提供元の国の高等教育機関又は受入国及び提供元の国の両方のパートナーにより授与される。

外部質保証は提供元の国の高等教育機関又は受入国及び提供元の国の両方のパートナーが実施する。

よく使われる用語

online or distance education with reference to local academic partner

※1 ブレンド型教育…対面式教育と遠隔教育を組み合わせた教育のこと。
※2 twinning programmes(ツイニングプログラム)…受入国が場所や制度上の支援を提供し、提供元の国の高等教育機関を支援する制度。

TNEに対する質保証枠組み

TNEに対する効果的な質保証は、学術プログラムを提供する国・受入国の両方にとって大きな課題となっている。現状では、TNEに関する質保証制度を完全に備えている国は、英国、豪州、ドイツの3国であり、この3国以外で先導的に学術プログラムを提供している国はほとんど存在しない。このため、受入国と提供元の国における質保証機関が協力し、新たなネットワークが形成されることが期待される。なお、2016年にENQA(欧州高等教育質保証協会)がまとめたQACHEの最終報告書であるTNEの質保証の実態はこちら(本サイト2016年6月10日投稿記事)。また、英国高等教育質保証機構(QAA)が行ったギリシャ及びキプロスのTNEレビュー報告書はこちら(本サイト2016年5月17日投稿記事)。当機構が、中国教育部高等教育教学評価センター(HEEC: Higher Education Evaluation Center of the Ministry of Education)、韓国大学教育協議会(KCUE: Korean Council for University Education)と共同で作成したキャンパスアジアガイドラインはこちら

原典:DAAD(独語)

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