ASEAN地域における学生モビリティのさらなる成長に向けて

2017年6月に、フィリピンで初めて「ASEAN Student Mobility Forum」が開催された。当フォーラムはEU・ASEAN間のSHAREプログラム※1の政策対話の一環として行われたもので、15ヵ国から238名(産業関係者120名、政府関係者83名、その他関係機関所属者35名)の参加があった。様々な分野の学生や卒業生81名が参加し、各国の高等教育において優れている点や弱点についての討論が行われた。また、留学経験のある卒業生が自らの経験に基づいた留学の良い面と悪い面を積極的に発表した。
フォーラムにおける講演の要点は以下の通り。

ASEANのリーダーへ―“現時点で求められる技能を越えよ。将来求められる技能へ到達せよ”

  • 当フォーラムでは、現在の技能で満足することなく、さらなる成長を目指すことが掲げられた。‘Futures Group’というASEANの産業関係者によるシンクタンクを設立し、将来労働力になりうる技能を兼ね揃えた卒業生の輩出を促進する。
  • SHARE、SEAMEO RIHED、AUN等は産業界において優秀な人材を‘Futures Group’に招待している。この動きによって大学はソフトスキルとハードスキルを通じて国際的なマインドを育てるようなカリキュラムを発展させることとなる。
  • ASEAN地域の卒業生ネットワークを創設することは、留学情報やそれに関連する知識に容易にアクセスできるようになることや、奨学プログラムや留学機会の促進、雇用までの道筋が作られるといった利点がある。
  • 当フォーラムは学生自身で組織を作ることを支援し、学生団体ができた際には、学生が真のステークホルダーであることを確保すべく、ASEAN高級事務会合にも学生団体の代表者が参加することを可能にする。

ASEANにおける高等教育機関の運営者へ―“留学しやすい環境を整えよ”

  • より良い情報を提供する
  • 現状は留学の機会に関する情報が分かりにくく、透明性に欠けている。大学は留学等に関する奨学金の情報や留学の利点について各大学で広報したり、海外オフィスがない国においては現地でのコミュニティの形成を促すことが重要となる。

  • 留学に向けて学生の準備をサポートする
  • 奨学プログラムを利用する学生に対し、留学前の研修を通して、留学中に学生の身の回りで起こる出来事に関して、学生とコミュニケーションをとれるようにしたり、奨学プログラムを利用した留学経験者にサポーターとしての役割を果たしてもらったり、オンライン上に体験談を掲載し誰もがアクセスできるようにしたりする。

  • 学習の認証と単位の移行
  • ASEAN地域における単位互換制度には不安点が残る。受入先機関のカリキュラムが派遣元機関のカリキュラムを反映していない場合、学習者の学習が正確に単位によって認証されるかが懸念される。学習成果に基づいてカリキュラムデザインや単位連携における制度設計をすることにより、これらの困難に対処できる。

地域の学生モビリティの質や運営を改善するためのさらなる推奨事項

  • ASEAN地域における地域的なデータのマッピングを行う。大学が適切な情報を提供し、その情報を基に、教育省が国家レベルでのデータを作成し、プラットフォームにおいて各国のデータを共有する。
  • 改善は学生主導で行う。当フォーラムで学生から列挙された改善点について、内容を精査し今後のモビリティ制度を見込んだ計画の中で優先化する。学生主導の改善により、地域的規模の学生団体の創設に資することとなり、また域内の学生モビリティの促進が図られることも目的となる。
※1SHARE:European Union Support to Higher Education in ASEAN(「EU-ASEAN間の高等教育分野の連携プログラム」)
EU(欧州連合)とASEAN(東南アジア諸国連合)による、ASEAN地域内の高等教育分野の協調に貢献するための新たなイニシアチブ。ASEAN諸国間及びASEAN・EU間での学生の移動を支援することを目的とするとともに、資格枠組みや質保証、ASEAN地域レベルの単位互換制度についても取り組むこととしている(参照:本サイト2015/4/22投稿記事)

原典①:POLICY BRIEF(英語)
原典②:SEAMEO RIHED(英語)

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